『先輩からのメッセージ「建築を志す人びとへ』の出版は、この事業の一環です。 執筆陣は当協会出版委員会委員として活躍される方がたであり、大学・設計事務所・建設会社などに勤務されるその道の専門家です。したがって、本書には専門家でなければ書けない貴重な体験談や苦労話とともに、いわゆる「現場」に身を置いて初めて知り得る実務上のノウハウが分かりやすく記述されています。そして、なによりも題名が示すとおり、とくに建築を志す若い人びとに読んでほしいという、先輩から発信する熱いメッセージが全編を貫いて構成されています。
建築に関心のある一般の方がたはもとより、建築の世界に生きる若い人達にはぜひとも読んでいただきたい一書です。
ふり返りますと、日本建築協会が創設された大正6年という時期は、わが国近代建築の黎明期にあたり、建築界もまた揺藍の時期でもありました。それから80年、社会・経済のめざましい進展とともに、建築をとりまく環境も自ずから変化してきました。そして、当協会が果たすべき役割もまた時代とともに推移し、今日に至っています。
「建築を通じ、広く社会に貢献すること」を目的として、当協会が今後さらなる発展をしていくためにも、若い人の力はまさにその原動力になるものです。
最後になりましたが、本書の刊行に寄せて、執筆にご尽力いただいた皆様には厚くお礼申し上げます。
1997年3月
社団法人日本建築協会会長 市川 宏