プライド・オブ・ジャパンを求めて

米山淳一 著

四六判・224頁・定価 本体1800円+税
2007.5.30発行
ISBN978-4-7615-1227-9

■■内容紹介■■
茅葺き民家、宿場町、蒸気機関車、鳴き砂の浜など、日本人の記憶から失われようとしている生活文化遺産に光を当て、甦らせて30年。所有者との交渉、資金集め、行政・専門家との協力、市民へのアピール、成功・失敗の舞台裏。地域の復権を願い、人々の思いを形にしてきた、元日本ナショナルトラスト事務局長の悪戦苦闘の物語。


 
読者レビュー

山さんに会うのは、賑わいを忘れた町であり、過疎で寂れた村であり、捨て去られた古民家である。そこで米山さんは、なくしてはならない大切なものを見つけると、ひたすら褒める。これは凄い、素晴らしいと訴えるのである。しかし、歴史や文化財ではメシが食えないという風潮が根強いなかで、その戦いは決して楽ではない。物好き、人様のものに口を出すお節介、と一蹴されることも珍しくない。それでも怯まない米山さんの声は、大きく、曇りがなく、少しずつ地域住民の心に届き、遠く離れた都市住民の魂に響くのである。このような地道な仕事を、役人でも学者でも建築士でもなく、いわば市民の代弁者としてやり続けてきたのであり、そこに米山さんの仕事の先見性と値打ちがあると私は思う。
 この本は、そんな米山さんの地域遺産を守り、生かすための悪戦苦闘の記録であり、それを生き甲斐とした時に初めて出会えた人とのつながりを綴ったものである。いま日本人の記憶から失われようとしている、町並みや民家や鉄道を掘り起こす米山さんの目は確かで、行動は迅速だ。それにもまして素晴らしいのは、老若男女、立場の違う人、みんなを巻き込む力、これが米山流の真骨頂だ。ひとりでは続かない、みんなで汗を流すと楽しくできる。それによって開かれた道をできるだけ多くの人と歩みたい。この本を読むと、そんな米山さんの後ろ姿が目に浮かぶ。
(筑波大学教授/安藤邦廣)

担当編集者より

年、光の当たらなかった地域の生活文化に根ざした文化財。近年ようやく「地域遺産」「産業遺産」などとして脚光を浴びるようになった。本書の著者の米山さんは、30年も前からその価値を見抜き、日本各地でその復活に賭けてきた先駆者の一人である。本書を読めば、地域に残された民家一軒を皆の力で保存することがいかに大変かがよくわかる。そしてそんな苦労の尽きない大変な仕事でも、いつしかとても魅力的な仕事に思えてくる。人々の絆を深め、まちに誇りを取り戻す、そんなかけがえのない仕事の醍醐味を是非感じとっていただきたい。
(MY)