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東日本大震災の被災地の皆さま、および被災地の復旧・復興に当たられる皆さま、支援に入られる専門家の各位のお役に立つところがあればと考え、著者とご相談のうえ、PDF版を公開することに致しました。
 
 

著者から

 東日本大地震で被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
 被災者の方々並びに被災者を支援される関係者の方々に少しでもお役に立てればと、学芸出版社のご厚意により、3年前に当研究会でまとめた『提言!仮設市街地〜大震災に備えて』のPDF版を無料公開させていただくこととしました。参考にしていただければ幸いです。
 大都市でも地方部でも、もし災害に襲われた場合には、なるべく元の場所やその近くに復興の基地となる「仮設のまち(仮設市街地)」をつくって復興に取り組むべきだという考え方をまとめたものです。
 「仮設住宅」では、単に「食べて寝る」ことさえできればいいものではありません。そこは、復興までの期間を互いに助け合って、復興の考えを協議し、元気を出しながら暮らしていく場所として、子どもやお年寄りの場所、働く場所、くつろいで明日への元気を再構築する場所などとしての整備が必要なのです。未曾有の被害を生んだこのたびの災害ですが、被災地のみなさま、ぜひ、がんばってください。
仮設市街地研究会
濱田甚三郎、大熊喜昌、松川淳子
鳥山千尋、原昭夫、江田隆三、
森反章夫、山谷明、高橋知香子
 
装丁 KOTO DESIGN Inc.
A5判・160頁・定価2100円(本体2000円)
ISBN978-4-7615-2431-9
2008.5.30 初版発行

好評発売中
 


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はじめに・目次

 
第1章 仮設市街地とは

1 災害発生から都市復興までのプロセス
 1)これまでの大災害と復興への対応
 2)被災から復興までのプロセス
 3)予防・事前の対応が大切

2 仮設市街地の意義と役割
 1)阪神・淡路大震災の復興からの反省点
 2)仮設市街地の定義
 3)仮設市街地4原則

3 仮設市街地づくりの準備
 1)事前計画として
 2)計画づくりの準備
 3)「シャドウプラン」として用意しておく

4 避難所段階での地域マネジメント
 1)コミュニティ単位の避難は可能か
 2)避難所での安心生活のためのマネジメント
 3)仮設市街地づくりに向けたマネジメント

5 復興事業との関わりと相違
 1)復興プロセスと仮設市街地
 2)仮設市街地は生活復興の基地
 3)仮設市街地と地域復興協議会
 4)仮設市街地での復興まちづくりに向けた合意形成
 5)仮設市街地から復興市街地への円滑な移行
 6)仮設市街地への疑問に答える
第2章 歴史の中に仮設市街地を探る

1 「被災地近接」の実現―関東大震災
 1)市街地の大半を失った首都・東京
 2)復旧・復興への取り組み
 3)「仮設住宅」、「仮設住宅地」の状況
 4)関東大震災における仮設住宅とその特徴

2 さまざまな課題の提起―阪神・淡路大震災
 1)起こり得ないはずの災害が起きた……
 2)復旧・復興への取り組みと仮設住宅・仮設住宅地
 3)仮設住宅地のコミュニティ

3 仮設住宅地サポート活動の重要性―トルコ・東部マルマラ地震
 1)地震被害とその背景
 2)テント村→プレファブ仮設住宅→仮設住宅地
 3)仮設住宅地のサポート

4 小規模分散型、被災地隣接―台湾921集集地震
 1)中小都市と農山村部の被災
 2)分散した仮設住宅地
 3)民間主体、公益施設の併設
 4)集落の特徴を活かしながら

5 阪神・淡路大震災の教訓は活かされたか─中越地震
 1)大地と山の崩壊
 2)コミュニティを尊重した入居システムと仮設住宅
 3)多様な住戸タイプ、豪雪地帯への配慮、施設計画
 4)仮設住宅のサポート体制

6 仮設住宅地から仮設市街地へ
 1)仮設住宅地における「場」の整備
 2)仮設住宅地における「仕組み」の充実
 3)仮設住宅地における「活動」の展開
 4)仮設住宅地が閉じるとき

第3章 仮設市街地の実現に向けて

1 仮設市街地の計画
 1)首都直下地震を例に考える
 2)予想されるマダラ状被災
 3)2つの仮設市街地像―分散型と一団型

2 標準的な仮設市街地のつくり方
 1)場所(どこで)
 2)規模(どのくらいのひろがりか)
 3)土地確保(どの土地を活用するか)
 4)構成要素(何によってつくるのか)
 5)供用期間(いつからいつまで)
 6)計画・整備・運営主体(だれが)
 7)整備手法(どのようにしてつくるか)

3 仮設市街地づくりの社会実験―震災サバイバル・キャンプ・イン'99
 1)市民発意・市民主体による社会実験
 2)被災から復興までのプロセスを疑似体験する
 3)震災サバイバル・キャンプ・イン'99から得られたこと

4 仮設市街地づくりの検証―復興模擬訓練
 1)都内各地での復興模擬訓練の実施
 2)復興模擬訓練の事例―足立区西新井西口地区の場合
 3)各地での訓練で得られた成果と課題
 4)仮設市街地の模型キットの開発

第4章 仮設市街地の建設と運営

1 仮設市街地の建設手順
 1)基礎となる資料づくり
 2)建設準備
 3)住まいづくり
 4)暮らしを継続する施設づくり

2 建設プログラムのポイント
 1)仮設市街地の全体像の提示
 2)地域主体型仮設住宅と入居者
 3)撤収への計画的取り組み

3 仮設市街地の運営で考慮すべきこと
 1)運営組織による運営拠点の確保
 2)阪神・淡路大震災神戸市野田北部での経験

4 仮設市街地での生活復興
 1)生活復興のために必要なこと
 2)復興まちづくりに向けた仮設店舗の建設

第5章 復興に向けた活動

1 復興まちづくりの基本
 1)被災者主体の復興まちづくりを
 2)復興の話合いは身近な場で

2 専門家の役割
 1)住民・地権者と行政の溝を埋める
 2)専門家の異議申し立てと新たな提案
 3)事前の備えに専門家の参加を
 4)専門家の自発的な活動を

3 被災者の目線から制度を考える
 1)被災によって、地域住民は、どのような境遇におかれるか
 2)被災住民がつくった自生的仮設市街地
 3)時限的市街地という制度的工夫

4 地域住民組織の復興活動と時限的市街地
 1)避難所運営が、地域協働復興の「提議」をはらむ
 2)住民主導の意志表示としての時限的市街地へ
 3)「建築制限」を逆手にとること
 4)時限的市街地の運営と復興の本格協議へ
第6章 今から考えておくべきこと

1 事前の防災・復興まちづくり
 1)被害軽減策
 2)事前の復旧・復興計画
 3)まちづくり協議会の組織化、住民・行政・専門家等のネットワーク形成

2 震災前から仮設市街地に向けて取り組むべきこと
 1)地域コミュニティがやるべきこと
 2)自治体がやるべきこと
 3)自治体の施策事例―東京都の計画の仮設市街地の考え方について
 4)復興模擬訓練のさらなる普及・展開

3 今後の課題
 1)法制度等の改正の提言
 2)今後検討すべきいくつかの重要課題



著者紹介

濱田 甚三郎(はまだ じんざぶろう)
且都圏総合計画研究所代表。都市プランナー。
阪神・淡路大震災後、コンテナを仮設住宅の代用とする運動を推進。東京都都市復興マニュアルづくりに参画、仮設市街地の概念を提案。東京都防災都市づくり推進計画、震災復興グランドデザイン、震災復興マニュアル、山古志集落復興計画、パキスタン・ムザファラバード復興計画等に関与。
担当:1章4・5、3章1・2、6章2

大熊 喜昌(おおくま よしまさ)
大熊喜昌都市計画事務所代表。
東京都心育ち。65年より東京の江東デルタの防災再開発、防災拠点づくり、密集市街地まちづくりの計画に従事。70年頃よりコーポラティブ住宅等の自主的な住宅づくり、まちづくりを目指した活動を開始する。最近では中越地震で被災した長岡市小国町法末集落(山村)の再生維持活動に参加。仮設市街地の研究および普及も地域コミュニティの維持・再生を目標とする活動と認識している。
担当:6章1〜3

松川 淳子(まつかわ じゅんこ)
叶カ活構造研究所代表。
東京大学助手、(財)余暇開発センター客員研究員等を経て、91年より現職。コミュニティのあり方の視点から全国各地域の生活調査、構想・計画づくりなどに携わる。99年、トルコ・コジャエリ地震の被災地支援に携わったことを契機に、国内外での自然災害に関する防災・復興支援活動に関与。国際女性建築家会議日本支部災害復興見守りチームメンバー。
担当:2章1〜6

原 昭夫(はら あきお)
自治体まちづくり研究所主宰。地域プランナー。
東京都庁、名護市役所(沖縄県)、世田谷区役所の3自治体の職員として都市計画、防災計画、まちづくり、都市デザイン、建築等を担当。立川昭和記念公園での震災サバイバル・キャンプ・イン'99の企画・実施。世田谷区都市復興プログラムに仮設市街地の考え方を導入するなど、防災まちづくり・復興まちづくりに関与中。
担当:1章1〜3、6章3

鳥山 千尋(とりやま ちひろ)
杉並区区民生活部参事(文化施策担当)。
74年杉並区に勤務。まちづくり・建築行政に携わる。蚕糸試験場跡地周辺不燃化まちづくり、桃井三丁目地区防災公園街区整備事業をはじめ、景観整備や阿佐谷ジャズストリートの立上げなどに取り組む。阪神・淡路大震災、中越地震では、被災調査や被災自治体への職員派遣をコーディネート。震災サバイバル・キャンプ・イン'99、イスタンブール・ベイヨル地区での防災まちづくりワークショップ(2002)等に参画。一級建築士、技術士(都市及び地方計画)。
担当:5章1・2

山谷 明(やまたに あきら)
潟Cーティー代表。まちづくりプランナー。
商店街整備や景観計画など建築と都市計画の中間領域の業務に従事。阪神・淡路大震災の折、コンテナを使った仮設住宅の製作に関わる。以来、仮設市街地の研究や普及に関する活動に参加。近年は、東京都等が行なった復興模擬訓練でのワークショップ運営およびドキュメントの制作に携わる。
担当:4章1・2

森反 章夫(もりたん あきお)
東京経済大学現代法学部教授。
都市・住宅政策を中心に現代社会の分析に携わる。阪神・淡路大震災時に勤務校で学生ボランティアを組織し3年間現地に通う。同時に野田北部まちづくり協議会のメンバーの活動に感動し、以後、「まちづくりと現代社会」を研究する。現在、東京都震災復興検討会議委員、国分寺市まちづくり市民会議委員など。
担当:5章3・4

江田 隆三(えだ りゅうぞう)
樺n域計画連合代表/(特非)り・らいふ研究会理事。都市・地域計画コンサルタント。
84年より新宿区での木造住宅密集地域の整備に参画し、その後、東京都木造住宅密集地域整備プログラムや練馬区、目黒区などの密集市街地整備、防災まちづくりに取り組む。04年の中越地震以降は山古志地域の集落再生、復興に参画している。
担当:4章3・4

阪野 直子(さかの なおこ)
且都圏総合計画研究所研究員。都市計画コンサルタント。
地域の歴史的・文化的資源の活用や住民参加型のまちづくりに関心を持つ。04年に且都圏総合計画研究所入社以降、継続して足立区・北区・世田谷区など各地区での復興模擬訓練の企画・運営に携わる。そのほか、東京都内を中心に密集市街地整備や教育計画等の策定に関わる。
担当:3章3・4

2011.03.15〜