宝探しから持続可能な地域づくりへ
日本型エコツーリズムとはなにか

真板昭夫・比田井和子・高梨洋一郎 著

A5判・208頁・定価 本体2200円+税
ISBN978-4-7615-2490-6
2010-10-15 初版発行

■■内容紹介■■ 
日本型エコツーリズムとは、里山や町並みなど人と自然が作り出した風景や生活文化を資源とし、その保全・観光振興、地域振興の三つを達成しようとするもの。地域の誇り(宝)を掘り起こし、活用しながら地域意識を明確にし、産業創造に結びつけていく発展戦略こそ、日本型エコツーリズムによる持続可能な観光地域づくりだ。




読者レビュー
 「よく耳にするエコツーリズムとは何か?」、「観光立国とは、何もない田舎にも関係があることなのか?」というような問いを持つ方がまず手に取るべき本ではないであろうか。日本各地では、年々縮小する国内旅行市場において何が起きているかが捉えられずにいる関連事業に従事する方、お祭りイベントから脱却した「地域活性化」の仕掛けに頭を悩ますまちづくり関係者や行政関係者が多いのではと思う。また、地域活性化における観光産業の進むべき方向性として体験交流型、着地型観光、ニューツーリズムなど様々な言葉が耳に入ってくるが、具体的に何をどのように進めればよいのか……、といった方も同様かと思う。
 そんな方々に向けたエコツーリズムについての入門書として本書は非常に役立つ本である。商品企画やプロモーションなど専門的な分野までカバーした書籍は他にもあるが、「まちづくり」に関わる幅広い層の読者には読破したとしてもその内容は難解で「行動」に結びつきにくいケースが多い。本書は、まずは住民が自分たちの地域を見つめなおすことから始める事を促し、また、それを「宝探し」という平易な言葉で定義されているうえに、具体的な実施事例も豊富に盛り込まれているため、読みやすく、読者が次に起こすべき「行動」がイメージしやすい構成となっている。
 評者も飛騨地方の片田舎でエコツーリズムに関わっているが、水と空気と同様に「当たり前」と思われている、そこに広がる風景や日常の農作業などを題材にガイドツアーを実施している。それらのネタ探しには毎日のように住民の話を聞き、「宝探し」を行うことが欠かせない。
 本書は、読みやすく具体的な記述ではあるが、実際に「宝探し」の一連のプロセスやエコツーリズム商品を創出し、持続可能な地域づくりを実現するには、多くのノウハウと試行錯誤を必要とし、本書の読破に加えて筆者が理事を務める日本エコツーリズム協会主催の研修会を受講することなどにより多くの努力を積み重ねることが必要であることを付け加えたい。
(飛騨里山サイクリング/山田 拓)

「宝探しから持続可能な地域づくりへ」出版に寄せて

二戸市長 小保内敏幸

 岩手県北端、人口3万人の小都市・二戸市において、1992年から真板先生、比田井先生、高梨先生の指導を受けて始まった「楽しく美しいまちづくり推進事業」は、18年目を向かえました。
  この事業は、高度成長のもと効率性、合理性、経済性などが優先された結果、見失いかけていた地域固有の自然や生活文化などを市民と行政の協働によって再発見・発掘し、それらを「宝」として、宝を活かした地域づくりを進めるための事業です。
  本書には、私たちが18年間取り組んできた「宝探し」から「宝おこし」への過程と実践事例が示されています。
  二戸市で実践している「宝さがし」が、これからエコツーリズムによる持続可能な地域づくりの参考になれば幸いです。


担当編集者より

 「エコツーリズム」と聞いたとき、ガイドに連れられながら原生林を歩む光景を思い浮かべたが、どうやらそれはエコツーリズムの一面でしかないらしい。著者らの提唱する「日本型エコツーリズム」について読み進めるうちに、これはまさに運動論なのだという思いを強くした。
 自らの地域を誇りをもって見つめ、誇りを磨き、誇り、地域外へも伝えて、ビジネスにもつなげていく。奮闘する住民たちの姿が、迫力を持って目の前に立ち上がってくるのである。
 どんな地域にも、宝はきっとある。それを見つけておしまいにするのではなく、適切に力を注ぐことによって地域全体が活気づいていく。そんな夢みたいな話を、夢で終わらせない方法を知るための1冊です。
(G)