リアル・アノニマスデザイン
ネットワーク時代の建築・デザイン・メディア

岡田栄造・山崎泰寛・藤村龍至 編著

四六判・256頁・定価 本体2200円+税
ISBN978-4-7615-2554-5
2013-06-01

■■内容紹介■■ 
物と情報は溢れ、誰もがネットで自由に表現できる現在、建築家やデザイナーが「つくるべき」物とは何か。個性際立つ芸術作品?日常に馴染んだ実用品?その両方を同時に成し遂げたとされる20世紀の作家・柳宗理の言葉“アノニマスデザイン”を出発点に、32人のクリエイターが解釈を重ね、デザインの今日的役割を炙り出す。



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読者レビュー
「これが、アノニマスデザイン!?」と、表紙からして虚を突かれる。
「アノニマスデザイン」は、デザイナーの柳宗理によって普及した言葉だ。彼はデザイナーの名は出ないが、生活に溶け込んだ工業製品をそう呼び、人々の目を日用の中にある美に向けさせた。美しいものが時代を超えて用いられるというのだから、その概念には不変の安定感がある。移り続ける工業化社会・商業化社会にも、そのような存在がありえるのだという言葉は、ユーザーもクリエイターも安心させてくれる。
本書の表紙は、それとは逆である。一般的な意味での安定も、安心も、美も、見当たらない。構図は流動的であり、一つ一つの要素に眼をこらしても「美しい」ものばかりではない。パンドラの箱を空けたような、とっちらかりぶりである。これが「リアル」だと突きつける。最後に果たして「希望」はあるのか?
まえがきで編者の一人である岡田栄造は、2012年のシンポジウムにおける藤村龍至の「アノニマスデザインとは、アノニマスとデザインのハイブリッドである」という言葉で「目から鱗が落ち」、「本書では『アノニマス』と『デザイン』を掛け合わせている(と我々が考えている)現役の作家たちに、執筆を依頼した」と企画の意図を解説している。
本書は何よりも「問い」の一冊だ。いわば「アノニマス」と「デザイン」に引き裂かれた問いに答えるのは、28人の寄稿者。プロダクトデザインから建築・都市、メディアやアートの世界で活躍するクリエイターまで、目配りは幅広い。文章はすべてコンパクトで分かりやすく、それぞれの個性のエッセンスに触れることができる。広角レンズで切り取った流動的な現在を、小気味よく編集し、ザッピング感覚で届けるような良書である。
(建築史家・大阪市立大学大学院工学研究科准教授/倉方俊輔)

担当編集者より

「アノニマスデザイン」という一語を頼りに執筆された28本のエッセイは"バラバラ"で、編集していても「これでいいのかな?」と正直、ずっと胸騒ぎがしていた。一方で皆さんがこの一語からこんなに多くを書いたり語ったりできてしまうことに驚きながら。
そのくらいデザインの前提にあって、間口が広く、デザイナーを本気にさせるキーワードなのだなと、今、ネット上に見つけた多くの感想をみながら実感している。
語れば語るほど何かが見えてきそうな本だと思う。
(井口)