中古住宅の見方、買い方、暮らし方

中谷ノボル+アートアンドクラフト 著

A5判・176頁・定価 本体1800円+税
2007.2.25発行
ISBN978-4-7615-1222-4

■■内容紹介■■
中古住宅を安価で購入し、自分の生活スタイルに合った住宅を改装によって実現する手法が注目されている。その開拓者である著者が、基本的知識、中古の魅力、物件探しのコツ、資金計画、設計の工夫まで、不動産のプロや銀行員へのインタビュー、体験談を交えながら事細かに紹介する。目から鱗の発見と実際的知識が満載の指南書。


読者レビュー

ブタイトルに「中古物件の見方、買い方、暮らし方」とある通り、読み進むうちにリノベーションのノウハウがわかり、身近なものになっていくマニュアル本です。
 リノベーションなる概念は「オシャレで新しいライフスタイル」的な雰囲気をまとって登場しました。90年代のことです。おりしもバブル経済が崩壊して、おうちを新築しよう、家を買おう、と考える人は減りました。そんな時流にフィットする建築が中古のたてものを改造して再生するリノベーション君だったのです。今ある資材を生かすわけですから、清貧で地球にやさしい感じがします。しかしこれからはリサイクルの時代!とか、スクラップ・アンド・ビルドの時代は終わった!とか叫んでも、世の中はあまり食いついてくれない模様。新しい文化を売り出すには、オシャレ仮面が必要だったのです。
 リノベーションをテーマとする雑誌や本は、「リノベ道」を啓蒙するスタイルブック風のつくりをしていました。カリフォルニアとかベルリンあたりの建物がたくさん掲載され、オシャレそのものでした。徐々に日本の建物を掲載する本も増えますが、どこで見つけたのかナゾな味のあるマンションやビルをかっこよく直して使う若者グループのシェアオフィス等を見せられ、エッジな人々の特別な遊びなんだろう、と理解していた記憶があります。
 つまりリノベーションが普通に家を買ったり住んだりする選択肢の1つとしてある、という風には、なかなか感じられなかったわけです。物件1つ見つけるにも、コネクションや体力が要りそう。格好よく直すにも、独特の知恵や根気が必要なように見えました。自宅やオフィスをリノベーションで仕上げた知り合いの建築家たちは「そんな難しいものじゃない」とか「むしろお金が無いからこうなった」というコメントをくれます。しかしこれも建築関係の仕事をしているからできたことなのだろう、と考えていたのです。この本を読むまでは。
 しかしリノベーションは、自分で設計したり工事したりしない限り、そこまで特殊技術が必要なものではなさそうです。物件探しも、ポイントを押さえれば失敗は防げそう。また特殊なライフスタイルや空間へのこだわりを持ってなくても、大まかな予算や部屋数、そして「仕事場にしたい」「本がいっぱいあってなんとかしたい」とか「ペットと住みたい」とか、普通に引っ越しをする時に考える条件のようなビジョンがあれば、多分なんとかなります。資金面でも、銀行でリノベーション向けのローンが登場したり、なかなか追い風らしい。「みんなのリノベーション」というタイトルも、なるほどと思えます。
(建築ライター/平塚 桂)

担当編集者より

が家の場合、もともと借りていた家を「買うか出て行くか」、1週間以内に決めなければならない状況が突然やってきました。急な決断も難しかったけれど、既存不適格なのでまともに銀行に相談してもローンがおりない。仲介業者を通さない個人間での売買のため、契約書や登記簿も自作です。法務局へ出かけ、司法書士さんに入り混じりながら窓口で手ほどきを受けました。あんな短期間でよくぶじに手続きが済んだと、今思い返しても胸をなでおろしてしまいます。
 この時の経験が2、3章の物件探し、資金計画、銀行マンへのインタビューに活かされているのは確かです。借家のあいだは夢想するばかりで手が出せなかったリノベーション。でもそれを突然体験することになり、私は慌てふためきました。程度の違いこそあれ、家づくりは突然、現実になる。そんなときに焦って読んでも分かりやすいものを目指しました。あるいは日頃から何となく読んでも楽しいものを。そうして来るべき日の備えとして役立てていただければ嬉しいです。
(I)