まちのマネジメントの現場から

(有)クッド研究所/(株)学芸出版社 企画・編集


B5判・128頁・1600円+税
ISBN4-7615-1184-2

■■内容紹介■■
まちづくりを多角的に追求する唯一の総合誌。タイムリーな話題を多角的に紹介する特集、地域づくりを丸ごと紹介する探訪、まちづくりのスキルに迫る連載、コミュニケーションをはかる読者参加、読みやすさと資料性を兼ね備えた誌面構成で、いよいよ創刊。


 
読者レビュー

『季刊まちづくり』は、先日出版された『まちのマネジメントの現場から』(学芸出版社)を執筆された八甫谷邦明さんが編集長をされている雑誌で、これまでまちづくり関係者(特に専門家)に愛されていた雑誌「造景」からバトンを受け取った雑誌であると伺っている。「まちのマネジメントの現場から」の書評で再開発プランナーの斉藤さんが「この本は今年末に創刊される『季刊まちづくり』という雑誌の前菜である」と述べられていたが、私はメインディッシュである本誌を読ませていただいた。感想は「腹八分目で満足です。でも、できればお代わりか、デザートを…」。
 私自身京都のまちづくりに関わっており、まちづくりに「普遍的な答え」が無いと知りつつも、参考になる全国のまちづくりの事例や専門書などを色々漁ってきた。もちろん、雑誌「造景」も読み、大いに勉強させていただいた。しかし、なぜか「満腹」になることはなかった。そしていつしか「造景」は背表紙だけを見て、気になるテーマのみを「つまんで」いただくようになった。なぜだろう?その答えは、本誌を読んでわかった。
 創刊号では「『美の基本法』とまちづくり」「地域福祉の時代をプロデュースする」という大きな特集を2つ組んでいる。いずれの特集も様々な「切り口」と「視点」で書かれており、素直にバランスの良さを感じた。そして多くの雑誌や書籍を読んだ後に感じるような「偏り」が少なく、いわば野菜もタンパク質も炭水化物も満遍なく食べられた。
 特集記事だけでなく、創刊号全体の表現方法にも、様々な層を対象としていることを前提とした「心づくし」が感じられた。延藤安弘さんと森反章夫さんの「まちづくり往復書簡」や「まちづくりQ&A」、「地域からの報告」など、時々「箸休め」が用意されており、読者を「緊張の連続」に陥れさせない。
 まちづくりの専門家だけでなく、現場で汗を流しているリーダーや何気ない毎日の生活を豊かに暮らしたいと願っている様々な「まちづくりの担い手」を対象に、より多くの層の人に読んでもらいたいという「心づくし」を見ることができた。そして、読者層をより広げていくために(=まちづくりの担い手を増やしていくために)、随時進化を遂げていくと聞いている。どんな「箸休め」が用意されていくか、期待したい。
 おなかを満たす、「お代わり」か「デザート」は、次号を楽しみに待つこととし、待つことで、次をより美味しくいただきたい。一度にたっぷりと食べるのは、体にも良くありませんしね。
(技術士[建設部門]/大島祥子

担当編集者から

『季刊まちづくり』の創刊号は、特集1として「美の基本法とまちづくり」、特集2として「地域福祉の時代をプロデュースする」を企画しました。前者は、先ごろ、国が「美しい国づくり大綱」を公表したことによって注目されました。今後、どのように法制度化されるかが注目されています。特集では、以前から「美しいまちづくり」の権利を主張し、実践してきた五十嵐敬喜法政大教授が新たに構想する「美の基本法」について論じています。また、国の「大綱」の問題点について検討しています。特集2の「地域福祉の時代をプロデュースする」は、少子高齢化社会が到来するなかで、現実に人々の福祉を担う地域にスポットを当て、生活の場と福祉をどのように連結させるか、について考えています。福祉は、特殊な人々や場で行われる特別な行為ではなく、日常生活の中で普通に実践されるまちづくりの一種でもあるのです。
 その他、国会議事堂の眺望景観が破壊される議員宿舎改築問題を捉えた「国会議事堂問題の問いかけるもの」や鎌倉の緑地保全をレポートした「開発圧力に対抗し緑地を守る市民たちの鎌倉」など、盛りだくさんの記事が掲載されています。

(八甫谷邦明)

景の休刊を惜しむ声は大きく、造景を検証するシンポジウムまで開かれたぐらいだが、現実は厳しい。「いつしか取るのをやめていた」という人が多かった。いくら誉めてくれても買ってくれないと雑誌は続かない。またいくら要望が強くても、収入の範囲内で作らなければどうしようもない。そんなことばかりを八甫谷氏に言い続ける損な役割だったが、周りの方々の励ましに応えようと泊まり込んでの作業を続けた八甫谷氏の頑張りには脱帽した。その思いが読者に届くことを祈るばかりである。
 ともに頑張りたい。

(前田裕資)