質疑応答
|
呂先生にお尋ねします。
この1年半ほど中国で仕事をしているのですが、 北京だけでなく中国の大都市では都市空間が市場化されてしまっているしているという印象を受けました。 もっとも都市空間の市場化という点では日本の方がもっとひどい状況ですが。
都市計画はあっても、 民間企業が開発の権利を獲得してしまうと、 より大きな容積率、 より高い建物を建てるために逆提案を行って、 その後当局との間にどういうネゴシエーションがあるのか分かりませんが、 結果的に従前の都市計画が変わってしまうというようなことがあります。 そんなことが起きるのはごくわずかかもしれませんが、 実際にそうした状況を見てしまうと、 今後の中国の都市はどうなっていくのだろうと考えてしまいます。
その点、 呂先生はどうお考えですか。
呂:
確かに今、 中国ではご指摘の通りの状況があります。 形式上は厳しい詳細計画であっても、 実際には当初の計画とは全然違う方向に行ってしまうことがあります。 その点については私たちも問題にしており、 都市計画管理をもっときちんとやるしかないと考えています。
一方的に計画してしまう都市計画にも若干の問題はありますが、 開発できる土地は限られているのですから、 もっと最初の計画段階で全体的な景観デザインも含めて検討すべきです。 ただ国民感情としては、 政府に対する信頼感が薄いものですから、 とれるときにとっておきたいという気持ちがあることも確かです。 また、 都市空間の市場化も都市計画がなし崩しにされてしまう大きな要因のひとつです。
だからこそ、 アーバンデザインが今の中国では重要だと私は考えています。 今は都市と建築の関係性、 つまり街区をつくるという計画性に欠けていると私は認識しています。 特に北京はそうです。 上海はまだましだと思っています。
つまり、 団地の作り方でも、 プライベート空間は一生懸命作るのですが、 回りの道路や街に関わる空間は裏面という意識だからあまり力を入れて作らない。 だから、 建物が出来ても景観に貢献しないのです。
最近私は建設省や学会でもそういう話をしていますが、 今後もいい方向にもっていけるよう意見を言っていきたいと思います。
昨日参加した国際フォーラムでは、 都市のグローバリズムについての問題点が話し合われました。 ジャカルタで起きている都市開発に見られるグローバリゼーションについて、 グナワン先生のコメントをいただきたいと思います。
グナワン:
今お見せした事例もグローバリゼーションというよりアメリカナイゼイションのひとつと言えるでしょう。 こういうアーバンデザインはアメリカの考え方に影響されることが多く、 例えば用途の規制や土地利用の強度のコントロールなどをやっています。
グローバリゼーションは今に始まった事じゃないですが、 特にインターネットの登場でそれがどんどん強まっています。 一方で、 個人がインターネットを通じて特定のグループに近づくことが出来るようになり、 それを政府がコントロールすることはできません。
グローバリゼーションの時代のアーバンデザインに関して言うとすれば、 我々もそうしたアメリカ中心のグローバリゼーションの考え方や手法を吸収しますが、 一方でローカルアイデンティティに関する我々自身の関心を高めることも重要になってくると思います。
鳴海:
今日はお二人の先生にそれぞれの国におけるアーバンデザインの現状をご紹介いただきました。 呂先生は歴史的環境保全センターの仕事もされております。 グナワン先生は日本流に言えば民家研究の権威であり、 インドネシア的な建築造形がインドネシア文化にどういう影響をもたらしたかなど、 歴史的な研究もされています。 今日はお二人の専門の話はほとんど出ませんでしたが、 機会があれば中国、 インドネシアを訪ねて立派なキャンパスや残っている文化遺産を見てみるのもいいと思います。 お二人の先生の大学のキャンパスを訪れたことがありますが、 圧倒的な規模を誇るキャンパスでした。
今日はお二人に、 グローバリズムが進む海外の都市の現状をお話ししてもらいました。 この問題に関しては日本もよく似たベースにあると思います。 我々自身もいろいろと考えさせられることの多い報告でした。
お二人の先生、 どうもありがとうございました。
中国の都市で進む都市空間の市場化について
佐藤健正:
都市のグローバリズムの動きについて
鳴海:
このページへのご意見はJUDIへ
(C) by 都市環境デザイン会議関西ブロック JUDI Kansai
学芸出版社ホームページへ