osusume2 環境問題に正面から取り組む
住まいづくりと暮らしの全貌
わが家をエコ住宅に
環境に配慮した住宅改修と暮らし

濱惠介 著



四六判・208頁・1600円+税
6月20日発行

「わが家をエコ住宅に」トップページへ


 
 読者レビュー

ホットでクールな現代版『日本の住宅』
年、環境と共生する住宅として改めて注目を浴びている『聴竹居』の設計者であった藤井厚二は、かつて、自らの敷地に自らの費用で四軒の実験住宅を次々と建設し、これらに居住しつつ室内環境などに関するさまざまな研究を行い『日本の住宅』という本にまとめた。『聴竹居』は、この研究に基づく第五回実験住宅であり、『日本の住宅』の結論であった。
 濱恵介さんの『わが家をエコ住宅に』は、この『日本の住宅』を彷彿とさせるところがある。『日本の住宅』には藤井厚二の住宅に対するホットな思いとクールな分析が同居した不思議な読後感があったが、濱さんの本にも同じような読後感があるのである。さしずめ、現代の藤井厚二による現代版『日本の住宅』とでもよびたい魅力的な内容である。
 著者の濱さんは、30年間、公団に勤めておられた有能な建築技術者で、国際的にも活躍してこられた住宅の専門家である。奥さんの味のある挿し絵で飾られたこの本では、濱さんが築27年の鉄筋コンクリート造の住宅を購入し、エコハウスとして再生していくプロセスが詳細に紹介されている。住宅の専門家が施主となって、他の多くの専門家や職人さんといっしょに住まいを再生していく物語は、専門家にも一般の居住者にも多くの示唆を与えてくれるはずである。
 しかも、その再生プロセスが尋常ではない。どのページをめくっても、ここまでやるかと驚くほどのこだわりが感じられる。例えば、断熱。部位ごとに様々な技術的手段が比較検討されて決定されているだけでなく、入居後も継続的な温度測定などが行われている。ほかにも、健康に配慮した建材選び、廃棄物の検討など、どのテーマひとつとっても、おおよそ考えられることは全て検討し尽くされている。さらに、家具づくりや、天井、壁などの塗装など、濱さん自らが参加してこの再生事業を行っているではないか。購入した住宅の原設計者まで、建築確認申請を手がかりに探し出してくるといった徹底のしようである。一つ一つの記述は、どこまでもホットであり同時にどこまでもクールである。私は、将来期待されるこの本の結論、つまり濱さんにとっての『聴竹居』は、新たな実験住宅ではなく、この家の住みこなしと、この家を中心とした人々との交流になるに違いないと密かに考えている。
(京都大学大学院工学研究科助教授/高田光雄)


って住宅都市整備公団の論客として鳴らした濱さんが、自宅をつくり、その顛末を本にまとめられた。どのように考え、どのようにつくったか。フランスからインドネシアまでのさまざまな異文化での居住も含め20数回の引っ越しを経験している住宅専門家の手による、住まいに関する本と聞けば、それだけで読んでみたいと思う人も多いだろうが、さらにこの本は現在の最もホットなテーマである地球環境問題に正面から取り組んだ研究プロジェクトの成果でもあるのだ。省エネルギーも、建設廃棄物も、エコロジカルな問題は社会的には逼迫しているとわかっていても、現実感がないと感じている人も少なくない。しかし、自分の住まいをつくるとなると別だろう。エネルギー漬けになって、ごみを大量生産している現実とそれを許さなくなってきた法規制に直面するはずだ。それにいくら環境負荷が少ないといっても、宇宙船のようなカプセルには住みたくないだろう。住まいこそエコロジカルな問題を肌で感じ、頭と身体で考える格好の題材なのだ。
 濱さんの格闘は足を棒にして築27年のコンクリート住宅を探し当て、購入することから始まる。中古住宅のエコ改修は新築よりも難しいが、そのストックの膨大な量からいえば改修効果は新築よりも大きいといえる。古い図面をひっくり返し戦略を練る。建物の劣化を診断し、対策を講じる。環境共生の新しい技術の動向を探り、熱性能のシミュレーションをしてみる。コストの問題があるから、どれを採用しどれを削るか頭を悩ます。どのような住まい方をするのか家族会議を開く。住み始めてからの住み心地、エネルギー消費に関わる家計の記録も参照され、建物の性能が検証される。このような企画から完成までの経過が詳細にかつ平易に記述されている。これから家をつくろうと思っている方にはよい参考書になるだろう。なによりも家をつくることの楽しさが伝わってくる。住宅と地球環境の関係を実践的に考えてみようと思っている人にとってもよい資料となるのは間違いない。
(神戸芸術工科大学環境デザイン学科教授/小玉祐一郎)



 読者からの反響
さんのご経験も刺激的な上、その内容が、まるでその場に私が立ち会っていたかのように臨場感を伴って伝わってきて、素晴らしい読書経験をさせていただきました。正直に申しますと、私自身は建築屋が建築を語るのに、地球環境問題や廃棄物問題と関連付け、それを主軸にして語ることにいささか疑問を感じたりしていましたが、このように生活者の側にたって語ることには大いなる意義を感じましたし、私のようなへそ曲りでも心から共感することができました。素晴らしいスタンスの本だと思います。私も中古住宅をさがしてみるかという気にさせられました。本当に素晴らしい本をありがとうございました。
(東京大学工学部建築学科助教授/松村秀一)


 担当編集者から
者の濱さんは言います。「家は買うものではなく、自分でつくるものだ」と。一見、当り前のことのようですが、今の日本では大半の家が「買われ」ているのです。
 濱さんは、自宅をエコ住宅にしようと決意し、まず「中古住宅」探しから始めました。古い家を壊さず使い続けることも、エコロジカルな住まいづくりにとって大切なことだからです。濱さんのこだわり抜いた「エコ住宅づくり」は、様々な専門家の力を借り、職人に怪訝な顔をされながら、そして濱さん自身も果敢に参加しながら進められました。
 そして家が完成してからは、室内の温度測定、エネルギー消費やコストの変化も日々記録し、建物の性能や住み心地など、エコ住宅に改修したことによる効果を詳しく検証しています。現在、濱さんのお宅では、太陽光発電による電力量が年間消費量を上回り、年間給湯量の半分を太陽熱温水器で賄っているそうです。
 この本は、住まい手の意識を少し変えるだけで、住まいをエコ住宅にし、エコロジカルな暮らしを送ることが可能だということを教えてくれます。ほら、エコ住宅に住んでみたくなったでしょう。こまめに家の面倒をみることが楽しくなるし、何より気持ちよさそうじゃないですか、自然を体感しながら暮らすって。
(M)


学芸出版社ホームへ