osusume2 仕事としての都市環境デザイン、
その多様な発想と担い手
都市環境デザインの仕事


鳴海邦碩+都市環境デザイン会議関西ブロック編



A5版・192頁・1,900円+税
11月20日発行

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 読者レビュー

 先日見たテレビ番組ではどこかの駅前再開発の問題を取り上げていたが、最後に司会者(確か森本毅郎だった)が「最近は全国どこでも、再開発、活性化、まちづくりという言葉が溢れているけれど、街はちっともよくならない」という類のことを話していた。再開発、活性化まではまあ納得としても、「まちづくり」に対する世間の印象も同じなのか…とがっくりしてしまった。
 しかし確かに「まち」に対する関心自体は近年、市民レベルでも高まりつつあるようだ。すでに海外旅行が一般化した今日、ヨーロッパの美しい街並みをみて帰ってきた日本人は、我がまちの醜さに辟易している。世は不況、派手な遊びはとっくにすたれ、身近なところに目がいく時代。住民参加が大切なまちづくりには今が格好のタイミングなのかもしれない。だが「きれいな街とはどういう街か?」コンセンサスが得られない。たまに有名建築家が建てる建物は、普通のガイドブックにも紹介される程やたらに浮いた存在で、街をかえって醜くしている。
 都市環境デザイナーの仕事は、そんな問題を解消し、地域の人々のコンセンサス形成を促しながら、美しい街をつくることなのだろう。ただ造形・意匠の分野に疎い自分がデザインという職業、デザイナーという人種に持っている印象は、基本的によくない。何か押しつけがましい感じ、あるいは自分のセンスがすべてと思っている人達…。だからかどうかわからないが、普段はこうしたデザイン系の人達が書いた本は読まないのだが、この本は頼まれたので仕方なくつい読んでしまった…。
 その印象は偏見だったようだ。デザイナーにもいろいろいる。やっぱり思った通り我が強そうな人もいたが、そうでない人もたくさんいるらしい。「ドイツの街はどうで、それに比べて日本は…」といつもの説教をされるのかと思ったら、コンクリの郊外住宅地に原風景を見いだす人もいる。そんな多様な都市環境デザイナーの等身大の姿が分かる本、しかも内容は濃い。専門家による都市環境デザインやランドスケープに関する基礎知識、ベテラン・若手の苦心と熱意、仕事場案内や検索情報もある。これからのまちづくりを担う若い世代には特にお薦めだろう。
(東京大学 先端科学技術研究センター 都市環境システム分野 大西研究室助手/瀬田史彦)


 担当編集者から

 本書の執筆者に職業を尋ねて、まず「都市環境デザイナー」と名のる人はひとりもいないのではないだろうか。皆、建築や都市、土木、ランドスケープのデザイナーやプランナー、あるいはアーティストだったりと、まず本職というか、核というか、とにかくちゃんとした専門分野をもっている。それに、都市環境デザイナー自体が巧く説明できない職業だ。
 本書でやろうとしたことは、それぞれに専門をもつ執筆者が、都市環境デザインという意識をどこかで共有し、「仕事」として取りくんでいる状況を著すことだった。意識の共有にとどまらず、社会で通用させ、それで生活していくところがすごいところだと思う。
 但し、専門分野だけでなく、立場や年代も異なる執筆者が、実際は都市についての何を共有しているのか、厳密には何が都市環境デザインの「仕事」なのか(本当に食べていけてるのか?)、考えることは多い。これからこの領域での職業を目指す方には、例えばそういう厳しい目で読みながら、これまでの仕事観や都市観に何か新鮮な視点を見出してもらえたらと思う。勉強になるのが第一部、参考になるのが第二部、ためになるのは第三部。仕事を見つけるのは読者自身というわけだ。
(I)

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