路地に表出する給水管 |
新宿西口は、今は超近代的な街に変貌しているが、戦後の闇市時代には、鉄道線路脇にバラックの店が軒を並べる街だった。一時は1600軒余りの店があったというが、共同ビル化等が進み、残されているのは限られた一画のみである。
ついこの間(1999年)まで、七福小路とよばれた闇市時代の名残を残す飲み屋街が西口の線路脇にあったが、ビルの建替えの際に無くなってしまった。新宿東口の花園神社脇のゴールデン街とともに、闇市時代の雰囲気を残す、数少ない飲み屋街が西口の思い出横丁である。
![]() 新宿・思い出横丁の位置 |
西口地下広場から地上に出ると、目の前が小滝橋通りである。通りに面して、デパートがある。デパートの前を通り過ぎて、東口に通じる鉄道ガードの方へ曲がると、その一画に思い出横丁はある。
線路に沿った路地の入り口には、やきとり横丁の名の入ったゲートがあり、一画の中央を貫く路地の入り口には、思い出横丁の名の入ったゲートがある。この一画に、80軒ほどの店が集まっている。表通りである小滝橋通りに面する店は、飲食店の他、ドラッグストアあり、チケットショップあり、メンズショップあり、古本屋ありと色とりどりである。
線路沿いのやきとり横丁の方は、飲み屋ばかりなのだが、質屋さんがなかに1軒あり、なるほどと意味も無く頷いてしまう。中央の思い出横丁は、飲み屋の他、食堂もあり、夕刻にならずとも、昼食を求める人がうろつく路地でもある。路地を通る人や、店の人の間から、東南アジアらしき国の言葉が聞こえてきたりする。脇を通る電車の音も、ひっきりなしに聞こえてくる。
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![]() 新宿・思い出横丁の路地 |
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思い出横丁の路地は、幅2mほどで、少し中折れしており、見通すことはできない。この路地の両側に間口1間、奥行き2間ほどの店が密集している。狭い店を補うべく、屋外に1ヶ所、共同トイレがある。昔は、飲み屋街の共同トイレは、珍しくなかったように思う。今は取り壊されてしまった新宿南口の飲み屋街に、やはり屋外の共同トイレがあったように思う。この共同トイレに行くための、店の裏を通る細い路地がある。この路地は、まさに店の裏側であり、給水管、ガス管、排水管等、あらゆる管がむき出しのまま路地に表出している。店の表側の路地でも、裸の蛍光灯が路地を照らし、電気配線が絡まりあったりしているのだから、どっちもどっちであると言えるかも知れない。都市の美観等と言い出したら、早速、槍玉にあげられそうな光景である。それでもと言うか、それだからと言うべきか、人は集まるのである。