メインストリートプログラム

安達正範・鈴木俊治・中野みどり 著

A5判・208頁・定価 本体2300円+税
2006.11.10発行
ISBN4-7615-2394-8

■■内容紹介■■
中心市街地の歴史的建築の保全・活用と経済活性化を組み合わせ、全米1900地区で実績を上げているメインストリートプログラム。地元主体で組織をつくり、中心市街地をマネジメントする、その理念や運用手法は、日本の中心市街地再生に欠落しているものを明らかにし、真の再生に向けて重要な示唆、ノウハウを教えてくれる。


 
読者レビュー

21世紀は国々の先進度を“中心市街地の元気さ”で測る時代となるかもしれないと予感すると筆者はいう。その基準を日本にあてはめるとどうだろうか。大都市を除く地方都市の中心市街地はシャッター通りと言われるところが多い。この状況を改善するために1998年中心市街地活性化法が施行され、多くの都市で「基本計画」や「タウンマネジメント構想」が策定された。そして過去7年間で国費負担2兆円の事業が行われたが、まだ結果はごく一部にとどまる。
 米国でも1970年代から中心市街地再生の取組みが行われたが、試行錯誤の連続だった。その中で「歴史保全ナショナルトラスト」の専門組織として「ナショナル・メインストリートセンター」が1980年に設立され、そこでパイロットプロジェクトの成果をベースに「メインストリートプログラム」が開発された。そしてそのプログラムは、既に全米1900地区で導入され実績をあげている。
 「メインストリートプログラム」は「生活の質の向上」という基本戦略のもとに、「四つのアプローチ」と言われる具体的な戦術を、同時並行的に運用されることの重要性を強調する。同時並行的に運用することは、縦割り行政の影響が強いわが国では一番不得意とするところであろう。本書は、わが国のこれまでの中心市街地活性化取組みの問題点を指摘し、日本版メインストリートプログラムの開発と普及に向けた提言も行っている。
 「メインストリートプログラム」は日本でも1990年代末に紹介され、本書で具体的に紹介されている事例の他、長浜、川越、そして商都復活の幕開けといわれる高松等で一部適用され成功を収めている。
 本書は「メインストリートプログラム」を誰にでもわかりやすいように紹介している。
 まちづくり三法が改正され、中心市街地活性化取組みが新しい段階に入ったときに、本書の発行は大変時宜を得たものである。
(NPO法人日本都市計画家協会理事/三橋重昭)

ず目にとまるのが表紙の手描きイラストだ。アメリカのメインストリートプログラムが目指す、歴史的環境を活かしたヒューマンスケールの街、人々に高い「生活の質」を提供する街のイメージをとても良く表現している。近年、アメリカの都市を訪れると、このイラストのような魅力的な街にしばしば遭遇し、特に目的がなくても散策したくなる。
 本書では、こうした街の形成に大きく寄与しているメインストリートプログラムの理念、仕組み、歴史、実践、展望が、現地調査で得られた豊富な情報に基づき、分かりやすく解説されている。それだけに留まらず、メインストリートプログラムを意識しながら筆者らが関与している国内先進事例の紹介があること、日本における同プログラムの応用に関する分析と提案にまで踏み込まれていることが、本書の特徴である。日米両国の中心市街地再生の現場に詳しい筆者らの文章には説得力がある。
 筆者らも指摘しているように、日本における中心市街地活性化の取り組みが必ずしも成功していない要因の1つは、都市基盤整備、商業活性化、住宅供給、福祉サービス提供、文化振興といった多様な個別施策を統括し、ハード・ソフトの両面で街をマネジメントする仕組みが欠如していることである。一般に「人や組織、資金の問題」と一言で片付けられがちだが、そこを何とか克服するヒントを与えてくれるのがメインストリートプログラムではないか。特に、組織運営、プロモーション、デザイン、経済立て直しという四つのアプローチの同時並行的運用、現場を取り仕切る専任マネージャーのモチベーションとコミュニケーション能力の高さ、政府の補助金に頼らない多様な資金調達方法の模索といった点は示唆に富む。
 先般、中心市街地活性化三法が改正された。多くの街では、用意された法制度の枠組みの下で受動的に施策を展開するのではなく、街を持続的に再生し、マネジメントしていくローカルな総合的取り組みを展開し、そこに法制度を組み込む能動的な姿勢が必要となろう。本書は、その具体的な方法を考えるきっかけを与えてくれる。
(名古屋大学大学院環境学研究科助教授/村山顕人)

担当編集者より

インストリートプログラムについて講演会などで聞いたとき是非、出したいと思っていた。
 その街にある資産を大事にする姿勢、大げさでなく、小さな試みを持続的に続ける姿勢に共感したことと、それが現実に多くの街で成果をあげていることに力づけられたからだ。
 幸い、鈴木さん、安達さんとめぐり合い、出版することができた。
 中心市街地活性化三法が改正された今、前回の中活法の失敗を繰り返さないためにも、是非、読んでいただきたい。
(Ma)