osusume2  ジーキルが庭づくりにかけた情熱とセンスを
 独自の視点でひもとく
“イングリッシュガーデン”の源流
ミス・ジーキルの花の庭


宮前保子 Miyamae Yasuko



四六判・192頁・2200円+税
11月20日発行

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 読者レビュー

 著者の宮前さんは環境デザイン、環境保全活用計画の第一線で、また造園の教育、研究の場で造園界をリードする女性造園家である。その彼女が、女性造園家のパイオニアとしての立場を同じくするイギリスの大先輩、ガートルード・ジーキルを取り上げた。
 本書ではまず、イギリス庭園の流れを追う。イギリス庭園がヨーロッパ各国の庭園様式からどのような影響を受け、イギリスの風土に合わせてどの部分を取り入れていったかを明快に解説している。社会情勢の変化により風景式庭園からコテッジガーデンへと移り変わる中で、本書の主人公ジーキルが登場するくだりは特にテンポがよく、ワクワクと興奮さえ感じてしまう。
 またジーキルのガーデンデザイン、カラープランニングを解説するだけでなく、造園の研究者として日本の造園がそこから何を学び取れるかを探り、著者自身の造園論を展開している。これによって私たちは、ガーデニングブームの中でただ単にイングリッシュガーデンの形を模倣するだけでなく、その思想の中から日本の風土に合わせて何を取り入れることができるかを知ることができるのだ。
 そういった造園論を展開しながらも、当初ジーキルが工芸のプロフェッショナルとして活動するには困難があったこと、ガーデニングの世界では仲間の協力を得て女性のパイオニアとして認められたばかりでなく、ガーデニングそのものを一つの専門職と社会に認知させるまでの働きをしたことなど、女性史の視点が挿入されるのも著者ならではと思える。
 1988年、全国組織に先駆けてKALAWO(関西女性造園家協会)を発足させる推進力となったのは宮前さんだった。造園界での女性の位置を考え手をつなごうと声をかけるきっかけとなったのが、このジーキルとの出会いだったのかと今になって思う。ジーキルへの愛情と共にランドスケープの世界に対する筆者の思いも感じ取れる一冊である。
(全国女性造園技術者の会副会長・KALAWO幹事/仲結花)


 担当編集者から

 日本で一大ブームを巻き起こしたガーデニング。その原型は19世紀末に英国で誕生した「イングリッシュガーデン」だといわれています。今では、イングリッシュガーデンといえば、庭好きの方ならすぐに美しい草花が彩る庭を思い浮かべることでしょう。しかし、イギリスにこういう庭が誕生したのは、ほんの100年ほど前のことなのです。本書は、その庭の生みの親であるガートルード・ジーキルという女性造園家にスポットをあて、彼女の生き方や今なお多くの造園家のお手本となっているその庭づくりの魅力に迫ります。まだ社会で女性が活躍する機会がほとんどなかった時代に、新しい庭を生みだすことにかけた彼女の情熱やひたむきさは、時代や国を超えて私たちの心を揺さぶります。すでにイングリッシュガーデンの世界に恣りつかれている方もそうでない方にも、庭づくりの奥深さや楽しさを味わってもらえる一冊となっています。
(M)

 

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