片寄俊秀著

四六判・224頁・定価 本体1900円+税
2005.12.30発行
ISBN4-7615-1208-3

■■内容紹介■■
まちづくりは人づくりであるといわれるように、まちの様々な問題の解決には、良き「まちづくり人」の存在が必要であり、そんな人を育てたいと筆者は考える。まちに飛び込む方法、キイパーソンの重要性、常に対案を考えることなど「まちづくり道場十訓」をまとめ、まちづくりに携わる「稽古生」に向け、ユーモラスに指南する。


 
読者レビュー

ちづくり、という内容は分かりやすいようでいて分かりにくい。それは、ある人にとっては道路をつくり、川を真っ直ぐにすること、臭いものに蓋をするかの如く小川を暗渠化することを指す。はたまた、自動車も通れないような小路に人々が溢れかえっている駅前商店街を、自動車が通れるように道路を押し広げ、高層マンションが建てられるように区画を長方形に整理する事業をまちづくりという人もいる。
  然らば、まちづくり道場の主である片寄先生にとってのまちづくりとは、人づくりである。まちとは人によってつくられ、人によって営まれるものである。まちをつくるには、まず、そこで生活、活動する人をつくることなのだ、と片寄先生は言う。そう言われるとそうか、と思うのだが、人を押しのけ、人が憩っていた空間を壊して、自動車のための道路をつくることをまちづくりだと考えていた人々にとっては、これはちょっとした驚きであろう。
  本書は、片寄先生のまちづくり術を理解できるように編集された指南書である。そこには、まちづくりを成功させるための鍵になる戦術が満載されている。まちは人に愛されなくてはならない。人が関与しないまちが愛されるはずがない。それには人づくりである。そして、人との関係性、ネットワークをつくりあげていき、その先に愛されるまちが見えてくる。まちが道路や小洒落たファサードによってつくられるのではなく、人と人とが共生して生活するという関係性によってつくられていることを理解している片寄先生だからこその、温もりあるまちづくりエッセンスにこの本は溢れている。そして、それは商店街が衰退し、地域風土が喪失し、地域コミュニティが弱体化し、開発至上主義が迷走している現在の日本にとって、まさに必要とされる知恵である。経済効率、経営効率といった指標に振り回され、真の豊かさとは何かを見失ってしまっている今だからこそ、人を常に中心においた片寄先生のまちづくりの理念を我々は真摯に傾聴すべきである。ようこそ、片寄まちづくり道場へ。
(明治学院大学経済学部助教授/服部圭郎)


担当編集者より

「パッとしないまちこそおもしろい」と著者は言います。そこに、何もないことを「発見」したうえで、逆に、このまちをどうすれば魅力的にできるだろうかと考えながら角度を変えて眺めていくと、急にまちが輝き始めるというのです。
  ものごとを柔軟に捉えながら、発想の転換を常に意識し、そしてポジティヴな姿勢で取り組んでいく。そのような態度で突き進んでいく本書は、とってもカッコいいものに仕上がっています。
(C)