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東日本大震災の被災地の皆さま、および被災地の復旧・復興に当たられる皆さま、支援に入られる専門家の各位のお役に立つところがあればと考え、著者とご相談のうえ、PDF版を公開することに致しました。
 

まちづくり協議会とまちづくり提案

久保光弘

2003年日本都市計画学会賞(論文賞)受賞

 
 

執筆者紹介

久保光弘(くぼ・みつひろ)
 1941年大阪市生まれ。1967年大阪工業大学建築学科二部卒。1961年大阪市職員、建築設計事務所などを経て、1967年(株)オオバ、1978年から(株)久保都市計画事務所所長。博士(工学)、技術士(都市および地方計画)、一級建築士、区画整理士。大阪工業大学非常勤講師。
 2000年度日本都市計画学会関西支部・関西まちづくり賞、2003年度日本都市計画学会賞(論文賞)受賞。
 共著として『建築設計資料集成―地域・都市T プロジェクト編』(日本建築学会編、丸善)、『震災復興が教えるまちづくりの将来』(学芸出版社)など。

書評より(『建築士』((社)日本建築士会連合会)2006.3)
 阪神・淡路大震災の復興には、まちづくり協議会が大きな働きをしたことが知られている。確かに震災後、被災地で多くのまちづくり協議会が生まれたが、この制度は震災前から神戸市の条例に基づいて、すでにかなりの地域で活動を開始していた。
  この本は、震災直後から、被害のひどかった長田地域のまちづくり協議会のコンサルタントをしていた著者の実践の記録である。震災の記録はたくさんあるが、まちづくり協議会を軸にした、10年にわたる記録は珍しい。
  “行政やコンサルタントは、自然な動きに手を添えるものだけ”と謙虚に述べているが、大変な努力の跡がその行間から読み取れる。
  その結果、まちづくりの提案だけでなく、景観形成市民協定「いえなみ協定」までに発展している。震災後は、プレファブ住宅の展示場のような町並みになったと嘆く人もいるが、実際にこの町を歩いてみると、あの大変な時期に景観まで考えていたことを知り、改めてこの地域のまちづくり協議会の活動に感動させられた。
  震災後のまちづくり協議会は、特殊な状況であったが、著者は客観的に観察し、平常時に置き換えて一般化しようと努力をしている。
  この本は、全国のまちづくりに携わっている人には大変参考になる力作である。読んでみると、都市計画学会賞をもらった意味も良くわかった。

(大海一雄)
 
 
上野かおる
A5判・256頁・定価2800円+税
ISBN4-7615-2369-7
2005.8.30
在庫僅少

 


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まえがき&目次

第T部 まちづくりとは何か

第1章 まちづくりと都市計画
1・1 現場から現れた「地区協議会まちづくり」の形
1・2 まちづくりと都市計画との連携

第2章 まちづくりを支援する技術
2・1 協議会に対する行政、コンサルタントの支援
2・2 「まちづくり提案」への計画技術
2・3 協議会での現象をどう理解し、どう対応すべきか

第U部 まちづくり協議会活動の実際

第3章 区画整理の計画決定から始まったまちづくり──2段階都市計画決定方式
3・1 新長田駅北地区東部とは
3・2 新長田駅北地区の土地区画整理事業

第4章 まちづくり協議会活動のプロセス──部分組織から地区のまちづくり組織へ
4・1 まちづくり協議会の性格・しくみ
4・2 まちづくり組織の展開
4・3 まちづくり提案の展開とターニング・ポイント

第5章 まちづくり提案と市街地形成──多階層の提案による漸進的計画策定プロセス
5・1 地域形成の枠組みと協議会活動のプロセス
5・2 条里プランを原型とした市街地の特徴
5・3 市街地整備計画の形成プロセス
5・4 公共施設のデザイン
5・5 市街地整備計画システム

第6章 まちづくり協議会手法による共同建替
──柔軟性と自律性を持つ共同建替適地という考え方

6・1 当地区の住宅再建
6・2 土地利用適地と共同建替適地
6・3 共同建替のプロセス
6・4 市街地再生における共同建替の狙いと評価
6・5 共同建替適地の機能と制度対応

第7章 まちづくり協議会による地域活性化──産業ビジョン提案と地域産業の変動
7・1 内発的な産業ビジョンづくりの目的
7・2 「産業観光計画」の取組み(平成7〜13年)
7・3 地域産業の変動
7・4 「2次・産業観光計画」の取組み(平成13〜16年)
7・5 まちづくり協議会による地域活性化の意義と課題

第8章 景観形成の自律的なルールづくり──いえなみ基準の策定と運用
8・1 一般市街地での景観づくり
8・2 景観形成市民協定「いえなみ基準」の策定プロセス
8・3 「いえなみ基準」の内容と助成支援
8・4 「いえなみ基準」の自主管理・運用 
8・5 自律的なルールづくりの機能と制度対応

第9章 まちづくり支援のあり方──ボトムアップのプロセスを実現した条件と要因
9・1 ボトムアップのプロセスをつくった条件
9・2 ボトムアップのプロセスをつくった要因
〈補〉新長田駅北地区東部の人口と世帯の状況

第V部 まちづくりシステムを探る

第10章 複雑系としてまちづくり協議会を捉える
10・1 生きているシステムを読み解く学問―複雑系との出会い
10・2 まちづくり協議会という現象を読み解く
10・3 「部分組織」の重要性
10・4 協議会活動における諸現象

第11章 まちづくりによる市街地整備の体系化をめざして
11・1 従来手法と異なるまちづくり手法の特徴
11・2 まちづくり計画技術の体系化
11・3 まちづくり条例等の重要性

あとがき、 参考文献、神戸市地区計画及びまちづくり協定等に関する条例/神戸市都市景観条例(抜粋)


2011.03.19〜