本の会  データライブラリー01

 
 
算用数字か漢数字か
はじめに  扱っている本がほとんど横組みということもあって、数の表記が悩みの種になっていた。とくにコンピュータで原稿整理をすると数字表記が一仕事になる。数を検索して算用数字か漢数字か判断していく。高速の判断を要求されて、たいへん疲れる。その上、ミスがたくさん残っている。快適な判断基準とできれば、コンピュータに判断可能な基準がないものか、求めるところ切なるものがあった。そこで数字表記を考えてみた。
目的  数字表記の基本原則はなにか。単純でだれにも理解可能な法則性は得られないか。
方法  判断に迷った具体例を挙げ、本の会のメンバーに意見をもらう。意見の集約と分析から法則を求める。
 提示した例
 ひとり、ふたり、ひとつ、ふたつ、いちど、にど。その他として以下の語句、1要素にすぎない。1国の問題。1匹の猫。数10人。10代。第2次世界大戦。交響曲第5番(第9番)。5番街のマリー。第3の男。女3人寄れば姦しい。3段跳び。階段を1段上がる。1回きりしか行っていない。2回は失敗しない。女3界に家なし。2階から3階節が聞こえてくる。
術語の例として、2音抑制 出席したメンバー:本の会のメンバー10人。
結果  ひとり、ふたり等に関しては、数の概念を含んでいないものは漢字または平仮名にする。数を入れ替えてみて(1人を2人、3人と置き換えてみて)違和感があれば、漢字または平仮名。しかし、1人1人(ひとりひとり)という表記もあり得る。その語にどのくらい数を意識するかは、その人の経験、知識に影響される。ひとり、ふたりを1人、2人と書くことはあるが、みったり、よったりを3人、4人と書くことには抵抗がある。
 3つの表記が混在し、隣り合う場合、それを避けたいという著者、編集者の意識も潜在的に有る。
 一人暮らし、独り暮らし。はっきりしないこともある。この場合、平仮名書きとしてもよいではないか。
 数の表記は統一しないという立場もある。考えるほどの読みづらさはないからである。
 数の表記は著者の趣味と感性による。趣味と感性は背景にもっている原理があるはずである。1人の著者の原稿はあるまとまりがある。数人で手分けして書かれた原稿は困ることがある。
 コンピュータで原稿整理をすると、原理原則で統一したくなる。
 横書きの数字表記は算用数字を使うことが多くなっている。

結論  1、全ての数の表記は算用数字でできる。
 2、漢数字、平仮名書きにしたくなる要因がある。
   ・成語
   ・慣用句中の数
   ・(単なる数を越えた)意味
   ・強調
   ・情緒
   ・感性
   ・ローカルルール
   ・読み違えを避ける(2人分、ふたり分)
   ・和語
   ・見た目の斉一性
 3、数の表記は混在せざるを得ない。
 4、論理性の強い文章、理工学書などは術語の類まで、算用数字にしておかしくない。

平仮名書きか漢字書きか 結論  1、よい・とき・くる・いく等平仮名か漢字か迷いそうなときは、全て平仮名にできる。
 2、漢字にさせる要因がある。
  ・慣用
  ・成句
  ・読みやすさ
  ・感性
 3、混在するものである。
送り仮名 結論  1、国語審議会の「送り仮名の付け方」の原則に統一できる。
 2、統一を妨げる要因がある。
  ・慣用
  ・成語
  ・旧来の表記の影響
  ・ローカルルール
 3、混在せざるを得ない。
その他  「いく」と「ゆく」、「いい」と「よい」、縦書き中に横書きの引用文を入れるときの数字表記などの処理の仕方、縦書き中の欧文に続ける受け点
 ケースバイケースで処理されている。ケースの積み重ねが必要。
1996年6月23日

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