重森三玲 庭園の全貌


中田勝康 著・写真

A5判・288頁・定価 本体4000円+税
ISBN978-4-7615-4089-0
2009-09-20 初版発行

■■内容紹介■■ 
二十世紀の大作庭家、重森三玲の庭は、どのように生まれたのか。二部構成の本書では、第一部で非公開の個人庭園を含む113庭を撮り下ろし写真にて俯瞰。半世紀以上に及ぶ作風の進化と深化をたどる。第二部では「テーマ→抽象→造形」という作庭のプロセスを、古典庭園との比較から詳解。重森枯山水のルーツと創造の奥義に迫る。


読者レビュー
 先日帰宅すると、学芸出版社より中田勝康さんの労作が届けられていた。
 秋頃出版と聞いていたため、意外な早さに驚きながら早速に拝見。
 しゃれた外装カバー、金色の帯と、前垣邸坪庭の超抽象的石組。さすが「永遠のモダン」を生涯追求された三玲先生の作庭を論じる絶好のアプローチと感じさせ、次なる章へと心を躍らせ、頁を繰った。
 永年、先生より御指導をいただいた老生の感想であるが、多くの読者、それも初めて重森庭園に接する方々には少し強烈とも感じられ、さらに、次の展開に何が出るかと期待させる。ページを繰るに従い重森庭園の足跡を、処女作ご生家跡作庭から、絶作となった松尾大社上古の庭に至るまで、活字ばかりでなく、著者自身のカメラを駆使してたどる。風景や造形とともに、庭主の思想、美意識までも平易に語りかけるような画と文の運びで、これも先生がよく言われていた「庭に対する愛情の気持ち」を、読者に訴えるに最もふさわしい形ではなかろうか。
 著者は業界や学会関係者ではなく、たまたま自家の古庭園改修時に、三玲先生に接し、生涯無二の師父、一期一会の巨匠と敬慕の想いを深くされたという。定年退職を期に積年の願いを果たすべく、愛用のカメラとともに重森庭園巡礼の旅をされたことは、三玲先生の大著『日本庭園史図鑑』発刊の快挙に匹敵する大事業である。対象こそ重森庭園に絞られているが、助手やカメラマンもなく、徒手空拳ただカメラと同行二人で各地の庭、しかも拝見取材の難しい個人邸宅も多く、これらの公開出版には著者の体当たりの熱意が要因となったと推察される。
 三玲先生とその作庭に対する著者積年の想いが、本書にはあふれている。
 庭園文化や茶道・華道などの数寄教養の革命的発想家であり、実践家であった三玲先生80年の生涯の大偉業を、庭好きの若者や数寄文化愛好家に、観て、読んで、楽しんでいただける好著として、愛読書の一冊に加えていただきたくお薦めする次第である。
(佐藤嘉一郎/京都林泉協会名誉会員)

担当編集者より

 東福寺本坊や、松尾大社といった寺社仏閣の作庭で著名な重森三玲ですが、本書では、これまで公開されてこなかった個人庭園を含む、現時点で掲載可能な庭が網羅されています。
 著者による700点以上の撮り下ろし写真から、次々と新たな表現に挑戦する作庭家の姿が見えてくるようです。
 重森三玲を知ろうとするとき、基礎資料となる一冊です。
(G)