フラノマルシェの奇跡
小さな街に200万人を呼び込んだ商店街オヤジたち

西本伸顕 著

四六判・216頁・定価 本体1600円+税
ISBN978-4-7615-1329-0
2013-07-25

■■内容紹介■■ 
ドラマ「北の国から」で有名観光都市となるも、衰退する一方だった富良野の中心市街地。危機感を持った「まちの責任世代」と称するまちづくりの素人オヤジたちが立ち上がった! 様々な壁を乗り越え、約2万4000人のまちで3年間に200万人を集める複合商業施設「フラノマルシェ」を実現。まちを守り抜くために走り続ける男たちの物語。



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読者レビュー
“遊休地イコール駐車場ではさみしい”と誰もが感じているだろう。地方中心部に遊休地が増え、その多くは建物を取り壊した後の使い道がなく、ただ駐車場になっているところを散見する。街に界隈性が無くなることで人は街から離れ、以前はごく当たり前にあった人と地域とのつながりが薄れ、さらに街なかが荒廃する悪循環から抜け出せない。そんな中心部の遊休地に、都会的スマートさと、地方特有の人間味と優しさが融合したのが、フラノマルシェという新業態であった。
業態とは、モノの売り方のこと。本施設は産直所でも観光物産館でも道の駅でもスーパーでもコンビニでもなく、人と人、人とモノ、人と情報を繋げることで活力を生み出すコミュニティ型ローカル業態であり、地域にある資源と人材をフル活用した事業である。本来、街なかで過ごすということは、ただモノを買うだけではなく、街を歩き、人と出会い、お茶を飲み、街の生活文化に触れるなどの楽しみや発見をもたらすはずなのに、何故か人々が拡散し閉ざされた方向に社会が脆弱化してしまった。
「街なかにはゆっくり過ごせる魅力ある滞留拠点が必要」と説く著者は、道の駅ではない、毎日訪れたくなるようなサードプレイスの施設づくりにこだわった。昨年、拙著『最高の商いをデザインする方法』(エクスナレッジ)を上梓した際、地域再生事例としてフラノマルシェを取り上げ、日常と観光の重なる楽しさの祝祭空間と紹介したが、日常の中に自分を開放できる空間や仲間と過ごせる場所があることは、定住人口や交流人口促進の大きな原動力になると感得した。
本書は地域再生ストーリーをドラマ仕立てに綴ったドキュメントであり、肩ひじ張らずにストンと頭と心に地域経営術の極意を授けてくれる。例えば、文中で「世代を超えて集い楽しく交流する“まちの縁側”」のフレーズには、よく見かける補助金でつくられた使われない公園や、総合設計制度でおまけにできた公開空地とは違う、人の溜まり場が大事であることを教示し、「成功事例のうわべだけを真似て、似たような施設をつくっても、当事者の熱い思いが入らなければ、それは単なる箱モノで終わる」と、自身の経験則からの真の言葉が続く。
本書はまちづくりに関わる行政関係者だけではなく、建築家やコンサルタント、商業者にも薦めたい良書である。
(株式会社商い創造研究所代表取締役/松本大地)

担当編集者より

本書の原稿を初めて読み終わった時の読後感はまさに「プロジェクトX」を見終わった時のようでした(頭の中をあのテーマソングが流れていました…)。まちづくりの理論と事例を紹介する他の本とは異なり、本書は「携帯メールの着信音が鳴った。」から始まる、「まちづくりの物語」。『富良野笑市民ライフ』『笑説 これが北海道弁だべさ』という前作を持つ著者のユーモアと文才は本書でもいかんなく発揮されています。
加えて、これだけの成功を収めている「フラノマルシェ」が、著者を含む「まちづくり口角泡飛ばしオヤジたち」の進めるタウンマネジメントの第一歩に過ぎないということに驚かされます。
まちづくりに関わる人、富良野が大好きな人、「責任世代」としてこれから進む道を考えたい人に「おすすめの一冊」です。
(岩崎)