有馬孝禮 著

四六判・240頁・定価 本体2000円+税
ISBN978-4-7615-2458-6
2009.4.30 初版発行

■■内容紹介■■
我々は、古来より建築の資材として木を使っている。木材は心地よい空間をつくる反面、強度や品質のバラツキ等が使いにくさにもなっている。木には、特性を活かしたつきあい方があるはずだ。基本データから本来の性質を探るとともに、木材の規格・品質表示や新技術を紹介。また、CO2削減に貢献する木の建築の普及を提案する。


 
読者レビュー
 建築、というと専門書かと身構えるけれど、意外にもかわいい装丁で中をのぞいてみたくなる。
 一章は、日本の木を知っていますか、 二章 木の「強い」「弱い」とは、三章 木材・木造との付き合いは水とのつきあい…という具合に取っ付きやすい。
 これ一冊あれば木材に関する知識は十分身に付くと言っても過言ではないだろう、データも十分。じつに充実した内容である。それに公平だ。
 そう思いながら四章、五章と読み進んでいって、途中で気がついた。
 この本は、長年にわたって木質や木材、木造建築の研究を続けてこられた著者が、木という素材を通して見た現代社会に警鐘をならしつつ、未来への道筋も示唆された本であると。
 例えば、循環型社会に求められる資源生産の視点、において、
 「平和」とは「生産を生む消費」につながるが、「消費の為の消費」は「戦争」に相当すると断じる。農林業は、平和が前提にあってこそのものであると説き、そして、森林が資源生産の活力を失っての循環型社会などあり得ないし、森林が環境保全の機能を失って成り立つ循環型社会もあり得ないのだと説く。そして森林や木材との連携を都市に問い直し、私たちの生活の中に木材資源が保存されることが重要であり、そのためにも社会の連携と仕組みや政策を考えようと提唱される。
 最近、期せずして何人かの方々の主張の中に同一の趣旨、メッセージを見つけてはっとすることがある。
 この本の著者からも受けたそれは、我々が一つ一つ選択する先に未来が見え隠れするというもの。政治や経済といった大きなことばかりではなく、暮らしの中の小さな一つ一つの選択が「平和」にも、そうではない違う道へもつながっているというもの。
 著者ならではの「公平」な視点に加えて、ところどころに平和であってほしいとの思いがにじむ。木材や、木造建築の分野から見ても、その選択の是非が求められているのかと改めて思う。
 最後に、著者が、一本一本に愛情を注ぎながら山に苗木を植え、育てて行く場面は象徴的だ。小さな苗木に覆いかぶさるように繁茂する草を刈り、巻き付く蔓を切る。
 木とはこんなにも愛情をかけられながら育った素材なのか。
 そんな気持ちで「木の文化」「木の建築」を見なおしてみたくなった。
(文化遺産を未来につなぐ森づくりの為の有識者会議事務局長/足本裕子)

担当編集者より

 木の建築というと、木のすがすがしい匂いや裸足のここちよい感覚が思いだされ、いままで、ただ茫漠と好ましく思っていた。一方で、すきま風で暖房費がかかりそうとか、建築費が高いのではと、はなから高嶺の花にしてしまっているところがある。
 次々と出てくる内外の安くて便利なものを消費することに慣れてしまうと、ものを一からつくる、育てることを忘れてしまう。本書では、木が生産できる資源であることの重要性に目を啓かれ、木を育てて使うという古来からのシンプルな営みが、地球温暖化防止の大きな第一歩であることに気づかされた。
 人々が木の快適な住まいに住む努力をすることも、立派なエコ。それが可能な仕組みづくりが未来を拓く。
(O)