本書は1990年に出版された『都市デザインの手法−魅力あるまちづくりへの展開』の改訂版である。その前には、わたくしがまとめ役となって、『都市デザイン:理論と方法』を1981年に出版しているから、これが三代目ということになる。
前書が出版された同じ年に、本書の中でも触れているが、都市環境デザイン会議が設立された。この会議は、「建築」「土木」「ランドスケープ」「インダストリアル・デザイン」「アート」「都市計画」の分野の会員によって構成されており、結成後、さまざまな形の活動が積極的に展開されてきている。このことは、都市のデザインに関する課題が、社会的にもますます重要視されてきていることを反映している。
本書の構成は基本的に前書を受け継いだもので、その後の制度の改正や都市デザインをめぐる社会的な関心を勘案して改訂を加えている。もっとも大きな改訂部分は、「イベントと都市デザイン」の章を削除し、新たに「環境共生と都市デザイン」を加えたことである。その理由は、前書を作成していた時期にいわばブーム化していたイベント型のまちづくりが沈静化し、代わって環境をめぐる課題を都市デザインの領域に取り組むことの必要性がますます重要視されてきたからである。
改訂のもう一つの背景として、1995年1月、大地震が兵庫県南部地域を襲ったことがある。震災復興への努力が現在も被災地において進められているが、その中で、協働のまちづくりの重要性がこれまでにも増して、強く認識されてきている。このことを踏まえ、「まちづくりと住民参加」の章を大幅に改訂している。
本書は都市デザイン、環境デザインを学ぶ者のための入門書として編まれているが、実際にまちづくりに取り組んでおられる方々の参考にもなる。デザインというと「美的あるいは奇抜に装うこと」と思われがちである。しかし、デザインは、「美しい」「わくわくする」「温かさがある」「ほっとする」「なごむ」などといった、人間の感覚的な評価を重視した創造行為である。デザインをそのように理解し、本書に親しんでもらえれば幸いである。
1998年3月