これがデザインの力だ
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風景と共振する


光の反転


 

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 五年前に起きた9・11世界同時テロ惨事を哀悼記念する国際コンペで、世界63カ国5201名の中から最終案になった8案の中の一つ。

 ひとりの人間として、希求するものは、数千にのぼる犠牲者の生命を追悼し、ヒーロー達の果敢な勇気を称え、同時に、人間の意識の啓蒙と生への畏敬の再認識と、自由への意志に対する勇気づけ、憎悪、無知、不寛容の和解への喚起を提示するものである。

 このメモリアルは、悠久な宇宙の太初から輝き続ける「光」、生命の根源である「水」、生命と生けるものを培う「空気」と「大地」、これらの4種類の普遍的要素で構成されている。地上公園は、生命の再生を象徴し、公共儀式の場と追悼の場を提供する。地階には、未確認犠牲者碑領域が設置され、被害者と被害者家族がともに、訪問し、沈思し、安息することのできる、静謐な場を提供する。地上から地階へとスロープを下ると、「光」、「水」、「空気」に表徴表現化された空間が広がる。北建築跡には、抽象的に正確な94階と95階のフロア・プランを表し、全体の床面の照明は中心部を残して遮断されている。 北壁は、被害者の氏名を刻んだ透明ガラス壁で覆われ、この背面には、全壁に渡って絶え間なく水が流れ落ちている。西壁面はメモリアル施設の趣旨と英雄達の記章を、東壁面は事件の歴史を刻んだ黒御影石が各々東西に建立される。

 南建築跡には、被害者の魂への追悼を象徴する反射池が設置される。夜間は池の底面から光りの輪が夜空に投影され、水蒸気によって、水炎を空間に映し出す。

 地下の犠牲者碑領域と緩やかな地上公園にある円形の天蓋が一体化し、その円柱から宇宙に向けてのレーザー光線によって、慰霊碑と宇宙に超時間性に連結してゆく。

 メモリアル施設案は、「光の反転」と題され、生けるメモリアルである。

愛知県立芸術大学 佐々木敏雄
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