ティオティワカン遺跡の作り方 

石丸 信明

 今回のメキシコ行きは準備にかける時間がなく、行ってから、感じ考えるというスタンスでした。私の中では、ピラミッド=シンボリズムという構図を勝手に作り上げ、実際に現地に到着したときは、一体これは何なのかとまず戸惑いました。
 ティオティワカン遺跡は盆地の中にあります。全体的に緩やかな傾斜のついた敷地です。軸線を中心に、太陽のピラミッド、月のピラミッドほかが配置されています。直角の軸線上に一段下がった広場が連なり、その周りに人が住んでいた跡があります。
歩いていくと、ピラミッドの傾斜が各場所により微妙に違うことに気がつきました。
 背景に周囲の山があります、背後の山の稜線とピラッミドの外郭線がかさなることがわかりました。人が動くと、シーンにより見え方が変わるので、どんどん前にいきたくなります。札幌モエレ沼公園にあるイサムノグチのプレイマウンテンに上ったことがあります。あのときの経験をさらに、高度にした状態です。きっとイサムノグチもここにきたことがあるのでしょう。気がつくと、月のピラミッドも太陽のピラミッドも上まで上っていました。
 この都を構想したひとの頭のなかでは、きっとリピータに新鮮な気持ちを持たせるディズニーランド効果を考えていたのでしょう。ものとしてだけでなく、人の動きに伴いいかに魅力ある様にみせるか。斜面と人間の身体を使って、柔らかな変化し続ける経験を与えています。
きっと、太陽や月のピラミッドという名前ですので、このピラッミドを使った天文学的ショーが行われたのでしょう。人や、自然はすべて変わり続ける中、かわらないものとしての天文学を人々にわかりやすく見せることが、権力を持っているものには必要だったのでしょう。一度機会があれば、その天文学的ショーをみてみたいものです。
 しかし、今不思議なのは、これだけ多くの人がすんだのに、近くに全く水の気配がありません。これも、歴史の謎なのでしょうか?
  
テオティワカン 遺跡のレイアウト