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土木デザインキーワード06a/土木デザインの理念

神の技

(C) by 前田裕資

土木技術は神の力の具現化である

 昔、 子どもの頃読んだ戦記の中で印象に残っている事がある。 たしかガタルカナルの話だったとおもうのだが、 日本軍が苦労に苦労を重ね数カ月を費やしてもなお完成しなかった飛行場が、 アメリカ軍に占領された直後、 もう使えるようになっていたというのである。 当然、 占領される前に破壊したはずなのにどうしたのか。 ジャングルのなかに潜み盗み見てみると、 機械が飛行場を縦横無尽に走りまわり、 日本軍の爆撃でできた穴など一瞬のうちに直しているではないか! これがブルドーザーと言うものだった。

 ブルドーザー、 パワフルな土木技術は現代の神だと思った。 日本にもこんなすごい物が使える時代がくるのだろうか。 モッコとツルハシしかない日本が情けなく、 みっともなかった。

 ところで現代日本、 今や世界有数のブルドーザー大国に違いない。 飛行場もアメリカに負けない。 超高層だって作れる。 空中庭園までつくりだした。

 ちょっとうんざりだな。 すこしヒューマンにゆこう。 田んぼなんていいじゃないか。 というので2000年前につくられた標高1300mに達する世界最大の棚田を見にいった事がある。 やはり巨大だ。 人の手でつくられたからといってピラミッドや万里の長城がヒューマンスケールであるはずがない。 同じようにきわめて人間的なはずの棚田も、 極端に大きくなると驚嘆はするが安心感はない。 これもまた、 つくられた当時は神の技であったのであろう。

 同じ田んぼでも、 それが世界最大の棚田と同様優れた潅漑技術に支えられているとしても、 普通の風景には無理がない。 広々とした田んぼは面積としては決して小さくはないのだが、 巨大さがない。 何かが違う。 造ったものの気負いか、 技術の「こなれ」具合だろうか。

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