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東日本大震災の被災地の皆さま、および被災地の復旧・復興に当たられる皆さま、支援に入られる専門家の各位のお役に立つところがあればと考え、著者とご相談のうえ、PDF版を公開することに致しました。
 

震災復興が教えるまちづくりの将来

阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク編著

 
 

「復興まちづくり報告'97」を全国に伝えたい

 震災3年を迎えようとしていた1997年11月に、私たちまちづくりの専門家は何をしてきたのか、そしてこれから何をしていくべきだろうかを、確認するために「復興まちづくり報告'97」を開催しました。
 11月14日、15日、約20人が連続発表した2日間12時間の報告会は、震災後3年間の「復興まちづくり」の戦いの報告であるとともに、これから何年続くか果てしない「市民まちづくり」への決意の表明でもありました。
 また、それに合わせてお二人の方に招待講演をしていただきました。元神戸大学学長、神戸都市問題研究所所長の新野幸次郎先生と兵庫県の溜水義久副知事です。
 新野先生は今回の大震災で様々な委員会や学会のとりまとめ、あるいは民間の種々のネットワークの代表者として、ご活躍されております。その経験から「阪神・淡路大震災が私たちの社会にもたらしたもの」というお話をしていただきました。
 もうおひとりの溜水さんには「阪神・淡路大震災における行政からの復興まちづくり」と題して、復興都市計画の仕組みについてお話しいただきました。溜水さんは、震災直後に建設省において、特に都市計画決定の様々な問題についてご尽力いただいた方です。その縁で兵庫県の方へ招かれ、もう既に2年以上経っております。今回の復興まちづくりの行政側の総元締めと私たちは思っています。
 また、20人の報告聞いていただいた後で、鳴海邦碩大阪大学教授の司会により、小森星児神戸商科大学名誉教授、高見沢実横浜国立大学助教授、清水喜代志兵庫県都市住宅部計画課課長、中山久憲神戸市都市計画局アーバンデザイン室主幹に参加いただき、「復興まちづくりの経験をどう活かすか」というテーマで感想激励討論会を行い、コメントをいただきました。今回の報告会にもご協力いただいたHAR基金、神戸復興塾、集中討議をリードしていただいている先生方であり、また県市の都市計画・まちづくりの第一線におられる方々です。
 本書は、こうした「復興まちづくり報告'97」(主催:阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク、共催:こうべまちづくりセンター、協力:神戸復興塾、集中討議、HAR基金、於:神戸まちづくり会館)の記録です。
 震災の結果、私たちは10年後に間違いなく日本全国の都市で問題となる課題に、突然、大規模に直面してしまったと考えています。例えば、密集市街地再生整備、老朽マンション建替、高齢者福祉介護、ボランティア・NPO、住民主体のまちづくり、そして、自律と連帯のネットワーク社会。こうした都市課題に、否応なく取り組まざるを得なかった私たちの経験を、報告会に参加されなかった全国のまちづくり関係者に是非とも伝えたいという思いから本書をまとめました。
 次はあなたの番であり、阪神・淡路大震災からの復興まちづくりが教えるまちづくりの将来を、しかと受けとめていただきたい、という思いでもあります。
 新野幸次郎先生と兵庫県の溜水義久副知事には私たちの小さな集まりに参加いただき、テープ起こしの校正にも快くご協力いただきました。同様に感想激励討論の先生方にも感謝の意を表したいと思います。
 また、多くの報告者が、当日の発表内容をより明確化した原稿に書き下ろしてくれました。各地区統一した「まちづくり活動/実践記録シート」は、支援ネットのコンサルタント若手グループが作成してくれました。学生をはじめとする多くの人たちが報告会の発表を整理してくれました。もちろん、それらをこうした本にするために、前田さん、宮本さんをはじめとする学芸出版社の人達が協力してくれました。
 本当に皆さんありがとうございました。
1998年1月
阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク 小林郁雄
 
 
A5判・256頁・定価2800円+税
ISBN4-7615-2369-7
2005.8.30

阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク

 阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワークは、被災直後に神戸で生まれました。以前から阪神間のまちづくりに取り組んでいたコンサルタントや研究者が中心となって結成されたものです。
 1995年2月に被災地から発信された「きんもくせい」を始め、その活動のは下記をご覧下さい。
http://www.gakugei-pub.jp/kobe/index.htm
 


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阪神・淡路大震災
 震災復興が教えるまちづくりの将来


目 次

[はじめに]
「復興まちづくり報告'97」を全国に伝えたい 小林郁雄

●震災復興から見えてきたもの

阪神・淡路大震災が私たちの社会にもたらしたもの 新野幸次郎
阪神・淡路大震災における行政からの復興まちづくり 溜水義久
復興まちづくりに果たした支援ネットワークの役割と限界 小林郁雄

●復興の現場から

○白地区域
[魚崎・甲南・住吉浜手]
建築家ボランティアの取り組んだ住民主体のまちづくり 野崎隆一
[住  吉]
住宅復興から始まるまちづくり活動への支援 松原永季
[灘 中 央]
震災を機に商業活性化活動から地区全体の防災のまちづくりへ 天川雅晴

○灰色地域
[新 在 家]
密集市街地における復興まちづくり(協定)と復興すまいづくり(共同再建) 後藤祐介
[真  野]
まちづくりのなかの共同住宅再建 ・ 公営住宅と民間共同建替 宮西悠司
[野田北部]
区画整理事業に負けないまちをめざす街並み誘導型地区計画の導入 森崎輝行

○復興再開発・共同化等
[六甲道駅南]
復興再開発事業における合意形成の過程 有光友興/仲川邦俊/三浦哲之
[淡路島6地区]
震災復興密集住宅市街地整備促進事業の成果 難波 健
[マンション再建]
被災マンション再建の成果とはっきりした今後の課題 高田 昇

○復興区画整理
[芦屋西部]
住民不在の都市計画決定を乗り越えた住民合意のまち再興 安藤元夫/小島 孜/曽根秀一
[芦屋中央]
不毛な住民対立をこえ、現実的・具体的な復興まちづくり議論を 坂和章平
[森 具]
仮換地指定を終えて、まちづくり意欲の継続が課題 伊勢博幸
[築 地]
二重の不安、二重の対立を回避し、復興委員会を確立 山口憲二
[六甲道駅北]
700回をこす勉強会で築いた協動の復興まちづくり 岩崎俊延/長嶋弘之/細野 彰
[松 本]
合意形成過程におけるまちづくりリーダーの重要性 辻 信一
[新長田駅北(東部)]
ビジョン共有型協議会による創造的復興へ 久保光弘

○ネットワーク報告
神戸復興塾−被災地の「現場の知」を10年後の日本へ 大津俊雄/田村太郎
コレクティブハウジング事業推進応援団−ふれあい生活の再生 石東直子/天川佳美
阪神グリーンネット−緑花活動をとおした「みどりのまちづくり」 林まゆみ/中瀬 勲
神戸まちづくり協議会連絡会−市民まちづくりの情報交流 中島克元

●都市計画とまちづくり

[感想激励討論]
復興まちづくりの経験をどう活かすか 鳴海邦碩/小森星児/高見沢実/清水喜代志/中山久憲
[おわりに]
神戸・阪神のまちづくり文化をつくる 後藤祐介

2011.03.19〜