今年も都市環境デザイン・フォーラムの季節がやってきました。数えて16回目を迎える当フォーラムも、毎年の責任委員長方式により様々なテーマが用意されてきました(下欄参照)。大まかには「環境や風景」(5回)、「まちなかのデザイン」(4回)、そして「デザイン手法」(4回)といったテーマを掲げ、毎年暑さの厳しい夏から秋にかけて、自主的参加の委員を加えた委員会でアイディアや企画を練り上げ、議論を重ねた上で開催にこぎ着け、多くの関心ある方々の評価を得て参りました。また、この16年の間に毎月セミナーを開催し、こちらはなんと約150回を数えています。
さて、今年の都市環境デザインの世界で、話題の出来事はなんといっても京都市の新景観政策の実施でしょう。乱雑な都市開発により、どんどん壊されて行く京都の街を守り後世に伝えていくために、思い切った強いダウンゾーニングが行なわれました。われわれ都市環境デザイン会議・関西ブロックでも、数回の議論をへて京都市にこれを積極的に支持する申し入れを行いました。
いろいろな意見や課題をもつとはいえ、京都市が発信したこの景観保全を最優先する強い姿勢は、日本中の景観を考える行政や市民に強いメッセージと勇気を伝えたと思います。
ご承知のとおり京都は日本のふるさとであり、最大の観光都市でもあります。
とりわけ景観は観光の最大の要素であります。ところが近年、この観光のイメージも様変わりして、従来の観光産業を中心とした史跡・景観・買い物・飲食中心の団体観光から、個人あるいは小グループによる交流・学習・参加・体験型のそれへとニーズが移ってきているようです。更にそれまでとても観光地、観光都市と見られていなかった街や地域や農村などの一部が、あるいはそこでの日常の暮らしやまちづくりなどの生活文化が、ある日突然観光の対象として拡がっています。こうした動きは、地域の人材や資源発掘などによるまちづくりや村起こしなど、内発的な活動が起点となっています。これまでの観光にはなかった(観光になるとも思ってもみなかった)街を磨く動きなどを訪ね、触れ合い、地域の人たちと一緒に楽しむ旅は、新しい発見に満ちています。
本年はこうした新しい観光の姿をテーマに「都市観光の新しい形〜暮らす・歩く・楽しむ・招く」として、様々な角度からこれを考え、そして都市環境デザインに引きよせて、何ができるか・すべきかを議論できればと思います。今回久しぶりにいつもの大阪都心を離れ、新しい地域観光を模索する岸和田市に会場を移してのフォーラムとなりました。会場の提供など大変お世話になった岸和田市さんには厚くお礼を申し上げます。
最後に、このフォーラム開催にあたり、ご支援ご協力をいただいた多くの関係者の方々に感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。
関西ブロック代表千葉桂司
はじめに
都市環境デザイン会議(JUDI)
(参考)
第1回(1992)「関西は今」/第2回(1993)「田園と自然を考える」/第3回(1994)「土木と環境デザイン」/第4回(1995)「まちとアイデンティティ」/第5回(1996)「都心居住の環境デザイン」/第6回(1997)「仮想世界の誘惑」/第7回(1998)「大地への取り組み」/第8回(1999)「参加型都市環境デザインをさぐる」/第9回(2000)「環境共生型都市デザインの世界」/第10回(2001)「街の遺伝子」/第11回(2002)「かたちと関係の風景デザイン」/第12回(2003)「都市環境デザインのファッションとモード」/第13回(2004)「歴史と向き合う街とは、癒しの風景とは」/第14回(2005)「都心のまちづくり、その担い手」/第15回(2006)「デザインの力」。
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