身体感覚で探る場の魅力

岡本哲志 著

A5変・176頁・定価 本体1900円+税
2006.8.30発行
ISBN4-7615-1215-6

■■内容紹介■■
歓楽街、門前町、市場、抜け道、行き止まり…。地形やかつての都市構造の痕跡を残しながら、歴史の流れの中で変遷してきた東京の路地。成長する都市の隙間の佇まいは、往時の人々の生活が甦ってくるようである。時代や成り立ちによって様々な表情を持つ路地空間を読み解き、実際に潜り込んで体感しながら、その魅力に迫る。


 
読者レビュー

書は岡本哲志氏が30年来続けてきた東京の都市形成史の成果を「路地」からの視点でまとめた一冊である。都市形成史をそのままのかたちで世に問うと、えてして堅苦しい都市の通史となりがちであるが、この本は「路地」に着目して、その現在の痕跡から歴史を辿るという方法を意識的にとっているせいか、じつに地面に密着した、かつ歴史を現在から遡及するものとしてとらえる今日的な問題意識に支えられた好著となっている。そのことはこの本の副題「身体感覚で探る場の魅力」という副題からも感じられる。
 「身体感覚で」ということはじっさいにまちを歩きながら考えたということだろう。たしかに本書をひもとくと、その豊富な写真(おそらくは著者が直接現場で撮ったであろうもの)と緻密な図面作業(これも著者みずから書き起こしたものであろう)からも、まちの隅々まで足でかせいで、さらにその成果を歴史と重ねて図面化することによって手でも考えて、今日に残された路地の意味と魅力を探ろうとしている姿勢がよくわかる。
 なにげない都市の小空間もじっくり観察し、さらに歴史を読み解くことによって豊穣な物語を私たちに投げかけてくれることを教えてくれる貴重な実地演習の書だということもできる。私たちの前に繰り広げられているなにげない風景もその背後には興味の尽きない歴史があるのだ。そしてそのことは今日の風景の中にも読みとれるような刻印を与えている。だからこそ、今日の風景から遡ることによって都市空間の本質に迫るような理解に至ることができるのだということを、本書は教えてくれる。
 『江戸東京の路地』が発散する最大の魅力は著者のそうした現代感覚である。大胆な空想まで交えて都市の路地裏を歩き尽くすこと、そのことのなかで都市はさらなる魅力を私たちの前に開いてくれることになるのである。
(東京大学大学院/西村幸夫)


担当編集者より

、一度だけ路地に住んだことがある。今から思うと地震や大火事になれば生き残れそうにない下宿だったが、住んでいる間はそんな危機感は露ほどもなく、静けさが何より気に入っていた。
 それ以来、日本でも外国でも細い道を見つけるとつい寄り道したくなる。何故だか分からないが、そこでは、からだがゆったりする。
 皆さんも本書を片手に是非路地を歩いて、その魅力を堪能していただきたい(ただし、住んでいる方々の迷惑にならないように気をつけましょう)。
(Ma)

都の路地は私的で踏み込んではいけないような敷居の高さがあるが、東京の路地は多様で誘い込まれる魅力がある。本書を読んで佃や本郷を訪ね、江戸から続く連綿とした歴史に思いを馳せるのもよいだろう。また銀座での路地を活かしたまちづくりの展開は、今後の路地を考える上で示唆を与えてくれるだろう。
(N)