NEXT21は、 そのひとつの手段として大阪ガス株式会社により建設された実験集合住宅である。 1993年10月に竣工後、 1994年4月から5年間の予定で人が実際に住まう居住実験を行って、 データを公開している。
以下に大阪ガス商品開発室の加茂みどり氏提供のデータ・解説に基づき、 概要を紹介する。
委員長 内田祥哉(明治大学教授)
計画概要
計画のコンセプト:「環境と豊かさの調和」
テーマ :「省エネルギー」「環境保全」「ゆとりある生活の実現」
名 称 未来型実験集合住宅NEXT21
主要用途 集合住宅(18戸)
所 在 地 大阪市天王寺区清水谷町6-16
敷地面積 1,542.92m2
地域地区 住居地域・準防火地域 建ぺい率60% 容積率300%
規 模 地上6階、 地下1階
建築面積 896.20m2(58.1%)
延床面積 4,577.20m2(容積対象面積4,152.90m2(269.2%)
駐車場面積 424.30m2)
高 さ 最高高さ:25.42m (PH27. 95m) 最高軒高:22.66m
駐 車 場 20台(3段式機械駐車装置:18台、 自走式平面駐車:2台)
平面図
立面図
90年2月 基本計画検討開始
92年6月 工事着手
93年10月 竣工
94年4月 入居・居住実験開始(〜99年3月予定)
組織
副委員長 巽 和夫(京都大学教授)
委員 深尾精一(東京都立大学教授)
委員 高田光雄(京都大学助教授)
委員 近角真一(集工舎建築都市デザイン研究所代表)
委員 高間三郎(科学応用冷暖研究所代表)
委員 遠藤彰三(大阪ガス株式会社商品技術開発部長)
委員 千藤雅弘(大阪ガス株式会社マーケッティング企画部長)
設計ポイント
2段階供給方式
NEXT21では、 住宅を、 共用部分として社会性の強い構造躯体(耐用年数は約100年)と、 私的性格の強い住戸部分(耐用年数は約25年)とに分離して建設する躯体・住戸分離方式を採用している。
図1 2段階供給方式 |
NEXT21では
また躯体設計においてはスラブの一部分、 主には共用廊下部分を逆スラブとし、 配管スペースとした。 配管を住戸内に引き込む場合も梁貫通をさけ、 住戸内の床仕上げ面を上げることにより、 すべて梁の上部を通すこととした。 また配管は全てフレキシブル配管とした。
これにより、 従来の集合住宅では最も可変性の低かった水回り空間の間取り変更も可能となり、 配管の更新・変更に伴って躯体を傷つけることもなく、 躯体の耐久性を確保することにもなる。
住戸設計
都市居住者のライフスタイルやニーズは多様化し、 集合住宅におけるその対応の手段についてはいくつかの提案がなされている。
について
NEXT21では、 これらそれぞれの手段において住戸設計が行われた。
図2 ライフスタイル提案型住戸
図3 住まい手参加設計住宅リスト
フレキシブルシステム
NEXT21では主に外壁に関わる部材・建材をある規格によって部品化するシステムズビルディングを採用した。 これにより、 外壁部材の取り外し・取り付けが容易になり、 外壁の配置替え・更新再利用が可能となる。
立体街路
NEXT21では、 都市部の活性化を図るため、 集合住宅は立体的に積層された一つの街であるという考えに基づいて、 共用廊下や階段を街路空間に位置付けて立体的に構成し「立体街路」と呼んでいる。
図4 立体街路概念図 |
また、 生ゴミ破砕搬送装置、 フレキシブル防水パンシステム、 自動風呂ユニットなども新たに開発し導入した。
そのほかキッチンにコンピュータを設置し、 レシピの検索を可能にしたキッチンコンピュータも評価が高い。
この緑地は北方約1kmにある大阪城公園より飛来する野鳥を屋上へ呼び込み、 各階の植栽を伝って、 エコロジカルガーデンまで降りてくることができるように形成されている。
また、 高効率の燃料電池を核とするコージェネレーションシステム、 高密化・高断熱化、 太陽電池、 住棟植栽によるパッシブクーリングなど、 様々な実験的試みを導入している。
最新の設備機器
常に換気をしながら室内の空気質を良好に保つと同時に全熱交換器を介して排気熱を回収する24時間換気空調システムを導入した。
サステイナビリティ
環境保全
NEXT21の敷地面積は約1500m2であるが、 1階の中庭(エコロジカルガーデン)や屋上に各々200m2、 その他ベランダや街路部も合わせて1012m2の植栽を施し、 縦方向に積み重なった緑地空間を形成した。 住棟内や屋上の植栽土壌は、 保水性がよく断熱性能の高い人工土壌を使用しているが、 比重が通常の土の約半分であるため、 躯体への負担を軽減している。
省エネルギー/省資源
生ごみや生活排水を住棟内でクローズド処理するアクアループシステム、 中水を回収しトイレや植物の散水に利用する中水処理システムを導入している。
図5 アクアループ・中水処理システム
図6 エネルギーシステム
入居後の実験
居住実験
NEXT21では1994年4月より1999年3月までの5年間の予定で、 人が実際に住まう居住実験を実施している。
図7 NEXT21実験体制 |
NEXT21では建設当初、 及び通時的にも、 間取りや水回りを自由に設計できるフレキシビリティを確保した。
リフォーム実験は、 NEXT21で試みた建築システムの有効性と、 集合住宅におけるリフォームの問題点を抽出・整理することを目的とし行った。 加えて近年、 建材から放出される有害物質(ホルムアルデヒド・揮発性有機化合物)を低減する手法が模索されていることを考慮し、 体にやさしい健康的な建材の使用を試みた。
リフォーム実験
住戸は住まい手のニーズやライフスタイルの変化、 または住宅の老朽化等の時間的変化を考慮した場合、 住戸は状況に合わせて可変であることが必要となる。
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