はしがきより




ドキュメンテーション小委員会のあゆみと諸成果


 1960年に創設された当委員会(創設当時の名称はUDC小委員会)は図書委員会の下部組織ですが、ほぼ37年の歴史があります。
 ちなみに、ドキュメンテーションとは情報の収集・整理・活用を効率的におこなうための考え方とそのための術を指します。
 委員会の創設期には、UDC(国際十進分類法)の建築応用版(ABC)の編纂と普及やSfB−UDCおよびCI−SfBの翻訳作業など欧米の建築分類法を検討しました。続いて国内建築ドキュメンテーション活動の現状を把握し、さらに「建築学便覧」“情報管理”の項目の執筆、「建築情報源ガイドブック」(1990、1993、1995、1997)、「建築分野の文庫・コレクション目録」(1997)の編纂発行などを通じてその成果を建築界に提供してまいりました。
 委員会活動の目標は、以上からもあきらかなように、建築ドキュメンテーション活動を建築界に定着させることとそれを普及することにあります。

本書の目的と内容


 本書は、以上のような委員会活動の諸成果をふまえて、建築の企画・設計にかかわる情報の収集、整理と活用についての実務的なノウハウを提供するところにあります。

 

電子化による情報の収集・整理・活用と在来のノウハウの組み合わせが秘訣


 現在、建築情報の収集・整理・活用の各場面において電子化が着々と進んでおり、これを抜きにしては効率的な情報の収集、整理、活用は出来ません。コンピュータを道具や手段として効率よく使える情報リテラシーが、これからの企画・設計の情報活用には不可欠でありましょう。本書もそれらを十分に意識して書かれております。
 しかし電子化がすべてを解決するかというと決してそうではないと思います。
 在来の収集・整理・活用法も効果をあげており、本書はそれらについても紙数を割いており、双方の巧みな組み合わせが、これからの建築ドキュメンテーションの要諦でありましょう。

本書の読者対象は個人か組織か


 本書は、1.情報の整理と活用を目指す個人を対象とする部分、2.組織内における情報センターの存在を対象とする部分の二つが混在しています。
 これはつぎのような理由によります。
 私たちは、規模の大小、運営方法のいかんを問わず、設計組織のなかに「情報センター」機能が存在し、それらがネットワークにより連携する建築界の情報体制について考えており、本書を通じて企業等における情報センター設立のための一助としたいということから、2における情報の整理と活用の実際についてふれていますが、そこでの考えかたや実際を個人の情報活用に応用することは十分可能で、本書は個人の立場からも読んでいただけると思います。

 本書が、建築情報を扱う個人や機関にとってのヒントを提供しあるいはマニュアルともなれば私たちの所期の目的は達せられたと申せます。なお、本文中にも引用しましたが、本書は当委員会の成果である『建築情報源』(井上書院刊、1997年刊行分より従来の『建築情報源ガイドブック』という書名を改題)および『第二版 建築・都市・住宅・土木アクセスブック』(菊岡倶也編著、学芸出版社刊)の両書とは兄弟姉妹の関係にありますので、これらも併せてご活用いただければ、情報アクセス・整理・活用はいっそう深まると思います。
 末筆ながら、本書が刊行されるまで種々お世話になりました親委員会である図書委員会(笹田剛史委員長)の委員各位、日本建築学会図書館の奥津昌哉課長および関係各位に心よりお礼申し上げます。

日本建築学会図書委員会
ドキュメンテーション小委員会
      主査  菊 岡 倶 也

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