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第8号

2000年10月23日

 

 本日の日経記事「ドイツで広がるカーシェアリング」(10月22日社会面、 東京版38ページ)をご覧になられた方も多いことと思います。

 このシステムの背景には“Local Agenda 21”があります。 タウンモビリティがこのローカル・アジェンダ21がらみで重要な役割を担うことになると考えますので、 予定を変更し日経記事にない部分に触れたいと思います。

 (Local Agenda 21については後述。  日経記事をご希望の方はFax番号をお知らせ下さい。 )


1。 記事の概要

 「家計・環境…車頼りを見直す」という大きな見出しが縦に入っている記事です。 カーシェアリングとは一台の車を複数の人で利用するシステムで「会員制度のレンタカー」ト説明されています。

 第一号がベルリンで1988年に誕生。 現在は全国組織が出来、 国内に80組織、 4万人、 車両数は1800台。 フランクフルトの「シュタットモビール」の例が紹介されている。 今年4月の営業開始で、 会員200人、 駐車場は市内八ヵ所、 計15台の乗用車やワゴンを備えている。

 利用者の声として「月2万円近い節約になる」という。 仕組みは入会金150マルク(約七千円)、 敷金800マルク(約3万7千円、 退会時に返金)、 毎月14マルクプラスkm当りの使用料。 予約は24時間いつでもOK。 予約車のセンサーにユーザーカードを認識させ利用する完全コンピューターシステム。

 維持費や駐車場探しが無いことも大きなプラス。 また車依存からの脱却や大気汚染を減らすという地球環境への貢献大なるものがあります。


2。 Local Agenda 21とは?

 まずAgenda 21は「21世紀に向けての課題」で、 リオ・デ・ジャネイロの地球サミット(環境と開発に関する国連会議/UNCED、 1992年)において合意された文書の一つ。 Local Agenda 21は、 地方自治体が市民、 地域団体や企業と対話し「持続可能な発展」を実現するための行動計画づくりを進めることを求めています。 (「地球環境政策におけるローカルアジェンダ21に意義及び可能性〜豊中アジェンダ21を事例として」 佐藤 徹著 http://www1.plala.or.jp/tyamagut/toyonaka-agenda/agenda.htm)


3。 タウンモビリティとの関係

 電動スクーターや電動車椅子は排気ガスも騒音も出しません。 車道は走らないことになっていますから、 交通渋滞も引き起こしません。 当然に英国ではShopmobilityをこのアジェンダ21の中に取り込もう、 という動きが出てきます。 カーシェアリングはドイツだけのシステムではなく、 EUのプロジェクトですから英国もそのメンバーになっています。 一部地方自治体がShopmobilityとの連携を検討し始めています。

 日本でLocal Agenda 21に本気で挑戦している地方自治体は未だ少ないようです。 佐藤徹さんは豊中市をこの分野で最先進都市に押し上げた方です。 詳しくは上記のホームページをご覧下さい。

 超高齢社会対策の決めては「Mobility」にあります。 モビリティのあるまちづくりを進める上で、 市民(商店街も含めて)が行動へと結集して行く突破口となる具体的なプログラムがタウンモビリティです。

 今後、 タウンモビリティを展開してゆく上で、 Local Agenda 21の視点を取り入れ「しなやかな」動きに持って行こうではありませんか。


4。 ブレーメンのカーシェアリング

 『音楽隊』で有名なブレーメンのカーシェアリングの発足は1990年。 現在会員2000人、 100台の車両(うち3台は天然ガス車)と28のステーション(パーキング)を持っています。

 入会金は60マルク(約3千円)。 利用料は二本立てで基本が1時間、 1日と1週単位の3分類、 これにkm当りの従量制です。 車は2人乗りからバンまで5種類12車種の中から選べます。 最少のSmartの場合は次の通りです。

 2。 5マルク(約120円/時、 プラス0。 50マルク(約25円)/km
 なおこのSmartの一日24時間の基本料金は35マルク(約1700円)、 キロ当りは0。 50マルクと同じですが100km以上は0。 30マルクになります。

 利用の三分の一は使用前1時間以内の申し込みです。 会員はカードとPINナンバーを使ってステーションにあるキーロッカー開け車のキーを取り出すシステムです。

 カーシェアリングの特徴は次の2点です。

(1)Green Park instead of Car Park

 「パーキングの代わりに公園を」の実績は、 カーシェアリング1台で4〜10台分のパーキングスペースが節約できた、 という報告があります。 都市の限られた貴重なスペースをどう使うべきか、 という問い掛けが基礎にあります。 また「あなたは1日平均何時間車を使っているか? 車用のスペースが無ければ住宅のコストも下がるではないか」など、 都市生活を見直そうとの声に耳を傾ける人が増えています。

(2)Better air, less noise through less traffic

 空気、 騒音に加え事故やエネルギー消費も減らせます。 ブレーメンでは年間400万kmの走行距離が減ったのですが、 これは800トンのCO2減少に相当するそうです。

 カーシェアリングはCityCarClub(一語になっています)とも呼ばれていますが、 EUのZEUS(Zero Emission Vehicles in Urban Society)のプロジェクトです。 これらCityCarClubが結成したECS(European Car Sharing Network)には、 ドイツ、 オーストリア、 スイス、 アイルランド、 オランダ、 スエーデン、 デンマーク、 ノルウェイなどの300都市が参加しています。 何れはこれらの都市での共通利用が可能になるでしょう。

 1970年代に始まった“人間のためのまちづくり”(歩行者空間づくり)がタウンモビリティを生み出しました。 日本でも“歩けるまちづくり”の広がりと、 超高齢社会への突入によりタウンモビリティはDoor to Doorの連続する交通体系のリンクの中で「要」となるのは疑いありません。

 つまり車や巡回バスなどでまちへきた後の『足の確保』が無いことには人間の生活行動圏は拡大しないからです。

「タウンモビリティ」のホームページは(財)国土開発技術研究センターのWebsite
にあります。
 http://www.jice.or.jp/jishujigyo/townmobility/t_2.htm

 「タウンモビリティ通信」の各号は次のWebsiteでご覧になれます。
 http://web.kyoto-inet.or.jp/org/gakugei/kanren/town/index.htm
 これは『タウンモビリティと賑わいまちづくり』の出版元、 学芸出版社のWebsiteです。

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