コミュニティの再生と一口で言っても、経済開発や福祉計画、ボランティア活動、低所得者住宅、高齢者対策、ホームレス問題、雇用促進、教育改革など、地元の公共政策や民間事業に関わる膨大な問題を含んでいる。本書では、それらのすべてを逐一解説するのではなく、サンフランシスコならではの特色ある事例や関係者のユニークな活動と考え方を紹介し、それに私自身の考察を加えて解決策を模索するように努力してみたが、それらがどの程度日本のシステムに適用できるかは今後の課題である。
今回、さまざまな分野の経験や知識を活かしてコミュニティに尽くしている多くの人々に会って一番感じたことは、官民の違いにかかわらず、それぞれが気負うことなく淡々としかも合理的に仕事を処理していることであった。そこには、天から授けられた使命というと大袈裟かもしれないが、自分が何に役立つことができるか、自分が何のためにこの世にいるのか、といったことに対する真摯な姿勢が見られる。しかも彼らの多くは、確固たる目的を持ちながらも、同じ部署や団体に必ずしも長く留まることがない。事実、本書で紹介した方々の中には、すでにその団体を離れて別な場所で活躍している人も何人かいる。快く取材に協力してくださったこれらの人々にまず感謝の意を表したい。
また連載中、現在まで1年半余りの間に、予想を超えて6千以上のアクセスを得ただけでなく、インターネットを通じて、日米の大学院などで研究されている都市計画や都市行政の専門家、それに日本で福祉のまちづくりを実践されている方々からさまざまなご質問、ご意見を頂いた。日本を長年離れている私にとっては、日本の現代社会の関心事を知る上で貴重なフィードバックであった。皆様のご厚意に感謝したい。そして最後に、毎号我慢強く激励して頂き、最終的なまとめの段階でも数多くの貴重なアドバイスを下さった学芸出版社編集部の前田裕資氏に、特別のお礼を申し上げたい。
98年1月