アグリ・コミュニティビジネス
農山村力×交流力でつむぐ幸せな社会

大和田順子 著

四六判・208頁・定価 本体1800円+税
ISBN978-4-7615-1280-4
2011-02-10 初版発行

■■内容紹介■■ 
農山村は資源の宝庫である。そこで自然と文化を活かした暮らしやビジネスを起こすことで、長年断絶されてきた都市と農村の交流を促し、新たなヒトとカネの流れを生みだす。本書では地域の課題解決と豊かな社会づくりに取り組む企業や自治体、新規就農者の取り組みを紹介。人も地域も輝く仕事がしあわせな地域社会をつくる。




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読者レビュー
 このたびの3・11大震災は、それ以前とそれ以後のモノの見方を変えてしまった。とくに福島第一原発の事故はこれまでにもまして食の安全への強い関心を引き起こし、遠隔地の食糧を買わざるを得ない都市住民たちに、なんとか安心で安全な食糧を手に入れる方法を探したいという欲求をかきたてた。
 本書はそうした欲求に、それはまず自分が食糧生産の現場に近づくこと、生産者と消費者の距離をもっと近づけること、そして可能ならば農産物生産やその加工の担い手になってしまうこと、しかもそうすることでビジネスとして成功している例がたくさんあり、それが農村と都市、生産者と消費者のあり方を変え、より持続可能な未来を招くのだということを13の事例を示しながら応えてくれる。
 たとえば4年前に耕作放棄地と農業をやりたいひとのマッチング会社(株)マイファームを起業した西辻一真さん(28歳)。農家を説得し全国50箇所、50haの荒地を緑の貸し菜園に変えた。会員数は2500世帯。いまや斡旋だけでなく“畑師”の養成も始めている。
 バブル崩壊を機に経営コンサルタントから山梨県の耕作放棄地の開拓農家に転身した曽根原久司さん。地域に溶け込みながら都市住民と農山村の交流事業「NPOえがおつなげて」を展開し、「地域交流振興特区」の認定を受け、内閣総理大臣賞や日本の里100選を受賞し、地域の元気パワーを引き出した。
 “よそもの”の成功例だけでなく埼玉県小川町で有機農法40年の金子美登さん(61歳)のような根っからの農業者の有機の里づくりの実際も紹介されている。
 著者は日本に初めてLOHASを紹介し、持続可能なライフスタイルやソーシャルマーケティングの専門家で農商工連携の研究と実践にも携わっている。どの事例も活動のリーダーとフォロワーたちそして地域住民の関係の結ばれ方に視点を置き、農山村をベースにしたコミュニティ規模のビジネスがもたらす“幸せな社会”のあり方を足で調べて書いている。事例ごとに一頁もののビジョンやノウハウのまとめがついているのもうれしい。
 そうだ、あすは農山村に行ってみよう、そして安心な未来を引き寄せよう、という気にさせる本である。
(地域総合研究所所長/斉藤 睦)

担当編集者より

 本書は「農」をベースとした小さな取り組みが、地域づくりへとつながっている様子を数多く紹介している。いずれも大和田さんが足繁く通い、志をともにし、つながっている人々だ。
 これまで地域づくりは行政任せであったり、金銭問題を語りにくい風潮があったように感じられるが、農山村が元気になるためには、主要産業である「農」を成り立たせることが不可欠だと思う。持続可能にするためにはビジネスの視点も欠かせない。
 自らの感性と行動力により、楽しみながら、都市と農村、生産者と消費者のマッチングを見事にはかっている著者の視点は、これからの地域づくりに元気を与えてくれる。
 地域を遠方から支える都会人の役割は大きい。それは、この震災の復興においても同様だと思う。多くの課題解決への第一歩として、シフトチェンジを図るきっかけにしていただきたい本だ。
(Nk)