コミュニティ再生のための
地域自治のしくみと実践

中川幾郎 編著

A5判・192頁・定価 本体2300円+税
ISBN978-4-7615-2513-2
2011-07-01

■■内容紹介■■ 
地域再生に果たすコミュニティの力に期待が高まっている。自治会・町内会等の地縁組織とNPO等のテーマ型組織が補完しあう総合的な「地域自治システム」とはどのようなものなのか。戦後のコミュニティ政策の流れを総括し、全国の注目すべき先進的な取り組みをつぶさに紹介。これからの地域づくりの課題と展望を明らかにする。



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読者レビュー
 8月初旬に5日間ほどだが、東日本大震災被災地のうち、岩手県三陸海岸北部から南部、宮城県三陸沿岸から仙台湾周辺へ、現地で暮らし活動するさまざまな立場の知人たちを訪ねながら駆け足でめぐった。
 鞄の中に、尊敬する知人たちが7月に出版した『コミュニティ再生のための 地域自治のしくみと実践』を携えての旅だった。同書の執筆中に、東日本大震災が発生し、編著者の中川幾郎氏によるまえがきも、震災の衝撃から始まっている。かつて、富の分配を主眼とする政治・行政が求められた時代から、痛みを分け合い地域課題を解決するための公共の再構築を支える民主主義が問われる時代へ、地域における自治のありようは大きな自己変革を迫られている。東日本大震災は、まさにその渦中で起こっている。
 時代の画期を物語るにふさわしく、同書はまず歴史的な視座の中で、今求められている地域自治とは何であるか、その本質を捉え直している。そして、日本におけるコミュニティ政策の負の側面も含め、その履歴を受け止め、旧来の地縁型組織と新たなテーマ型組織(NPO等)をつなぐ地域自治組織への道程や、条例をはじめとする必要な道具立て、さらに住民自治と団体自治、議会との関係など、アカウンタビリティを助ける理論を示している。一方、実践論として、地方自治法による「地域自治区」や「地域協議会」ではなく、自治立法としての条例に基づき自律性や柔軟性のある「住民自治協議会」方式が多くの自治体で選択されつつある状況を伝えると同時に、同方式のみならず、規模や歴史的背景の異なる自治体それぞれが選んだ地域自治の道程のレポートを収録している。各地の最前線で模索する者にとって、またとない参考書といえる。
 さて、再び被災地に話を戻すと、外部の力をうまく活用している地域の支援拠点では、常日頃から外部のNPO等との縁をつくっていたり、外部の力をその特性に応じて柔軟に地域につなぐコーディネーター役がいたり、信頼の担保やネットワークや課題把握や意志決定の能力を、最前線の地域や現場の中に涵養していた様子が伝わってくる。その動態に、法・制度だけでは尽くせない、地域自治の原点や土壌ともいうべきものが感じられる。
 被災地の風に、同書のテーマが強く共鳴するとともに、書かれていない余白に目を向ける必要性にも気づかされる貴重な旅となった。
(大阪ガス エネルギー・文化研究所 特任研究員/弘本由香里)

担当編集者より

 
 町内会・自治会等の地縁型組織の時代、NPO等のテーマ型組織が登場した時期を経て、地域の課題を総合的に解決する方法が求められる現在、日本の地域の未来を指し示す本ができました。
 本書は、単なる「合併対策」とは違う「地域自治システム」の歴史から現状、課題と展望をわかりやすくまとめたもので、地域と自治のあり方に関心のある全ての方のご参考にしていただけるものと確信しています。
(Iwa)