「人と社会」を中心に据えた新しい交通戦略

藤井聡・谷口綾子 著

A5変型判・216頁・定価 本体2400円+税
ISBN978-4-7615-2426-5
2008.3.10 初版発行

■■内容紹介■■
モビリティ・マネジメントとは、クルマと公共交通のかしこい使い方を考える取り組みである。行き過ぎた自動車依存社会からの脱却を目指し、個人への積極的な働きかけによる、もっとも費用対効果の高い交通戦略として、いま注目を集めている。パース、ロンドン、宇治、龍ケ崎などの先進事例を紹介し、その理念と実践を解説する。


読者レビュー

面する交通渋滞や公共交通の疲弊、地球温暖化は私たち一人ひとりのライフスタイルや都市構造の変化に起因したものであり、これまでのインフラ整備やTDM手法、都市計画だけでは「限界」が見えてきている。ついてはいま、交通行動やクルマ利用の意識を変えるコミュニケーションを中心とした交通戦略である「モビリティ・マネジメント」が大いに求められている。
 本書は、モビリティ・マネジメントの実務的な内容から、モビリティ・マネジメントの「こころ」を伝える各種の事例が掲載されている。
 モビリティ・マネジメントってなんだろうという人にはもちろん、もう一歩進んでやってみようと思った時に、そしてMMをやっている人にもそれぞれに役立つ情報が満載。
 モビリティ・マネジメントにはじめて取り組まれる方は、情報提供やコミュニケーションだけで本当に交通行動が変わるのかとお感じかもしれない。しかし、きちんとした準備とやり方を間違えなければ「必ず」成果は上がるもの。つまり、交通といっても鉄道・バスのサービス水準や自動車社会の進展の度合い、地理・気象条件など、地域によって千差万別であり、他の成功事例を引用するに当たってはその背景と準備の段階を知ること、MMの「こころ」を理解することが不可欠であり、本書はそれらを網羅している。
 コミュニケーションする相手の立場に立って、きめ細やかな対応をするとはどのようなことなのか?アンケートに添えるプレゼントはどんなものを何時渡すのか?など実務に必要な情報や工夫・苦労・ドラマが溢れている。
 やる前に読んでも、やりながら読んでも、やってから読んでも、新たな気づきと違う味わいがある。
 「かしこいMMの使い方を考える」必読の一冊。
(京都府政策企画部/村尾俊道)


担当編集者より

車、使い放題なんていつまでも続くわけがないと思うのだが、そういう話しは世の大勢になりそうにない。不都合な真実が注目され、石油が投機に弄ばれても、まだ変わらない。
 民主主義なんだから仕方がないのだが、せめて少しでも流れを変えてゆけば、どこかで一気に「車の賢い使い方」が広まるのではないか。一歩一歩が大切と思えば、着実に車利用を減らせるモビリティ・マネジメントはもっともっと広まって欲しい。そのために本書が少しでも役立ってほしいし、また役立つに違いない。
(Ma)

いてすぐのはずのコンビニ、レンタルビデオ店に行くにも、クルマを使うひとは多いです。そんなこんなで、日本のまちはクルマであふれかえっています。そんな便利さをみなが追求し始めると、とうぜん、渋滞が起こり、環境問題を引き起こし、なによりクルマに依存した社会生活をつくりだしてしまいます。
 そんな課題に一石を投じる考え方が、モビリティ・マネジメントといえるでしょう。ただこれは、クルマ社会を完全に否定しているわけではありません。むしろ「クルマをかしこくつかおう」というのがその真意です。ある目的地に行くにも、クルマのほかに、電車もバスもあるでしょう? というわけです。「今日は天気もいいし、自転車で行ってみようか」。意外とそんな気持ちの切り替えから、社会は変わっていくのかもしれません。
(C)