遠藤秀平 編

四六判・192頁・定価 本体1600円+税
2007.3.30発行
ISBN978-4-7615-1225-5

■■内容紹介■■
中村勇大、宮本佳明、藤本壮介、阿部仁史、手塚貴晴、ヨコミゾマコト、五十嵐淳、遠藤秀平……みんな、どこにでもいる等身大の少年だった。空間体験、建築との出会い、建築家になろうとしたきっかけ、学生生活、留学、独立時の苦労、仕事の進め方、独立志望者へのアドバイスなど、若者に贈るメッセージ満載! 巻頭、五十嵐太郎。


 
読者レビュー

るで隣で話を聞いているかのような感覚で読んだ。今をときめく8人の建築家たちが幼少期から体験してきた感情の振幅が生き生きと伝わってくること、それがこの本の醍醐味だろう。驚きや興奮、憧れ、悩み、怒り、そんな意味の言葉が随所でみつかるのだ。たとえば、中村勇大は大学に入って大好きな野球と建築を両立させようと思って無理とわかり「途方に暮れる」が、大学で一人の先生に出会って改めて建築に「目覚める」。宮本佳明少年は大阪万博に「命がけ」で通い、ガスパビリオンの「強烈な」形態に興奮しながらスタンプ集めをしたが、いまだに町なかの「違和感のある」風景を収集してその謎を解くのが「本当に楽しい」。
 北海道の「あまりにもでか」い風景に育った藤本壮介はモダニズムの建築に「新鮮な驚き」を覚え、「僕もそういう発明をしてみたい」と思ったそうだし、留学当時の阿部仁史は倉庫街に埋もれた学校の姿に「かなり驚」きながらも「つくる楽しさ」を実感し「解放」されたという。
 幼くして建築雑誌を見て「ものすごい感動した」という手塚貴晴が、ペン大での最初の講評会を「全然相手にされないでショッキング」と振り返れば、「頭にきて、いったい人を何だと思ってるんだ、みたいな気持ち」が、芸大でスケッチの上にまるで違う絵を赤描きされたヨコミゾマコトの反応だ。
 五十嵐淳は幼少期にテレビで見た安藤忠雄の建築を「夢の家だった」と振り返り、鋼板の造形的な建築で有名な遠藤秀平は、万博で見たイサムノグチの噴水彫刻の「インパクト」と「驚き」を今も忘れない。
 インタヴューは丁寧で、用語の注釈もあるので学生でも簡単に読める。独立を目指す読者には多くのインタヴューが「独立を目指す人たちへ」で終わっているのもうれしい。とはいえ、著者の多様さを見る限りどの意見が有効かは読者それぞれ。それよりも、日々の新鮮な感情を楽しむこの姿勢こそ、建築家たちがさりげなく贈っているメッセージかもしれない。
(立命館大学理工学部建築都市デザイン学科講師/武田史朗)

担当編集者より

回は編者でもある遠藤秀平さんの熱意に応える形で、本が出来上がりました。IMI大学院スクールの皆さんも、本当に頑張りました。建築家として自立する8人にもっと聞きたいこともあったのですが、本書ではあえて少年時代のエピソードや学生時代の体験、そして建築家デビュー前後のお話までを語っていただきました。これから建築を学ぼうとする読者に親近感を感じてもらいつつ、自身がいま立つ位置を確認し、8人との距離を計り、そして何をなすべきかを感じて欲しい。建築家へとスタートする読者の〈きっかけ〉となる本を目指したからです。10年後、20年後、ぜひ「私はこうして建築家になった」と語れるモノを獲得して欲しい、そんな期待も込めました。
(MY)