北欧モダンハウス
建築家が愛した自邸と別荘

和田菜穂子 著

A5判・208(カラー96)頁・定価 本体2400円+税
ISBN978-4-7615-2534-7
2012-08-01

■■内容紹介■■ 
グンナー・アスプルンド、アルヴァ・アアルト、アルネ・ヤコブセン、ヨーン・ウッツォン…、北欧を代表する建築家たちは自らの住まいで実験を試み、家族のためにこだわりの空間をつくりだした。妻や子供との暮らしに滲みでる素顔、時代や風土への真摯な眼差し、安住のデザインを追求した名作を巡る、建築家たちの住宅術。



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読者レビュー
北欧の国々はヨーロッパの中央からみれば、比較的人口の「小さな」国々である。例えば北欧で一番「大きな」国スウェーデンは、面積こそ日本よりも広いが、人口は約900万人(2012年現在)を超える程度である。
そんな「小さな」国々で活躍したグンナー・アスプルンドやアルヴァ・アアルトといった北欧の建築家たちは、ヨーロッパの中央部やアメリカで起こるモダニズムの流れに必死でアンテナを張っていた。本書では、そんな彼らが試行錯誤しながら自国で実践した住宅作品に焦点が置かれている。著者はそれらの住宅群を建築家の家族関係や同世代の建築家との交流を通して、わかりやすい語り口で紹介している。家族のエピソードから、ル・コルビュジエらとの関係まで、著者の独自の視点から建築家の生涯を追っている。
こうして同時期に活躍した北欧の建築家たちを俯瞰すると、彼らの共通する部分や関係性が網目のように現れる。例えば、本書に登場する多くの建築家がストックホルムにある茶室・瑞暉亭を訪れているという点で繋がってくる。また、日本で紹介されることの少ないノルウェーの建築家アルネ・コルスモがスヴェレ・フェーンやヨーン・ウッツォンに影響を与えたことや、建築家モーエンス・ラッセンがル・コルビュジエから受けた影響を独自の方法でデンマークの風土に取り入れていった点など、本書からは当時の連鎖反応の面白さが垣間見える。
これらの住宅は、北欧の建築家たちが国外で起こるモダニズムを貪欲に吸収しながらも、一方でそれらを自らの故郷でマイペースに消化していった過程の現れ、とも言えるだろう。本書は、その過程を紐解いていくための一つの窓口となるかもしれない。
(テキスタイルデザイナー、ストックホルム在住/森山茜)

担当編集者より

企画当初から著者の和田さんは建築家と妻の関係にとても関心があったようだ。
激動の時代を駆け抜けた建築家たちの人生は波乱万丈で、妻や子供との関係も独特だ。和田さんは、妻に宛てた手紙を読み解き、子供へのインタビューを試みながら、建築家としての表の顔とは別の素顔を浮かび上らせている。
戦前戦後の苦しくてもものづくりが輝いていた時代、北欧という辺境の土地で、建築家たちはどのように生きたかったのか。
そんなことを考えさせてくれる1冊です。
(MH)