街で多くの市民まちづくりネットワークのプランナーや、 有能な市民と出会った。
しかし、 書を捨てた学者は単なる中年男。
息切れして、 3ヶ月、 ベルギーに遁走。
新鮮な眼?で最近の動向に、 若干の提言を行いたい。
昨年末、 小林郁雄氏の名言「飽きた、 疲れた、 もうどうでもいい」の頃に比べれば、 雲泥の差。
各地区では住民提案も出始め、 ビジネス環境も少しはよくなったのか。
それはそれで結構なことだが、 各地区の個別問題に住民もプランナーもひたりきっている。
たとえば、 初年度、 毎週百人近くを集めて、 まちづくりの情報交換の場となった「長田の良さをいかしたまちづくり懇談会」が、 隔週で15人しか集まらない。
シニカルに総括すれば、 震災以後のまちづくりの経験は、 住民のため息を前に、 個別のまちコンの技量向上と、 図面仕上げと収支保障で幕を閉じようとしている。
専門家がコンサルの仕事を終えれば撤退するのは果たして当然なのだろうか。
「震災語り部キャラバン」を受け入れたのも、 向島であった。
向島のまちづくりの特色は、 単なる防災都市計画ではなく、 向島を愛する川の手倶楽部のオペラ・演劇・農園・観月会等の多彩な日常活動に展開し「まちづくり瓦版」で報告される。
この市民活動を支えているのが、 まちづくりを担当しているプランナーである。
まさに、 プランナーが市民活動のコーディネーターになっているのである。
向島がまちづくり市民交流を進めているドイツのハンブルグ市オッテンゼンにも同様の市民フォーラムがある。
オッテンゼンを愛する映画監督・漫画家・学者・演劇家・写真家・政治家、 それに建築家が、 この町の魅力の創造に関して意見を出し合い、 旧労働者住宅を保存して資料館にしたり、 工場跡をレストラン街に改造したりしている。
90年代に入って展開したオッテンゼンのgentrificationは、 この市民フォーラムによって提言され、 支えられた。
そこでは、 建築家は一人の発言する市民として重要な位置を占めている。
阪神グリーンネットやコレクティブハウジング事業推進応援団、 野菜耕作隊など、 被災地の現状のなかでのまちづくり市民活動を継続しており、 改めて感動する。
これこそ、 市民文化創造の動きであり、 町を愛するプランナーの市民活動なのだ。
この震災以後のまちづくりの経験では、 プランナー・建築家・医者・商店主・主婦・社会学者・都市民俗学者・ボラティア・役人・新聞記者などのさまざまな出会いがあり、 胸襟を開いて知恵を出し合った。
この知識をさらに高め、 市民財産として共有する必要がある。
そもそも、 都市計画プランナーの働きとは、 幸福な都市社会の構築作業のうち、 街からのアプローチであって、 再開発や区画整理・共同建替のシノギの場ではない。
学者の働きが大学の講義ではなく、 学術の視点からの市民社会の幸福追求であるのと同様である。
考えてみれば、 神戸は市民文化の脆弱な都市であった。
階層ごとに住む地域が限定されたため、 東灘はモダンな高級文化の消費活動に終始し、 西北神の新中間層は個人主義に徹して何もしない。
長田には文化を語る余力が少なかった。
官製の婦人会に、 コープこうべで色づけられた翼賛市民活動はあっても、 市民の中からわき起こる市民まちづくり活動はほとんどない。
真野地区での住民活動はあっても、 その地の土着作業に終始し、 都市全体のまちづくり文化創造に連帯させる力は弱かった(いや、 そんなものを信用していない?)。
今こそ、 我々は、 震災以後の経験を生かした、 今後のまちづくり・都市生活を展望するフォーラムをつくる必要がある。
日本の次世代のまちづくりにおける最大の阻害要因は、 地方分権と地方自主財源がないことだといわれる。
しかし、 まちづくりの展望を語れる場、 人々の結びつきが組織化しないことも、 さらなる問題である。
ところが震災を経験した神戸では、 そうしたフォーラムの芽は出た。
我々は、 この芽を大切に育てたい。
でなきゃ、 神戸は単なる貧乏、 不運な街に成り下がる。
地震を経験しなかった人々が、 かえって羨むような市民の知恵を鍛え、 蓄積をするサロンをつくる必要があり、 それをフォーラムに育てていく必要がある。
共有スペースは入居者が協同で使用し、 維持管理していくことになり、 順調な協同生活が展開されるためには、 協同生活が軌道に乗るようなサポートが必要であろう。
どのようなサポートシステムが必要なのかを、 筆者なりに考えてみた。
なお、 災害公営住宅での対応にのみ限定せずに、 一般住宅での展開をも考慮にいれたものとしている。
多方面からのご意見をいただき、 より現実性のあるものに深めていきたいと思っています。
〈公的機関〉
管理の3区分〉
突然やってくる大災害における初期の修羅場を乗り越えるには、 近くに居合わせた者の機転や判断、 その時点その場において最良だと思う行動を各自分の責任において行うことしかありません。
ここに書かれている事は、 初めから計画的に遂行したのではなく各段階を何度も振れながら、 協議・調整を繰り返した記録です。
まとまりを欠きますが災害時の危機管理体制を考える上での参考にしていただければ幸いです。
1・2 支障者の救助、 安全箇所への誘導
1・3 公に設定されている避難場所へとりあえず避難誘導
1・4 管理員の安否、 所在の確認(CI社)
1・5 エレベータの使用禁止(EVの扉に貼り紙)
1・6 NB社が給水車段取りと調査隊派遣対応(必ず2名で行動)。
とりあえずの現状調査と出来る範囲の現場処理(CI社及びNB社巡回)
1・7 NB社にとりあえず以下1・9〜1・11の事項を指示
1・8 避難先リストの作成(各自申し出)
1・9 マンション内とその周辺の危険個所の仮排除、 立入禁止の処置、 生活通路の確保
1・10受水槽、 高架水槽の破損状況チェックとその状況により揚水ポンプ電源OFF
1・11直圧給水栓からの水の流出状況の確認(断水せず超低圧で流す場合あり)
イ)給水車の配車(道路事情を考慮して小型車とし、 水は3t、 乗員2名)。
ロ)配車の順序・日時の決定(各マンションへは、 3日に1回搬入と決める)。
この段階では、 給水車の確保はできたが道路事情が不明のため各マンションへ到着できる時間が読めず、 マンション住民へは(一部を除き)到着時間帯を知らせず。
このため、 正確に情報を伝達しないなどの不満が管理会社に寄せられた。
1・12余震が起こるため、 マンションの破損状況を勘案し避難が必要か否かを判断し、 できるだけ避難するよう説得(CI判断)(現実は数人残る)。
管理員も被災している場合あり、 勤務に対する指示は、 その場その時の状況判断による臨機応変の処置が必要。
1・13居住者が興奮し、 マンションが今後住むに耐えられるかどうかの判断(安全性の確認と検査の方法など)を迫られるなど険悪な状態にあり、 とりあえず元施工会社などの専門家による目視などの調査・診断を行うことでその場を収拾。
また、 その場において踏み込んだ判定(技術者としての個人的見解であることを明確にして)をせざるを得ない場合があった。
1・14エレベータの早期運転再開のため、 安全調査と修理・改修の支持。
エレベータの大破(ロープの切断、 籠大破-1マンション)、 シャフト壁破損、 レールの曲がり
1・15大破マンションは防犯・防災上、 トラロープ・張り紙等で立入禁止処置。
見張り等のための仮設管理事務所(2名分の広さ程度)を幹事会社に要請。
居住者は、 貴重品等身の回りのものを取り出すため危険を省みず立ち入り。
管理会社に援助を要請されるも、 居住者個人の判断で処置をお願いする。
1・16居住者の親戚・知人・友人からの自転車の貸出の要請あり。
CI関係者からの要請(多数)あり(対策本部)(困惑)
お問い合わせは事務局まで)
それがいま見事に大輪を咲かせはじめ、 岡本地区一帯がひまわりで彩られています。
今が見ごろです。
シドニー大学グループ(学生14名、 教員5名)は、 6/16から数カ所の仮設住宅を訪れたり、 鷹取・水道筋の各地区で調査活動を行ってきました。
当日午前中の発表では、 作業に当たった学生たちが、 “仮設住宅の改善"、 “コミュニティハウジング"、 “記念とコミュニケーションの場"などの提案を約50枚のスケッチ等で紹介するとともに、 学生たちと会場とのディスカッションも行われました。
午後からは、 9大学・11名による被災地実態についての発表があり、 避難所や仮設住宅、 地場産業、 GIS、 復興支援活動、 まちづくりの提案など、 建築・都市系に限らず多角的な内容の発表が行われました。
優秀賞は以下の通り。
(松本誠著、 『兵庫地域研究』〔神戸新聞情報科学研究所〕第4号.
96.5、 600)……・これからの神戸市における“住民参加のまちづくり”についての課題が提起されています。
多くの被災者の参加歓迎
■連絡先:阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク事務局
復興フォーラムの提言
大阪外語大学助教授(都市民俗学)森栗 茂一
まちコンは技術屋以上、 都市文化創造の旗手たれ!蛸壺化
帰国して驚いたのは、 プランナーの元気。都市文化のコーディネーター
東京都墨田区向島のまちづくりは、 「一寺言問を防災のまちにする会」が路地尊の設置をしたことで有名である。市民文化創造の中核に
市民まちづくりネットワークも、 単なる都市計画家の情報交換の場ではない。
復興フォーラム概念図
コレクティブハウジングの協同居住を
軌道に乗せるためのサポートシステム(被災地にコレクティブ ハウジングを!/その8)
石東・都市環境研究室 石東 直子
現在、 設計が進められている災害公営住宅でのコレクティブハウジングは、 それぞれの住戸は少しコンパクトになるが、 台所、 風呂、 便所は備わっており、 それに共有スペースとして共同の台所、 食堂、 談話室、 洗濯室等をもったような共同住宅になる。コレクティブ ハウジングの協同生活
(掲載者注:以下は大きな表の一部をを箇条書きになおしたものです)
―サポート システムのプログラム(私案)―
〈住宅供給主体〉
〈協同生活の運営プログラム・住人と住宅供給主体との合作〉
p2
モデルハウスの設置 etc.
阪神大震災マンション復旧レポート(抄)
シーアイハウジング管理株式会社大阪支店 矢敷 光史郎
「状況が全てである」―ドゴール将軍
災害時においては「何ができるか考えてそれを為す」以外に何等為す術はありません。1.対応の順序
〈第1段階-震災発生直後の処置〉
〈第2段階-復旧もしくは解体、 建替えの判断のための調査診断〉
〈第3段階-復旧もしくは解体建替えについて組合との調整〉
〈第4段階-工事費用と負担方法の決定と発注〉
〈第5段階-長期計画の見直し〉
2.各段階における主たる内容
〈第1段階-発生直後の処置〉
1・1 入居者の安否の確認と各住戸出入り口の確保
イ)玄関扉の開閉困難の仮解除
ロ)面格子の取り外し
ハ)ガスの元栓(遮断装置があっても)の閉栓、 電気ブレーカーOFFの確認
(以下、 「第2段階〜第5段階」、 「3.管理体制上での問題点と考慮すべき事項」、 「4.復旧を進めるにあたり問題になった事項と考慮すべき事項」、 「5.その他考 慮すべき事項」は省略。
被災したマンション(神戸市長田区)
INFORMATION
岡本地区のはるかちゃんひまわり、 元気に開花!
今年の3月31日、 岡本地区(神戸市東灘区)一帯で、 阪神グリーンネットのメンバーと岡本交友会の方々により、 ひまわりの種まきが行われました(「きんもくせい」26号参照)。
岡本のひまわり
震災で全壊し、 蔵だけを残す
旧谷崎邸跡地に咲いたひまわり
歩道沿いに咲いたひまわり。
道行く人々の心をなごませている第1回被災地実態についての学生発表会開催
7月6日(土)、 震災復興・実態調査ネットワーク主催の「第1回被災地実態についての学生発表会」並びにシドニー大学建築学科学生による復興計画提案発表が、 灘区山麓部にある神戸インスティチュートで行われました。
シドニー大学学生の仮設住宅改善提案の一部
野菜畑、 駐輪場の整備、 ソーラーシステムの導入など
被災実態学生論文発表会(7/6.神戸インスティチュート)震災復興関連著作の紹介
「『住民参加のまちづくり』の系譜と展開-神戸、 豊中、 国分寺3市の比較研究-」被災者復興支援会議・第3回フォーラム“住まい再建を巡って”
日時:7月21日(日)14:00〜16:00
場所:フェニックスプラザ2階ホール
(三宮センター街東入り口北側.フェニックスプラザは'96.7/20オープン)
内容:被災者(10名程度)と「被災者復興支援会議」のメンバーによる円卓会議。
問合せ:被災者復興支援会議事務局 TEL.078-321-2994
P.4
Restoration from the Hanshin Earthquake Disaster/SUPPORTER'S NETWORK for community development “Machi-zukuri”
〒657 神戸市灘区楠丘町2-5-20
まちづくり株式会社コー・プラン
TEL.078-842-2311 FAX.078-842-2203
担当:天川・中井
〒657 神戸市灘区六甲台町1
神戸大学工学部建設学科
TEL.078-803-1017 FAX.078-881-3921
担当:大西 一嘉
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