読者レビュー
カラフルでポップな地下足袋、という奇抜なアイテムで知られる『SOU・SOU』。その前身〈teems design & moonbalance〉の時代から雑誌の取材等でお世話になっていて、当時「長いブランド名やなぁ」と思いながら原稿を書いていたのだけれど、なぜそうなったのか、また、ご本人も長過ぎると思っていらしたことが明かされていて、思わずニヤリ。
DCブランド全盛期に高校生だった著者、若林剛之さんの若かりし頃から今に至るまでの、ファッションへの変わらぬ想いの熱さとその方向性の変遷が、読みどころ。「一番変わったのは、「外国の文化に憧れる日本人」だった僕が「外国人が憧れるような日本文化を創りたい」と思ったことだ」。憧れのDCブランド勤務を経て、ショップオーナーとして独立した若林さんが、なぜ地下足袋に注目することになるのか。同世代のわたしには、その理由がとてもすんなりと腑に落ちるのだが、みなさんはどうだろう。
「守る」でも「革新」でもない、タイトルの「伝統の続き」というフレーズが、らしくてカッコイイ。そのために若林さんがこだわるのは「国産」ということ。「産地を活性化させるためには、若い人の力が必要だ。若い人を引き付けるようなポップでかわいいものを作らなければいけない。また、職人という仕事のカッコよさも伝えていかねばならない」。地下足袋メーカー、そして伊勢木綿や有松鳴海絞りといった衰退する伝統産業と出会い、共にものづくりをしていく過程は、きっと大変だったに違いないが、軽やかに描かれているので読んでいて小気味がいい。
さて、地下足袋同様人気のアイテムに、足袋下がある。すなわち又割れのソックス。ある日わたしが「お寺やお稽古に行くとき用の白無地があればいいのに」とこぼしたら、若林さんが「あ、すぐ作ります」とおっしゃって、本当にすぐに店頭に並んでいたときには驚いた(ポップさがウリのSOU・SOUなのに!)。その足袋下は「お家元好み」という素敵な名前がついて今も定番としてラインナップされているが、これ実は、マキ好みでなのである(笑)。もとい、そんなサービス精神と姿勢の柔軟さ、ノリの良さこそが、小さなブランドSOU・SOUの「要」なのだということが、この本を読むとよくわかる。
(文筆家・わこものスタイリスト/高橋マキ)
担当編集者より
京都にあるSOU・SOUは、いまや全国、はたまた世界中からファンがやってくるというファッションブランドだ。
他にはないスタイルやデザインで、国産にこだわった着実なものづくりをしている。ファストファッションが勢いを増す今、これをファッションと呼んでよいかどうか自信がないが、そのオリジナリティは強みになる。
景気がよいとは言えないアパレル業界で、広げすぎない経営と、企業とのコラボレーションなどを掛け合わせる若林さんの手腕は参考になるが、本人には気負いを感じさせない軽快さがある。
デザインの力によって日本らしさや伝統産業がもつ技術の素晴しさに気付かせてくれるSOU・SOUは、まさにクリエイティブ! これからも目が離せません。
(なかき)
|