まちへのラブレター
参加のデザインをめぐる往復書簡

乾久美子・山崎亮 著

四六判・256頁・定価 本体2000円+税
ISBN978-4-7615-2538-5
2012-09-15

■■内容紹介■■ 
参加型デザインって、コミュニティって、「つくらない」デザインって何だろう?建築家とコミュニティデザイナーによる、仲むつまじくもシリアスなやりとりから、従来の建築家像やデザインの意味を問い直す。ある駅前整備プロジェクトを通じて、二人のデザインが如何に融合してゆくのか、その過程を追体験する試み。



このページをスマートフォンで見る



読者レビュー
社会が大きく変わり続けていることに気づいてはいるが、何がどう変わっていて僕たちにどう影響を与えているのか、いまいちその実感がない。焦っているのか諦めているのか、ただ過ぎていく時間に身をまかせていることに不安を感じている。そんな僕と友人たちに向けて。
コミュニティデザイナーの山崎亮さんと建築家の乾久美子さんによる往復書簡は、参加型デザインとはなんだろう、という素朴な疑問から始まった。そのやりとりは新しい価値観とは、新しい公共とはなんだろうかという所まで射程を広げていく。本書を読み進めるに連れ、僕たちが暮らすこの社会ではつくる人・つくらない人という二項対立が簡単に描けなくなっているのがよく分かる。色々な方面からのアプローチが必要で、それは必ずしも既存の職業や肩書きで定められているものではないだろう。
僕は学部時代に建築設計の基礎を学び、まちづくり研究室を経て、大学院では働くひと・もの・ことを対象としたワークプレイスを専門とする研究室に所属している。そして今は交換留学生として、フィンランドでデザイン・ビジネスマネジメントを学んでいるところだ。まるで脈絡がないようだが、モノからサービスへ移行している社会状況に建築・デザインからできることを模索しているつもりだ。見える領域と見えない領域を往来しながら新しい価値をどうやってつくることが出来るのか、考えていたらここにいた。
情報に溢れ、こうすべきだ、という明確な指標を疑わなければならなくなってしまった今、未来にいる僕たちを想像し、今起きていることを振り返って考えることが大切なのだと本書から読み取ることが出来る。そうした時に、つくる・つくらないだけではない、たくさんのバリエーションが存在してることに気がつかせてくれる。多様な関わり方やそうした関わり方を許容する社会をどうつくっていくことが出来るだろうか。本書はコミュニティデザインのあり方を問うだけでなく、僕たちがどう生きていくのかを考える時にも一助となるだろう。
(京都工芸繊維大学大学院/浅野 翔)

担当編集者より

あるとき、山崎さんに会うと、延岡のコンペの話を興奮気味にされた。
「乾さんが、パースや図面を使わず文章だけのプレゼンで監修役を射止めたんだよ!」と。
私は何て真面目な建築家なんだろうと驚いた。建築家が、初めて臨むまちづくりに際し、敢えて絵を描かないって、すごく正直で格好いい。
そんな方ならきっと、プロジェクトが進む間も、いろいろなことを順序立てて真面目に考え続けるんだろう・・・ぜひその過程を知りたいな!と思ったのが往復書簡をお願いするきっかけだった。お二人とも、楽しみながらも真剣に、やりとりを続けてくださり濃密な一冊になっている。
特に、これからどんな道を歩もうかと、将来を探っている学生さん、若い人たちのことが、お二人の頭にはいつもあったと思う。
(井口)