環境コミュニティ大作戦
資源とエネルギーを地域でまかなう

白井信雄 著

A5判・168頁・定価 本体1900円+税
ISBN978-4-7615-1307-8
2012-05-15

■■内容紹介■■ 
環境・エネルギーの問題は、設備投資や技術開発だけでは解決しない。大事なのは、地域の人々が自立しながら、互いにつながり力を発揮することだ。本書では、これまでの様々な環境政策と自治体等の取組みを振り返りながら、いま求められる、自立した環境コミュニティづくりのための具体的なアクションプログラムを提案する。



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読者レビュー
長年、シンクタンクで国や地方の環境政策を調査・研究してきた著者が、その豊富な経験から導き出した環境問題解決のための重要な要素が環境コミュニティ力である。環境コミュニティ力とは、環境課題に対して、地域を変えていく力を持った活力あるコミュニティの力のことを意味している。
本書で提言する地域モデルは、環境活動に新しい時代の到来を予感させる。地域を強力なリーダーがひっぱるのではなく、いくつかの役割を分担する普通の人の集まりを想定している。筆者も地域調査を実施するなかで、このようなリーダーはどのようにすれば育成できるのかという疑問を持ち続けてきたが、環境コミュニティの動きを広げるには、リーダーの発現を待つよりもリーダーがいなくてもできる地域の取り組みを考える方が、普及の可能性が高い。
筆者の知る限り、環境問題について施策を紹介する書籍、取り組み事例を紹介する書籍は枚挙にいとまがないが、環境問題を解決するコミュニティ自体に焦点を絞った書籍は他に例がない。
第U部、第V部は、施策や地域の取り組みを紹介している。事例は、長野県飯田市、福井県池田町、東京都荒川区の取り組みを紹介している。飯田市については、著者の実施した環境配慮行動に関するアンケート調査の結果も解説されている。紹介のなかで、随所に著者の経験を交えた分析が展開されているので、単なる事例調査ではなく、非常に読み応えがある内容で、この部分は、販売の都合もあろうけれど、もう少し分厚くして欲しかった。
本書への要望をあげるとすれば、第一に、対象としているコミュニティの規模があいまいであることである。どの程度の規模のコミュニティが有効に機能しやすいのかを示してもらえると、第W部の環境コミュニティづくりのマニュアルが活きてくるように思う。
第二に、150ページからの環境配慮行動の3つのステージについてである。個人が取り組み、第1、2ステージから、社会的な行動へと移る第3ステージには、少し距離があるように感じる。その距離をどう埋めるのかは実は筆者の研究テーマでもあるのだが、この点について著者の考えをもう少し詳しく読みたい。
(近畿大学経済学部教授/坂田裕輔)

飯田市で市民との連係が生まれているのは、長い公民館活動などがその源であることもよく判りました。
そのことをもっと活かして、エネルギーに止まらず、地域資源である、「ひと、もの、お金」の活用と循環になるよう、努力してまいりたいと思います。
(おひさま進歩エネルギー梶^原 亮弘氏)

この著書を読んで大変びっくりしました。なぜなら、環境に関する多くの書籍と異なり、住民、自治体、NPO、専門家等のすべての立場にとって大いに参考になる内容であり、さらに、これから環境政策に参画しようと考えている人にとってもわかりやすいものだからです。さっそく、環境政策を研究する仲間に購入を薦めました。先生と出会えてよかったと思いました。
(行政Aさん)

今後の施策立案にあたり、ついつい忘れがちな視点を改めて認識させていただきました。
うちの課内でも、この本に興味を持たれている方も多く、順番待ちで私の本を貸し出しています。
(行政Bさん)
担当編集者より

CO2削減や地球温暖化防止など、震災以前から環境やエネルギー問題は取り上げられていたが、身近な問題として感じにくかったように思う。原子力発電所の事故があってからも、あいかわらず電力は大手電力会社に頼っているし、節電をするくらいしか個人ができることはないのか?という疑問もある。
著者が主張するのは、大きな設備投資(ハードウェア)や制度(ソフトウェア)だけでなく、市民の力(ヒューマンウェア)が大事ということだ。これまでの国の政策によるトップダウン型ではなく、地域からボトムアップ型で動きを起こすことで、自発的・継続的な環境コミュニティづくりはできるということを、本書と事例が示してくれている。
市民の意識はすでに高まっている。あとは、自治体や環境NPOの誘導のもと、いかに地域全体で行動に移していくか。本書をヒントにしていただいて、それぞれの地域で取り組めば、きっと大きな変化につながると期待している。
(中木)