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よみがえる商店街
5つの賑わい再生力
三橋 重昭 著
四六判・192頁・定価 本体1500円+税
ISBN978-4-7615-1262-0
2009.10.30 初版発行
■■内容紹介■■ 過去30年来、衰退の一途を辿ってきた商店街。どうすれば商店街を元気にし、街に賑わいを取り戻せるのか。商店街活性化アドバイザーとして活躍する著者が、全国の元気な商店街を事例に、街を動かすリーダーシップ、まちづくり組織の地域連携、地域資源を活用した観光など、商店街の力に着目し、中心市街地活性化の方策を探る。
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読者レビュー
「中心市街地活性化」や「商店街近代化」という言葉が聞かれるようになってから、すでにかなりの期間が経過し、多くの書籍が出版されている。この事実は、問題の大きさと、解決の困難さを、雄弁に物語っている。
タイトル「よみがえる商店街」が示すように、本書は、かつて輝いていた「商店街」が、どのようにして光を取り戻すことができるのかという観点から、この問題にアプローチしている。前半4分の1で、商店街活性化に関する歴史、衰退の背景と、再生計画に取り組む手法を説明し、後半は、全国の12商店街を訪問して調べた結果を詳しく紹介している。商店街問題に詳しくない方は、後半部から読み始める方が読みやすいかもしれない。
紹介された12商店街は、大都市圏と地方が半々で、私が訪問したところも4ヶ所ある。読み進む中で、私は、「街を動かす人間力」として紹介されている東京都足立区の「東和銀座商店街」を訪問したいと思った。東和銀座は商店街の活性化事例として有名で、すでに他の本で読み、知っていたが、その時は「訪問したい」と感じなかった。
公共交通が発達している大都市圏と、車中心の地方では、商店街を取りまく環境が大きく異なる。だから、地方都市に住んでいる私が、大都市圏、しかも東京の商店街を訪問したいと思ったのは、不思議である。おそらく、東和銀座が「大都市圏だから条件に恵まれている」わけではないのに、成果を出していることをよく理解できたためであろう。以前読んだ本と比較してみたが、東和銀座の説明にそれほど大きな違いはない。ただ、商店街の置かれた状況がより明確で客観的に記されていて、ここが「街を動かす人間力」に分類されている理由も理解できた。
この本の後半部を読めば、きっと「訪問したい商店街」がいくつか見つかるだろう―どこを訪問したいと思うかは、読者の置かれた状況によって異なるだろうが。もちろん、前半部も内容が豊富で、いろんな発見が待っている。一読を勧めたい。
(阿部成治/福島大学人間発達文化学類教授)
「全国の商店街の衰退が進行している。ここ十数年、中心市街地活性化の声が高まり、様々な政策がとられてきたが、その成果は限定的である。商店街自身が社会経済状況に対応した抜本的な対策をとり、変貌していかなければならない。その基本的な方向は、商店街が住民や来訪者から愛され必要とされるよう公益性を高め、まちづくりに取り組むことである。その事例は様々あり、可能性は大いにある。」
本書の要旨は以上のようになろうか。前半約50頁は、商店街の経緯と現状及び、取られてきた対策を冷静な視点によって分析・評価し、次に今後なすべきことの方向性が述べられている。商店街再生のステップとして示された事項は、まさに、まちづくりプロセスそのものである。後半約120頁は「人間力」「地域運営力」「地元密着力」「観光力」「創造力」という5つの視点から、蘇ったあるいは元気を維持している全国12の商店街が紹介されている。いずれも著者自ら現地を歩き、キーパーソン達に取材した生の声が中心となっている。
今後、流通業界の大規模化・チェーン化や、ネット利用によるグローバル化は先端技術の導入を伴ってますます進み、都市の郊外分散もすぐには収まらないだろう。本書は、商店街がかつてのような姿で再生することはあり得ないことを明示している。一方、自己変革を志す商店街関係者やその支援者にとっては、本書は大きな希望を与えるものとなろう。紹介されている事例はいずれも、「商店街」という言葉が過去のものとなりつつあるかと思うほど、固定的な概念から脱し、地域の特徴や資源を活かしながら、「未来志向のまちづくり」に取り組んでいる。
読者には、本書で紹介された関心のある商店街を訪ね、関係者の話を直接聴いていただきたい。先進事例はあくまで事例であり、読者の商店街にそのまま適用できるものではない。しかし先駆者も苦労して新たな業態や分野を開拓したのであり、まず商店街自身の意欲と継続的な努力、次にいくばくかの支援によって、方向性はきっと見つかるはずである。
なお政策的には、先進事例がアドホック的特例にとどまらないよう、制度の柔軟な運用や現地裁量、先導する「勇気ある個人」への支援が重要なことを指摘しておきたい。
(有限会社ハーツ環境デザイン代表/鈴木俊治)
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担当編集者より
商店街の衰退が叫ばれて久しい。地元の商店街でも、店を閉めマンションや駐車場になり、かつての繁栄の姿は見る影もない。何とかしたいが、有効な手立てがないと、多くの商店街関係者は思ってきたに違いない。しかし、そんな苦境を乗り越え、独自のアイデアで元気を取り戻した商店街がある。本書では、そうした商店街の中から12の事例を取り上げ、キーパーソンへのインタビューを通じて、人や街が変わっていく様子を生々しく伝える。また総論として、商店街衰退の要因と再生への道筋についても率直に論じている。長年商店街を見続けてきた著者ならではの温かい眼差しと冷静な分析が際立つ一冊。
(MY)
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