阪神大震災復興市民まちづくり
vol 8

あとがき


編集作業を終えて

『復興市民まちづくり』の“中間的”総括

 まずはじめに、この『復興市民まちづくり』にVOL.8までおつきあいをいただいた読者の皆さんと、ニュースを提供しつづけてくれた方々に対して深くお礼を申し上げます。ほんとうにありがとうございました。

 このシリーズを締めくくるにあたり、編集に係わらせていただいてきた者として、少し雑感を述べたいと思います。

復興ニュースは偉大だ!

 本書は、復興まちづくりに関連するニュースを3ヶ月ごとにまとめて発行してきた、それだけです。加工や、不要な解説は極力避けてきました。また、そんな余裕もないというのが現実でした。こういった編集方針をとってきたのは、ニュースに込められている情報─復興まちづくりの方法やそれに携わる人たちの思いなど─がそこに確実に凝縮されており、これを多くの方々に出来るだけ早くお知らせすることは、復興まちづくりの質を高めることと、より早い復興の達成に何らかのお役に立つのではないか、という意図からでした。ですから、事務局としてはニュースを集め、そのまま定期的に送り出すだけでよかったわけです。それだけ、この素材の持つ意味は大きいということで、今もそれは変わっていないと思います。

編集作業での苦心……“資料性”と“活用性”

 編集に係わり一番苦労したことは、復興まちづくりの盛り上がりとともにニュースが急増し、すべてのニュースを収録できない事態に直面したことです。VOL.3、4では、半分に縮小して対応してきましたが、VOL.5からはそれも不可能となりました。何を重視して編集するか─われわれのネットワークも重点的に取り組み始めてきていた行政の支援策が乏しい“白地区域”に着目しそれをきっちりフォローすること、にシフトすることにしました。行政の方でも区画整理や再開発に関する資料集を作成するということも決め手になりました。

 この時点で、本書の持つ“資料性”はある意味では減少しました。しかし、上記に述べたように、われわれの思いとしては復興まちづくりに携わる多くの方々に少しでも役立つ、すなわち“活用性”を元々のねらいとしていたわけで、それは一貫した本書の理念であるように思います。今回VOL.8の編集にあたり、復興まちづくりニュースの発行・編集・支援作業に携わってこられた多くの方々から熱いメッセージを寄せていただきましたが、本書はこれらの方々の思いや努力を受け止めてこられたものと確信します。

 すこし減少したとはいえ“資料性”としての本書の価値は、一般的によく耳にします。いち早く震災後5ヶ月目で出版し、その後定期的に出版を重ねてきた本書は、現在被災地で盛んに取り組まれている震災資料収集・作成の先鞭をつけたともいえ、我々としては当初の目的とは別に新たな成果を獲得した、ということかもしれません。

今後の展開・課題

 このシリーズの『復興市民まちづくり』はひとまずこれで終了しますが、誰もが言うように復興市民まちづくりはこれからも5年、10年と続きます。よって、復興市民まちづくり支援ネットワークの活動は、これからも当分の間は続くと思います。

 ネットワークの自主的な情報メディアである「きんもくせい」については、まずは50号まで継続し、そのあとはかたちを変えて新たな出発をすることになると思います。『復興市民まちづくり』のような取り組みは、今回送られてきたメッセージによって改めて復興ニュースの重要性を再認識させられたこともあり、今後も何らかのかたちで継続していきたいと思っています。

 復興の前線で奮闘されている方々、全国の多くの支援者の方々、復興への道のりは長いですが、これからもともに歩んで行きましょう。

阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク事務局
中井 豊


復興市民まちづくり支援ネットワークの活動を振り返って

 思い返せば、大震災直後全壊してしまった我が事務所を呆然と眺めながら、「これは腰を据えて」と変に落ち着いていたことを思い出しています。

 水道、電気、ガスが止まってしまって日常生活がままならぬなかで、仕事どころではなく、倒壊家屋の中から資料を運びだすことだけを考えていた時、いろんな人に“危ない被災地に居らず避難を”と勧められましたが、私は神戸を離れることができませんでした。

 机やいすを引っ張りだし、自力で電話線をつなぎ、遠くで話してるようにしか聞こえない電話がなりはじめたとき三重県の実家に一時避難していた中井君が電話を架けてきました。1月23日(月)。ちょうど地震発生から1週間目でした。わたしは『ぐずぐず言わずにこれから先神戸で仕事をする気ならさっさと帰って来い!』と受話器を握って早口にそう言い、高速道路を通る通行許可書を警察にもらう手順まで伝え、それからずっときょうまでこんな大変な作業に引きずり込んでしまいました。

 2月10日に復興市民まちづくりニュース「きんもくせい」創刊号を発行してからほぼ2年間、事務局に名を連ねていますが私は何もせず、ほとんど総ては中井君の努力のたまものです。このニュースの発行は阪神間の復興まちづくりにむけての活動を情報発信し、それぞれの立場で奮闘努力している人々の指針になればとの願いでした。

 この間に私自身もたくさんのことを「きんもくせい」から学びました。そして「きんもくせい」以外の多くのまちづくりニュースを集めて大胆にも出版物として社会にでることになったときの興奮はいまでもはっきり覚えています。その「復興市民まちづくり」は京都の学芸出版社さんから1995年5月にVol. 1を発行していただき2年を経て、Vol. 8にて今静かに休憩に入ろうとしています。

 長いお付き合いだというだけで京極さんにもずいぶんご迷惑なお願いをしてしまったにもかかわらず、2年間よく辛抱してくださいましてほんとうにありがとうございました。神戸大学には勝手に事務局を押し付け1年あまりを児玉善郎さん、後半大西一嘉さんにお世話になりました。また、'95年3月からはファックスネットワークとして全国8つの大学、5つのコンサルタント事務所のご協力を得ました。ありがとうございました。そして何より全国の読者の皆様にはたくさんの切手を送っていただき助けていただきました。

 こうやって皆様にお礼を申し上げるとすべてが終わるようですが、本当の“復興市民まちづくり”はこれからが正念場です。花畑が家々に変わっても、殺伐とした町にならないように、仮設住宅から恒久住宅に移っても、孤立した生活にならないように、私のような小さな力でも取り組むことが大切と思っています。

 ネットワークの面々もこれからの課題は山積みです。すべてがこれからです。5年や10年でもとの阪神間がよみがえるとは思えませんが、今まで応援してくださった皆様、これからも応援してくださるだろう皆様、どうか見守っていてください。私たちは焦らず、じっくり、100年先の神戸のために変わらぬ取り組みを続けてまいります。

阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク事務局
天川佳美


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学芸出版社『阪神大震災復興市民まちづくりVol 8より』

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