低炭素都市
これからのまちづくり

大西 隆・小林 光 編著

A5判・256頁・定価 本体2700円+税
ISBN978-4-7615-2479-1
2010-01-30 初版発行

■■内容紹介■■ 
低炭素都市の実現には、まちづくりの様々な政策が大きな転換を遂げて、まちの構成や基盤から人々の生活や移動の仕方に至るまで、低炭素型社会の思想と実践が貫かれる必要がある。では、その変換とは? 地球環境問題と都市行政の専門家と研究者が、建築、交通、暮らし、都市計画、都市政策について、事例を交えて明らかにする。


 
読者レビュー
 たとえ、それにデータ的、理論的裏付けがなくとも、国のトップがその政策目標を公に発すれば大きな影響力を発揮する。それは、政策運営のあり方に対してだけではなく、国民意識に対してでもある。「マイナス25%」という目標設定には、多くの国民がその達成に懐疑的な目を向けながらも、その反面「何かしなければ」という気持ちがより強くなったのも事実だろう。
 昨今、国際社会におけるわが国のプレゼンスが弱くなっているなかで、本当にこの目標を達成できたなら、その技術はいっきょにわが国の国際的プレゼンスを押し上げることになる。だから、何とかしなければ、と感じた国民がそんな技術の確立に期待を寄せても不思議ではない。
 ここにおいて温室効果ガスの多くは、都市域から排出されるわけだから都市における取り組みが重要なのであり、まず都市で「何とかしなければ」その期待には応えられず、都市計画の果たすべき役割は大きい。
 このような情勢のなか、低炭素都市づくりを実現していくための基本的な方向と最新かつ具体の対応策を体系的に整理して、それぞれの内容を各地での先進的取り組み事例とともに提示してくれるのが本書である。特に、「低炭素都市の実現には環境行政と都市行政が一つになって市民とともに進むことが必要」との認識に立ち、地球環境問題と都市行政の専門家、研究者が幅広い視点から現状、考え方、対策を提示してくれていることは、都市計画関係者に広く大きく複雑なこのテーマにより正確な進路を示してくれるだろう。このような本書は、低炭素都市づくりという都市計画における今後の重要テーマに取り組んでいこうとする都市計画関係者にとってかっこうの教科書となる。したがって、本書の内容を読み進めば、本書の帯に掲げられた小宮山宏氏の推薦のことば「できることは、たくさんある!」ということが実感できるにちがいない。
 しかし同時に、「やらなければならないこと」もまだたくさんあることにも気づく。特に、本書で取り上げられたようないろいろな施策を総合的に全体調和させ、展開していくための基盤となる都市全体の構造とそれを実現する土地利用のあり方を理論化していくことは、本書の読者がこれから取り組んでいくべき大きな課題なのではないだろうか。
(兵庫県立淡路景観園芸学校/平田富士男)

担当編集者より

 CO2の削減はしなければならないことは分かる。地球温暖化防止だけではなく、エネルギー危機に備えるためにも本気にならなければ明日はない。
 では、どうすれば良いのか。
 もちろん個人として、消費者としてできることも多々あるだろうし、最先端技術、巨大技術の革新にも期待したいところだが、建築・都市計画には、専門家として、技術者として、できることが幸いにもいっぱいある。寄せられている期待も大きい。
 もう一度、建築・都市計画が社会の夢を担えるようになってほしい。
 そのためのヒントがこの本にはいっぱい詰まっていると思う。
(Ma)