アルネ・ヤコブセン
時代を超えた造形美

和田菜穂子 著

A5判・160(カラー64)頁・定価 本体1900円+税
ISBN978-4-7615-1269-9
2010-02-10 初版発行

■■内容紹介■■ 
デンマークが生んだモダンデザインの巨匠アルネ・ヤコブセン。建築家、デザイナーとして、今なお世界中で愛される名作を世に送りだした。本書では、シンプルで遊び心のあるユニークな建築、家具、プロダクトの創作の足跡を辿り、完璧なまでの機能美の追求、未来を見据えたものづくりの信念から生まれたデザインの魅力に迫る。



 
読者レビュー
 本書は、デンマーク人建築家アルネ・ヤコブセンの残した様々な仕事を伝える日本語版では初めての書籍である。画家を目指して水彩画に興じた少年時代、完璧主義者ゆえに生じた所員との衝突、忙しさのあまり顧みられなかった家族との生活、ガーデニングに興じる晩年など、ヤコブセンを等身大で浮き彫りにした今までにない著作である。
 著者は2年間のデンマーク留学中に、ヤコブセンの設計した様々な建物を訪れ、住み手へのインタビューを行っており、建物の単なるデザインの良し悪しだけではなく、数々のエピソードとともにその使いやすさや快適さが紹介されているのが、本書の最大の特徴でもある。
 本書を通して「Timeless design」とは何なのか、改めて考えさせられた。建築家はついついヤコブセンのデザインした立面や開口部の美しいプロポーション、自然素材の美しい色やテクスチャー、階段・手摺・窓枠などの繊細なディテールなどに目を奪われがちであるが、そこに警鐘を鳴らしている書でもある。建築家はもとよりプロダクトデザイナーの入門書としてもお薦めしたい。
 ヤコブセンは建築以外に椅子・照明器具・食器・テキスタイル・壁紙・ドアノブ・灰皿・水栓金物のデザインを行い、トータルデザインを常に志していた。いずれもシンプルで、どこか可愛げのある、使い勝手の良いデザインである。トータルデザインを志向したプロダクトが、結果としてデファクト・スタンダードとして人々に愛され続けているのは「Timeless design」であることの証明だろう。
 本書ではヤコブセンのデザインした成形合板椅子を製造するメーカー、フリッツ・ハンセン社の工場内の様子なども紹介している。著者は、現在、山形県にある東北芸術工科大学の准教授を務めている。柳宗理の成形合板椅子の製造も手掛ける家具会社「天童木工」のある山形県で、どのような活動を展開していくのか楽しみでもある。
(建築家/松本 淳)

担当編集者より

なぜ、アルネ・ヤコブセンのデザインは、半世紀以上も愛され続けるのか。著者はデンマークで、ヤコブセンが設計した多くの建築を訪れ、アーカイブで彼の描いた図面やスケッチに触れ、元所員や住まい手へのインタビューを通じて、その答えを探し続け、一冊の本にまとめました。日本では椅子のデザイナーとして人気がありますが、本書は、建築家として、建物からカトラリーまで様々なものをデザインしたヤコブセンの多面的な魅力、デザイナーという職業のサガについても読ませる一冊となっています。
(MH)