感性のモダニズム
ヨーロッパ近代の建築造形をめぐる

下村純一 著

A5判・192頁・定価2500円+税
ISBN4-7615-2359-X

■■内容紹介■■
しなやかなアール・ヌーヴォーの装飾、直線の美を追求したワーグナーの高潔さ、躍動感あふれるガウディの造形、ル・コルビュジエの理性的な空間、表現主義の素材と色彩の感覚、北欧に生まれた機能美の中の静寂。19世紀後半〜20世紀初頭のいわゆる初期モダニズムの建築作品をめぐる、美しいカラー写真による39のポートレート。


 
読者レビュー

年、建築写真でこれはというものは少なくなっている。それは写す人間が対象に対する思い入れをもっていないことが一因であるのは確かである。それに引き換え、本書は一つ一つの建築に対する著者の思いが込められており、私たちを本来優れた建築が備えている心地よい空間へと誘ってくれる。
 もともとモダニズムの建築物は鉄やガラスなど新しい工業技術の発展と共にさまざまな様相を見せながら作り出されてきた。それは本書で取り上げられているラブルーストからアスプルンドまでの代表的な建築家たちの作品を見れば明らかであろう。さらに、北欧からスペイン・カタルーニャまで広範な地域に渡る建物がそれぞれ豊かな装飾性を備えて生み出されているのが、建物内部に入り込み、細部を丁寧に写しだす著者の目によって美しく再現されている。しかも、それらに、当時それぞれの建物が建てられた状況に関する短く適切な文章と、実際にその場にたたずむ著者の目とがあいまって、私たちもまたその空間を共有しているような思いをもたらされる。いずれにせよ、タイトルにある「感性」は、繊細かつ力強い才能をもったそれぞれの建築家のものであろうが、それに感応する対象を前にした著者のものでもある。その感性があってこそ、このような美しい本が出来上がるといえよう。
 ポスト・モダニズム以降私たちを感動させる建物がほとんどない現在、刺激的でもある本書を読み、それを持って、実際にその場に赴き、巡ってみるのもいいのではないだろうか。

(東京造形大学教授/岡村多佳夫)

担当編集者から

ぜ今、この時代の建築に注目するのかといえば、歴史様式的な固定観念や閉塞的な状況を打破し、新しいものを生み出そうとする原初の力がそこにあるからです。たとえば、ガウディなどの造形にみる躍動感。本書の編集作業をしながら、デザインの美しさもさることながら、“建築すること”という本来的な情熱を感じ取ることができました。

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