まちづくりのための建築基準法 集団規定の運用と解釈
柳沢 厚・山島哲夫編著

A5判・256頁・定価 本体2800円+税
2005.7.30発行
ISBN4-7615-2367-0

■■内容紹介■■
  最低基準の意味/敷地とは/単体規定との関係/4m未満道路の取扱い/既存不適格問題/自治体による基準決定の仕組み/自治体独自基準の可能性/「確認」と裁量。
  集団規定を解釈・運用するにあたって実務上悩みの多い八つのテーマを取り上げ、法令本来の趣旨や現代的意義に立ち返って考察した。現場の判断の手引に。



 
読者レビュー

築屋に集団規定を問えば、「うん、知ってる」(実は知らない)か、「ここんところの緩和やら改正やらでよく分からない」(けっこう知ってる)かだろう。本当に知ってる〈プロ〉はそれを仕事にしている(ひとが居るとして)ごく一握りではなかろうか。ことほど左様に複雑怪奇な技術法ではある。本書はこんな基準法集団規定を俎板に乗せ、みんなが悩んでいそうなことを、直接・間接にかかわっている(いた)人たちが書いた本だ。
  読んでの感想その1.全部で8章構成。何となく流れはあるが、章ごとに意味合いのレベルが結構違う。最低基準と裁量の章、すなわち初めと終わりはある種の法理論の展開だ。それに対して敷地の概念、細街路と接道、既存不適格、特例許可あたりの章は、法と現実の狭間でその運用・解釈は如何? の流れにある。古くて新しい課題設定だ。「集団規定と単体規定のつながり」の章はやや意表を衝いていて、そう言われればそうだ、とも思う。何かの時に役立ちそうな問題整理だ。そして「自治体における独自基準」の章は、言わば未来に向けてのウォーミングアップの印象。つまりこの本はひとことで言えば、従来のような単なる集団規定の解説・解釈の書ではないということ。章によっては噛みしめると味が出てくる(噛みしめるにはかなり顎の力が必要だが)。
  感想その2.頭の痛くなる議論に陥らないように、各章では、主題が述べられた後、「一問一答」が続く。いやむしろごく短い「一問」にとても長い「一答」が書かれているから、答えを理解するのも結構大変だが。でもこれがあるので読み進められる。
  そして感想その3.では答えを読めば「なるほど」と終わるかと言うと決してそうではない。もちろん「よし」と納得させられる場面もあるが、〈こうでもあり・ああでもある〉型の答えも結構存在。読者は明快な解答を得られず釈然としないが、集団規定のベテランたちにも「これで納得」の答えが書けない世の中になっているのだろう。
  じっくり噛んで疑問が生じたとき、挑戦してそれを解くのは著者のみならず読者たちなのだろう。みんなで悩んで大きくなろう、というわけだ。大きくなりたい人は本書を買うべし。
(首都大学東京都市環境学部教授/高見沢邦郎)

ちの景観や市街地環境は、道路などの公共空間と多くの建築物によって構成されている地域空間の形態や性能、またそのアメニティの状態であるが、その空間像が提示されないまま、敷地単位の基準である建築基準法の集団規定により、なんとか敷地とまちを繋ごうとしているのが現状である。神戸の近隣住環境制度のように基準法にある「ただし書き」をフル活用しようとする試みや、横浜のように独自の建築条例による工夫など、地域のまちづくりに連携させていく先進事例はあるものの、一般には、基準法は全国一律の最低基準を示す融通のきかない基準と考えがちである。
 しかし、地域ごとに風土や歴史が異なり、求める環境の質も異なる。そうした地域ごとに多様なまちづくりに基準法を能動的に活かすという観点をもつためには、基準法の規定がどのような考え方に基づいて決められているのか、何を目指している規定なのかといった基本的な考え方を理解することによって、その運用の可能性を広げていく必要がある。この要請に本書は応えてくれる。これは、単なる基準の解説ではなく、規定の背景や基準の意味について、現在の問題意識にもとづき議論することにより、建築とまちをつなぐ可能性の選択を広げようとする試みといえる。
 表紙のタイトルだけみると、これまでの解説書と同じようにも見えるが、条項や法文を知らなくても読める。基準さえ守ればよい、規制なんてないほうがいい、という姿勢を変えていくためには、マニアックな世界から基準法を解放して、集団規定の考え方がまちづくりの現場で生きる知恵となることが必要であり、そのために本書が役立つのではないかと期待している。

(大阪大学大学院助教授/小浦久子)


担当編集者から


の本は「建築基準法集団規定・7つの謎に迫る」という仮タイトルでお話しをお聞きし、企画したもの。
  「法律に七不思議って、どういうこと」「そんなのって、あり」という声もあったが、「条文だけでは、なぜこんな規定があるのか当惑してしまう条項が少なくない」から、こういった本が必要なのだとのお話しだった。
  幸い、発売後、行政現場の方々からの引き合いが多い。やっぱり、集団規定には現場を惑わせる謎が多いからだろうか。
  また法規の解説書は条文の解釈と若干の運用実態を解説し、曖昧さを残さないフリをするのが通常だが、本書は条文の精神に遡り、運用の幅や可能性を広げようとする点も珍しい。集団規定の濃霧を晴らす一助になると幸いです。
(M)

「集団規定」が法体系をとって登場したのは、1919年の市街地建築物法からだそうで、1950年に建築基準法に移行してからでも、すでに50年以上の歳月が流れている。
  この間、世の中の変化は著しく、都市やまちの環境への時代の要請もより複雑に、より多様化していることは想像に難くない。
  これらへの対応として、数々の法令改正が行われたのはもちろんであるが、一方、制度施行の現場では、法の解釈・運用によって現実に即した判断、地域に適した判断をしようという努力が営々と積み重ねられてきたということを、本書を読んで改めて気づかされた。
  現場も、タイヘン悩んでいるのである。
  とはいえ、お役所の窓口の頑な法令解釈・四角四面の対応が解消されたかというと、それは別の話。集団規定は誰のためのものだろうか。本書は、法に縛られるのではなく、法規定の本来の趣旨に立ち返って、柔軟に解釈しようよという姿勢に貫かれているが、そのためには一筋縄ではいかない解釈と運用の現場の悩みをもさらし、世に市民のための「集団規定」を意識させる問題作なのである。

(O)