プラン作成をとおして自分のまちの将来像を描き出す |
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市民版まちづくりプラン
実践ガイド 渡辺 俊一・太田 守幸 編著 |
読者レビュー 近年、まちづくりに関わる本が数多く出版されています。この状況は、10年位前と比べると隔絶の感があります。本書は、市民がまちづくりに関わる一方法論としての「市民版まちづくりプラン」に着目して、実践例の紹介と実際にプランを作成するためのガイドとなっています。 まちづくりは、住まいやまちをつくる行為に市民・行政・専門家等の様々な主体が関わる活動ですが、活動を通してより望ましい空間や仕組みが形成されるとともに、プロセスを通して主体としての意識が変わること、能力形成が行われること、そして、力をつけることが期待されています。つまり、「主体的な学習と行動」こそが、まちづくりにとって不可欠な要素です。本書も指摘していますが、今までの経験を学ぶこと、そして、市民にとって必要な技術・知識を身に付けることが欠かせません。 本書は、そのための一つの道筋を教えてくれます。実践例は、実際のプランづくりの現場を知ることができますし、プランづくりに必要な市民の技術として現場から学ぶワークショップと資料を読み解く能力と討論の技術を育むための輪講ディベートを紹介しています。 とはいうものの、市民にとってどのようにまちづくりに関わっていったらよいのでしょうか? まちづくりに取り組むきっかけとして「市民版まちづくりプラン」はなりうるでしょう。本書を手掛かりにまちづくりプランづくりを実践する……。いや、必ずしも容易なことではないのが現実の世の中です。組織づくりは、まさに人間同士のコミュニケーションの賜物であり、行政との関係も必ずしも良好な状態からスタートするとは限りません。その意味で、まちづくりは、まさに非予定調和に展開されるものです。本書はあくまでもガイド、実践例には書かれていない隠れたリアリティや苦悩の状況を思い描きながら、ダイナミズムを持った創発的な行為のきっかけになればと思います。プランづくりだけが目的では、面白くありません。 合わせて、読者が本書を通して、新しいまちづくりプランのあり方(「まちづくりのプロセスの設計」と「プランの監視・管理・評価」にどのように市民が関わっていくかなど)を考えることも期待したいと思います。 (国連地域開発センター研究員/吉村 輝彦)
担当編集者から 行政がつくった「マスタープラン」はどうも実現性に乏しく、きれいに仕上がっているが難しくて読みにくい。そこで、市民自らが自分たちのまちのプランをつくったものが、ここで紹介する「市民版まちづくりプラン」である。プランの作成過程には、自分たちのまちを見つめなおし、みんなで協力して、議論して、良くしていこうとする姿勢が常にある。 行政との葛藤もあれば、互いに協力しあい、刺激しあっている場合もある。1編の実践編に登場する四つのまちも、それぞれの取り組みがあり、作成されたプランもマスタープランだけでなく、環境プラン、農地計画と、そのまち特有のものである。 今後のまちづくりの指針となるプランを、あなたのまちでも作ってみてはいかがでしょう。 (N)
まちづくりプランといえば、その都市の将来像を描き、人々の将来を左右する大切なプランである。そんな大層なものを市民がつくる。そのためのガイドブックを出版しようなんて、とんでもないことを考える人がいるもんだと、密かに思っていた。だいいち、そんな面倒くさいことを誰がやるのだろうか? 行政に任せておいて、それに文句を付けているぐらいがせいぜいではないか。 いまもそう思わないでもないのだが、実例を読んでゆくと、案ずるよりも産むが易しという感じだ。まちづくりとなると「××に反対」といっているだけでは限界がある。個別の一つの切り口だけで語っていても、連帯の輪はなかなか広がらない。そういう意味で、恐れずにまちのあるべき将来を語ることは必要な第一歩なのかもしれない。 この本が、全体性を見据えたまちづくり運動に、いくらかでも貢献出来ればと思う。 (M)
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