osusume2 知っておきたいことを
イラストで理解できる
一目でわかる建築計画
設計に生かす計画のポイント

青木義次・浅野平八 他著



B5判・200頁・2700円+税
8月30日発行

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 読者レビュー

は言葉をいつの頃から覚えるのであろう。赤ん坊の頃、まず「まんま」を覚えるという。「ママ」なのかそれとも「ごはん」なのかわからないが自分にとって大切であり、身近なものである。一語でわかるのがいい。成長するに従い、単語をつなぎ合わせて文にし、発音と意味を付加していく。
このように、赤ん坊が言葉を学ぶように、建築計画を学べるような本があるといいなと思っていた。文字を読んで理解するデジタルでなく、イラストですぐに理解できるアナログがてっとりばやい。
 この本は、まさに、身近な住まいや建物をつくることに関心をもつ人々や建築を志す者にとって必要な言葉(設計にあたって考えるべきこと)を、イラストと簡単な文章で示したものである。建築設計の際に必要な基礎的事項を表す「言葉」をわかりやすく説明したものであるといえよう。後、これに解釈をつけ、つなげて建築(「文章」)に意味を持たせ、自分の興味にあわせて、付加していけばよい。
 この本の内容は、「設計に生かす計画のポイント」である。二部で構成され、第一部を共通事項、第二部を各種施設としている。第一部の共通事項の最初に、「想像力が第一」と書かれている。建物を使用する人々がどのように活動しているかまたは、利用しているかを具体的に想像することが重要であるといっている。次いで、「プランの中を自分が歩くイメージ・シミュレーションで考える」をあげている。ここで、建築を学ぶ者は、利用する人々が建物の中や外を歩いてどのように感じるかを想像して使い勝手や自分の描いた図面の的確さを確認することの重要さを感じとって欲しい。そのためには、様々な建物を実際歩いて感じてその肌触りを自分のものにすることが必要であるといっているのだ。
 このようにひとつひとつ掲げられている事項には、人々の体験の積み重ねがあることを知っていただきたい。共通事項として、設計方法、安全設計、バリアフリー設計、環境設計と設計に必要な基礎知識を、各種施設として病院、高齢者施設、住宅、保育所、学校、図書館、コミュニテイ施設、スポーツ施設、事務所、商業施設、複合施設、交通施設をあげている。人と空間との関係から建築のおもしろさを読み解く一冊と思う。
(国立米子工業高等専門学校建築学科教授/熊谷昌彦)


年前、私が所属する大学でカリキュラムの大幅見直しが行われた。当然、建築計画に関わる科目も見直された。現在の建築のおかれている状況から、建築計画が担うべき内容も豊富になってきており、科目を細分化し担当範囲をより明確にした内容にするべきであるということは他の計画系教員とも共通した認識であった。そもそも美術学部の建築学科であることから、工学部系の建築学科と比較すると担当教員数等の理由でどうしても弱い部分でもあった。カリキュラムの再編成作業が進み、自分の担当する科目もほぼ決定した時、テキストをどうするかで悩んだ。これまで担当してきた科目では、テキストを指定してこなかった。そのかわり自分で作成した資料をもとに授業を行ってきた。その資料は、多くの先輩諸氏が書かれてきたテキストも参考に、毎年修正を加えながらつくりあげてきたものである。担当科目のスタートを目前にテキストの問題が解決していなかった時、この「一目でわかる建築計画」をご紹介いただいた。
 まず「まえがき」に書かれていることに惹かれた。建築を設計する際に、最低限(常識的に)知っておかなければならない内容のみを扱っているということ。この「知っておかなければならないこと」が重要なのである。これを学生に伝えるため、あの手この手を駆使してきた。資料の他に、実際に利用されている建築を例にした写真のコピー、OHP、スライド、ビデオなどなど。言葉や文章だけでは十分に伝わらないこともある。しかし撮影する側の能力やタイミングも関係し、写真やビデオにも限界があった。「不都合なこと」を実例から探すのも案外と大変である。だから「知っておかなければならないこと」を的確に表現しているイラストをみて、探していたものが見つかったと思った。まさに、私にとって喉元まで出かかっていたものがこのイラストであり、このテキストである。病院をはじめとする12項目の各種施設も現代社会のニーズに合致した選択である。現在、私にとって最適のテキストである。
(道都大学美術学部建築学科助教授/安藤淳一)



 担当編集者から
どもが最初に見せていただいたのは、“basic consideration in architectural planning and design”と題され、外見はまるでアドビソフトのユーザーマニュアルのようだが、頁をあけるとどこか外国の絵本のようなイラストが満載され、思わず頁をめくってみたくなる二分冊の冊子だった。
 東工大青木研究室・日大浅野研究室の合同ゼミで制作されたというこの手づくりの冊子は、アメリカの大学で建築設計製図教育に使われているテキストの一部にヒントを得て、建築計画、建築設計に必要な知識を、「問題点を含んだ悪い例」と「こうした方がよい例」を並べて表現した画期的な図集である。ゼミの学生さんたちが頭をひねって描いたイラストを見ることによって、建物の計画上の短所やその解決策にハッとさせられたり、ユーモラスな表現や凝った製本にニヤリとさせられたり……、楽しみながら建築計画を学ぶホットなゼミの情景が浮かんでくるとともに、〈計画〉教育に新風を吹き込むものだと直感的に感じた。
 さて、この成果を広く計画の現場にいる専門家や学生に伝えるにはどうしたらよいか。掲載するポイントの厳選と整理、よりわかりすくするための全てのイラストの描きなおし、内容にふさわしいレイアウトの検討等、原石を磨くための著者たちのさらなる情熱によって本書はできあがった。こうして「設計をするために最低限知っておかなければならないこと」というシンプルなテーマを、徹底的にコンビニエンスに提供した待望の書が誕生したのである。
(O)


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