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土木デザインキーワード26a/時間の中の土木
10年後の姿
(C) by 舟引敏明
10年たったらどうなるか
デザインというと出来たばかりの絵姿をすぐ考えがちですが、 土木構造物は一旦つくったら相当長い年月生き延びていきます。
完成予想図のパースにだまされてはいけません。 10年後の姿をよく考えてデザインを行うことが必要です。 施工して10年以上たった公園を管理していると良く分かります。
- (ポイント1)10年間維持できるの?
高価な材質を用いれば、 それなりに立派なものができますが、 壊れたらどうしましょう。 維持管理は整備より予算が少ないのが通り相場です。 特注品などが含まれていれば、 あらあら、 もう部品を手に入れることすらできません。 そうなると立派な材質のサインの代わりに木製の看板がたってしまいます。
表面的なものだけではありません。 不安定な構造を採用すると、 長い年月の間には必ず壊れる危険が生じます。 崩れる法面は崩れるべくして崩れるのです。
芝生もそうです。 維持管理で最も金を食うのは芝生の管理です。 デザインする時はあまったスペースを芝生で埋めるのは見た目にも奇麗で簡単ですが………。 意味もない芝生を管理するのは誰。
- (ポイント2)10年たったら素材はボロボロ?
はやりの素材を用いるのは良いのですが、 本当に長い年月持つのでしょうか。 メタルの橋も良いのですが、 塗装のやり換えはやはり大変です。 絶対大丈夫と保証付きで導入した舗装材が、 わずか5年ではげることもあります。 擬木も10年経てばただのコンクリートの柱に化けてしまいます。
- (ポイント3)10年たったら木は育つ
10年経てば植物はどんどん大きくなります。 美しいパースにとらわれすぎて、 最初に完成形に近い形で植物を導入するのは愚の骨頂です。
初期投資は高いは、 枯れた時の損害は大きいは、 大きくなった植物に隠れてせっかくのデザインが見えなくなるは、 あまり良いことはありません。 完成直後の満足感を少し諦めれば、 安くてすむのに。
- (ポイント4)あっちにもこっちにも同じのがたくさん
造った当初は珍しくても、 10年も繰り返していれば同じようなものはどこにでも出てきます。 厚化粧の構造物はたくさんあると見苦しくなりかねません。 過剰装飾です。
彫刻公害と言うのも同じようなものかもしれません。
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