虚空蔵横丁周辺の路地



虚空蔵横丁周辺の路地


 虚空蔵横丁は、今も残されている旧東海道の横丁の一つである。
 旧東海道から新馬場北口通り(サクセス品川)に抜ける裏の路地が虚空蔵横丁であり、虚空蔵尊の縁日で賑わう養願寺がこの横丁にある。
 旧東海道から虚空蔵横丁を覗き込むと、突き当たりに養願寺の木立が見える。
 この養願寺の門前までの路地の左手には、飲食店が続いている。品川名物の品川丼で知られるお鮨屋さんもある。品川宿は、昔から江戸前の漁場として、食の文化も豊かであった。その伝統は今も街に引き継がれている。
 養願寺の境内は狭く、路地との境界も無く地続きである。寺と隣の住宅も軒先を突き合わせるほどに近く、境内は、開放的で親しみやすい。
 養願寺を回り込んで行くと休業中の銭湯があり、その前には赤レンガ塀が続いている。赤レンガ塀のくすんだ色合いが、横丁の路地に似合っている。
 この銭湯の裏側に入ると、古い木造家屋の密集地と路地が拡がっている。長屋もあり、手押しポンプ式の井戸が据えられている路地もある。この井戸の水は飲めないが、今も打ち水等に使われている。表の商店街の喧噪もここまでは届かず、行き交う人の足取りもゆったりしている。この一画だけ、おだやかな別の時間が流れている。