無料ダウンロード


東日本大震災の被災地の皆さま、および被災地の復旧・復興に当たられる皆さま、支援に入られる専門家の各位のお役に立つところがあればと考え、著者とご相談のうえ、PDF版を公開することに致しました。
 

コレクティブハウジング ただいま奮闘中

石東直子+コレクティブハウジング事業推進応援団

 

おわりに

 震災から5年余りが経ちました。ふれあい住宅の発想から発芽へ、そして発育期へと、応援団という立場で関わってきました。この間、ふれあい住宅の入居者たちにとっては、震災直後の避難所生活、仮設住宅の暮らし、未知なるふれあい住宅への入居と新しい住まい方のスタートへと、いつも多くのボランティアや押し寄せるマスコミや視察者たちに囲まれて、一種の昂揚した気分の中で時が流れていきました。
 これまで少しがむしゃらに走ってきたわたしは、ふれあい住宅のこれからの日々の展開にむしろ関心をよせています。この本を意識的に手に取られた方々も多分そう感じておられることでしょう。サポーターの手を離れて、居住者たちが織り成すこれからの日々が、「震災で生まれた新しい住まいは、21世紀の住まい方のモデルのひとつになるのか」という問に答を示してくれることになるでしょう。
 わたしたちコレクティブ応援団はそろそろ後方支援にまわり、居住者の自然体の生活展開を見守っていこうとしています。「よう分からんと入居したけど、わたしはこんな暮らしがええわ」という人たちが住むようになればいいなと思っています。言い換えれば、「わしはこんな住まい方は向かんわ」という人が、他へ移り住めるような受け皿住宅が保証されるようなことも必要です。さらに、年月の経過とともに生じてくるであろうさまざまな課題については、個別に悩むのでなく、ふれあい住宅の居住者たちが共通の課題として協同で対応策を考えたり、求めていけるように、「ふれあい住宅連絡会」のような居住者の自律したネットワークができることを願っています。
 今や時代のニーズとして全国各地で、仲間と集まって暮らすための動きが出てきました。血縁以外の仲間と集まって暮らすことの安心感と快適性を求める人たちです。すでに実行されている事例もいくつかあります。新しい住まい方にはそれを求める人たちの暮らし方のイメージの共有が大切で、共住を指向するグループはその助走期間=醸成期間を大切にして準備されているようです。
 一方、各地で進められている密集市街地の整備などによって、70歳代、 80歳代になって初めて鉄筋コンクリートの共同住宅に住むことになる人たちも少なくありません。そんな人たちに丁寧に、継続して、新しい住まい方のイロハをサポートしていくことが不可欠であるということを、被災地の災害復興住宅の入居後の状況が実証しています。ハードの住宅建設とソフトの居住サポートが備わってはじめてほんまもんの住宅供給であると言える時代にきています。

 わたしたちコレクティブ応援団の活動に弾みがつき、中途半端ではやめられへんという責任感を与えてくださったのは、市民まちづくり支援基金としてHAR基金(阪神・淡路ルネッサンス基金)に寄付を寄せてくださった全国の方々です。感謝いたします。コレクティブ応援団の活動に直接参加して笑顔と手を貸してくれた多くの仲間のみなさん、ありがとうございます。本書の執筆にあたっては、粘り強くお尻をたたきつづけてくださった学芸出版社の前田裕資氏と温かな越智和子さんにお礼を申し上げます。
2000年7月
石 東 直 子
 

装丁 上野かおる
A5・232頁・2400円+税
2000年8月30日第1版第1刷発行

■■内容紹介■■
全国初の公営協同居住型集合住宅が震災後の神戸に誕生した。その言いだしっぺであり、応援団という立場で情熱的に関わってきた都市プランナーが、計画づくりから入居者の居住サポート・ネットワークづくりまでをホットに記録。隣人とふれあって暮らすことの安心感と楽しさを持つ新しい住まい方を発信する。


著者

石東直子(いしとう・なおこ)

 大阪市生まれ神戸育ち。都市計画プランナー。技術士(建設部門、都市および地方計画)。1965年大阪市立大学家政学部住居学科卒業、67年神戸大学大学院修士課程修了(都市計画専攻)。且s浦都市開発建築コンサルタンツ等に勤務後、84年から2年間、中国天津大学大学院と華中理工大学大学院で都市・住宅環境整備等の講義。86年石東・都市環境研究室を開設、現在に至る。
主な著書/「現代中国の生活・住居・街」(龍渓書舎、1979)、「好きやねん中国 わたしの中国 喜・怒・楽日記」(学芸出版社、1987)、「新時代の都市計画5 安全・安心のまちづくり」共著(ぎょうせい、2000)

コレクティブハウジング事業推進応援団(略称=コレクティブ応援団)

 震災の年の石東直子が小林郁雄とともに発案し設立した専門ボランティアグループ。都市計画プランナーや建築家、医師や福祉関係者、行政の職員の外にコレクティブハウジングに関心をもつ多分野の人たちが参加している。被災地でのコレクティブハウジングの事業化に向けて、自治体への提案、計画への参画から、その後の事業の展開に沿って各段階で必要とされるサポートに対して支援活動を続けている。
 現在(発行当時)の事務局は小林郁雄、天川佳美、吉川健一郎と応援団長の石東直子の4人。また、コレクティブ応援団の応援団であるコレクティブ学生応援団も継続的に組織されている。
 


ファイルダウンロード(全文)

PDFファイルです。
下記をクリックして「ファイルを保存」等でダウンロードください。
ファイルダウンロード(全文)

目次

はじめに

序章 コレクティブ応援団の活動開始   多分野の専門家ボランティアによる情熱的サポート

………………………………………………………………

1章 応急仮設住宅の暗と明   一般仮設住宅と地域型仮設住宅


………………………………………………………………

2章 第1号神戸市営「真野ふれあい住宅」の取り組み   協動の計画づくりと居住サポート


    「神戸市コレクティブハウジング研究会」の流れ    疑似居住者参加の計画づくりワークショップ    募集要項の検討・出前説明会・応募者像    入居前協同居住の学習・体験ワークショップ/暮らしのこん談会    みんな笑顔で入居したが…    2年目の春は新体制で仕切り直し
………………………………………………………………

3章 一度に5住宅を事業化した県営コレクティブ   いろんなパターンを試してみましたというが…


   兵庫県のコレクティブハウジングの事業方針    県営第1号の片山ふれあい住宅    大団地の中のコレクティブ/大倉山ふれあい住宅    神戸東部新都心のコレクティブ/脇の浜ふれあい住宅    その他のさまざまなふれあい住宅
   設計上の課題 ── 日本的な協同居住とのミスマッチ
………………………………………………………………

4章 再開発事業受皿住宅でのコレクティブ   神戸市長田の下町居住の再生


   そんな住宅理想的や、そやけどわたしら5年も待たれへん    こんな造りの住宅で、このような住人です    下町生活の自然体の協同居住が展開しはじめた    入居一周年記念と忘年のつどい
………………………………………………………………

5章 ふれあい住宅居住者交流会の発足   悩んでいるのはウチだけじゃない!


………………………………………………………………

コラムとして掲載

  ◆コレクティブハウジングに求めるもの

  ◆応援団の活動を振り返って

  ◆解題

………………………………………………………………

おわりに


2011.05.27〜